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Atto色素標識抗体を使用した蛍光マルチプレックス検出法

イムノブロッティング(ウェスタンブロット転写法)は現代のプロテオミクス研究において一般的な手法です。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロースまたはPVDFメンブレンに固定し、ターゲットタンパク質に対する一次抗体でプローブします。次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼで標識した二次抗体をその一次抗体に結合させます。化学発光酵素の基質を添加し、発光した光をCCDカメラまたはX線フィルム露光により検出します。一般的に、イムノブロッティングのターゲットは1つのタンパク質です。一方、リン酸化および非リン酸化状態のタンパク質を比較する、あるいはコントロールタンパク質(アクチンなど)に対するターゲットタンパク質の相対量を測定するような特定のアプリケーションを行う場合には、単一メンブレン上でのマルチプレックス検出法は好ましい方法です。

私たちは、鮮やかな蛍光Atto色素を共有結合させた二次抗体を提供しています。イムノブロットマルチプレックス法は、異なる励起/発光波長を持つ異なるAtto色素をそれぞれ標識した2種類の二次抗体を用いて実施することができます(図1)。ブロッティングメンブレンは、追加検出のためにはがして再度プローブする必要がないため、処理の手間が省け、エラーの要因を減らすことができます。

異なるAtto色素で標識した2種類の二次抗体によるマルチプレックスアプリケーションの図

図1.異なるAtto色素で標識した2種類の二次抗体によるマルチプレックスアプリケーションの図

2色のマルチプレックスイムノブロッティング

最初の実験では、タンパク質1およびタンパク質2(各500 ng)を4~20% SDS-PAGE(Tris-グリシン)ゲル上で分離しました。そのタンパク質を低蛍光性のPVDFメンブレンに転写し、5% BSAを含むPBSでブロッキングしました。メンブレンをタンパク質1およびタンパク質2に対する抗体(それぞれ1:1000)とともにインキュベートしました。

タンパク質1は、マウスで発現させた一次抗体、続いてヤギ抗マウスIgG-Atto 550(カタログ番号:43394、希釈倍率1:1250)(λex = 532 nm、λem = 580 nm)でプローブしました。タンパク質2は、ウサギで発現させた一次抗体、続いてヤギ抗ウサギIgG-Atto 633(カタログ番号:41176、希釈倍率1:1250)(λex = 633 nm、λem = 675 nm)でプローブしました。別々のレーンでの試験および両者合わせたレーンでの試験のいずれでも、両タンパク質は単一メンブレン上で検出されました(図2)。

2種類の一次抗体および2種の抗IgG-Atto色素結合体を用いたタンパク質1およびタンパク質2のイムノブロット検出。両二次抗体は、同動物種(ヤギ)由来。画像撮影は、FLA-3000 FUJI<sup>®</sup>レーザースキャナーを用いて、580 nm蛍光フィルターを用いた532 nmの励起波長、続いて675 nm蛍光フィルターを用いた633 nmの励起波長の順で行った。画像はソフトウェアツールを用いて重ね合わせた。

図2.2種類の一次抗体および2種類の抗IgG-Atto色素結合体を用いたタンパク質1およびタンパク質2のイムノブロット検出。両二次抗体は、同動物種(ヤギ)由来。画像撮影は、FLA-3000 FUJI®レーザースキャナーを用いて、580 nm蛍光フィルターを用いた532 nmの励起波長、続いて675 nm蛍光フィルターを用いた633 nmの励起波長の順に行った。画像はソフトウェアツールを用いて重ね合わせた。

Atto色素標識済み抗体を用いたルーチンのイムノブロッティング

Atto色素標識済み抗体はルーチンのイムノブロッティングにも使用することができます。別々の試験における、ヤギ抗マウスIgG-Atto 647N(カタログ番号:50185)およびヤギ抗マウスIgG-Atto 550(カタログ番号:43394)結合体を用いたアミノ末端FLAG-BAP™ 融合タンパク質(カタログ番号:P7582)の検出限界を示しています(図3)。FLAG-BAP™タンパク質(5~500 ng)を4~20% SDS-PAGEゲル上で分離しました。そのタンパク質を低蛍光性のPVDFメンブレンに転写し、5% BSAを含むPBSで一晩かけてブロッキングしました。メンブレンをモノクローナルANTI-FLAG® M2抗体(カタログ番号:F1804、希釈倍率1:1000)とインキュベートしました。ヤギ抗マウスIgG-Atto 647N(1:1250)(λex  = 633 nm、λem = 675 nm)を用いて1つ目のメンブレンの検出を行いました。FLAG-BAP™タンパク質の最低検出量は5 ngでした。ヤギ抗マウスIgG-Atto 550(1:1250)(λex = 532 nm、λem = 580 nm)を用いて2つ目のメンブレンの検出を行いました。FLAG-BAP™タンパク質の最低検出量は20 ngでした。Atto 550のために580 nm蛍光フィルターを併用した532 nmレーザー、およびAtto 647Nのために675 nm蛍光フィルターを併用した633 nmレーザーを使用して検出を行いました。対応する励起光源および蛍光フィルターを用いれば、他の画像撮影システムも実行可能です。

Atto色素標識済み抗体を用いたイムノブロッティングによるFLAG-BAP™タンパク質(500 ng~5 ng)の検出

図3.Atto色素標識済み抗体を用いたイムノブロッティングによるFLAG-BAP™タンパク質(500 ng~5 ng)の検出

画像A:ヤギ抗マウスIgG-Atto 647N抗体を使用し、675 nm蛍光フィルターを用いて励起波長633 nmで画像を撮影しました。
画像B:ヤギ抗マウスIgG-Atto 550抗体を使用し、580 nm蛍光フィルターを用いて励起波長532 nmで画像を撮影しました。FLA-3000 FUJI®レーザースキャナーで画像を撮影しました。実験の詳細は本文をご覧ください。

その他の推奨事項

  • 一次抗体とのインキュベーションは、プールせずに逐次実施できるため、抗体を再利用できます。
  • 交差反応を避けるため、一次抗体は、それぞれ異なる宿主由来のものとする必要があり、二次抗体は同じ宿主由来のものとする必要があります。
  • バックグラウンドが高くならないように、Immobilon®TM-FLのような低蛍光性PVDFメンブレンを使用する必要があります。
  • メンブレンを乾燥させることにより、シグナル強度が増強します。

Atto標識済み抗体によって、酵素基質なしで行うイムノブロット検出および単一メンブレンで行うマルチプレックスアプリケーションという新たな可能性が開けました。

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