二次抗体・標識・キット
二次抗体
二次抗体は、一次抗体、あるいはFcまたはFab領域などの一次抗体フラグメントに結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体です。これらは通常プローブで標識されており、検出、精製、またはソーティングのアプリケーションに使用します。私たちのポリクローナル二次抗体は、ウサギ、ヤギ、およびヒツジなどの宿主動物の血清から産生されており、モノクローナル二次抗体は、主としてマウスのハイブリドーマクローンから産生されます。二次抗体は、ELISA、免疫精製、ウェスタンブロッティング、IHC、IF、フローサイトメトリーなどの、数多くのアプリケーションに使用されます。
二次抗体に固有の用途は、結合しているプローブに依存します。プローブは、各種検出技術をサポートする分子です。最も一般的な複合二次抗体の検出システムは、比色法または蛍光法です。比色法は、アルカリホスファターゼ(AP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、またはその派生物に基づくものが一般的です。ビオチン/アビジン(ストレプトアビジン)複合体結合システムは、APやHRPの比色シグナルを増幅するために良く使用されます。最も一般的な蛍光法は、フルオレセイン(FITC)、ローダミンやその派生物、TRITC、Cyanine(Cy3)、フィコエリスリン(R-PE)、CF™またはAttoなどの色素を用います。
私たちは、さまざまな二次抗体を提供しています。
抗体の特異性
二次抗体は、種々の動物種のイムノグロブリンに対して生成され、抗原に結合した一次抗体をイムノアッセイで可視化するための試薬です。全分子またはFabに特異的なIgGに対する抗体は、ほとんどの場合にすべてのIgクラスと反応しますが、重鎖およびFcに特異的な抗体は、目的のIgクラスのみと反応します。研究者の皆様は、取り組んでいる研究にはどのような特異性が最適かを見定める必要があります。試薬の選択は測定系に依存するとともに、抗体と結合して偽陽性の結果や高いバックグラウンドを引き起こすおそれのある外来タンパク質標的が存在するかどうかにも影響を受けます。表Aに、各種タイプの二次抗体とその用途の概要を示します。
標識
アルカリホスファターゼ標識
アルカリホスファターゼ(AP)は、アルコール、フェノール、およびアミンをアルカリ性pHで脱リン酸化する腸内酵素で、140 kDaのホモ二量体です。活性に最適なpHの範囲は9.5~10.5です。
アルカリホスファターゼ標識は、ELISA、2,3免疫組織染色法、免疫細胞染色法4およびイムノブロット5などのイムノアッセイに広く使用されています。AP標識は、内因性ペルオキシダーゼ活性が原因で、ペルオキシダーゼ標識による高いバックグラウンド染色が生じるおそれのある組織に有効です。一般に、AP標識はペルオキシダーゼ標識より高感度なため、ELISAやブロッティングアッセイでの高い希釈率の使用や低レベルシグナルの検出を可能にします。組織切片での内因性アルカリホスファターゼ活性は、レバミゾール(L9756)を基質バッファーに添加することによりブロックされます。6 レバミゾールは、腸内アルカリホスファターゼ以外のすべてのアルカリホスファターゼアイソザイムを阻害します。
アルカリホスファターゼ基質は、可溶性生成物または非可溶性生成物のタイプが用意されています。
アルカリホスファターゼ標識の腸組織の切片や抽出物への使用は、腸内で内因性のアルカリホスファターゼ活性が生じるため推奨されません。
参考文献
ペルオキシダーゼ標識
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、プロトン供与体の存在下で過酸化水素を特異的に減少させる酵素で、40 kDaの糖タンパク質です。活性に最適なpHの範囲は6.0~6.5です。HRPは、優れた熱安定性(最大60℃)とpH安定性(4~10)を示し、アジ化ナトリウムによって阻害されます。
ペルオキシダーゼ標識は、ELISA4,5、免疫組織染色法と免疫細胞染色法6およびイムノブロット7などの広範囲のイムノアッセイに使用されています。 HRP標識は、内因性アルカリホスファターゼ活性が原因で、アルカリホスファターゼ標識では高いバックグラウンドが生じるおそれのある腸などの組織に有効です。アルカリホスファターゼに比べて、ペルオキシダーゼ基質は選択肢が多く、発色強度も多くの場合に優れています。内因性ペルオキシダーゼ活性は、標識を添加する前に過剰な過酸化水素で組織を処理するか、またはフェニルヒドラジン、アジ化ナトリウム+過酸化水素、または過ヨウ素酸などの他のブロッキング剤を使用することによりブロックされます。8 さまざまな基質が、可溶性生成物または非可溶性生成物のタイプで用意されています。
内因性ペルオキシダーゼ活性が高レベルになっている血液細胞や尿細管のサンプルへのHRP標識の使用は推奨されません。
参考文献
蛍光色素標識
蛍光色素分子は1波長(吸収波長または励起波長)の光を吸収し、電子の励起状態を誘発します。この状態は不安定で、分子は発光することによってすぐに非励起状態または基底状態に戻ります。エネルギー損失のために、この発光は波長が長く(エネルギーが低く)なっており、この波長を発光波長と呼びます。励起波長と発光波長の差は各蛍光色素分子に固有で、励起と発光の強度は、最大波長から離れると急速に低下します。蛍光色素一覧表によって、いくつかの一般的な蛍光色素分子の励起波長と発光波長、および蛍光色を確認できます。
蛍光色素は、さまざまな生物学的アプリケーションで分子を検出するために使用されます。1 蛍光色素は、他の多くの可視色素とは異なり、ほとんどの場合に生理的条件下での使用が可能で、生きている細胞や組織を染色できます。2 多くの蛍光色素分子があり、それぞれの発光波長は相互に重なることが比較的少ないため、1サンプルを2種類以上の蛍光プローブで染色することができます。2,3 しかし、そのためには、非常に似通った励起波長と、相当に差がある発光波長が必要になります。Quantum Red™色素などのタンデム色素は、一方の色素の発光波長がもう一方の色素の励起波長と一致する2種類の色素の複合体で、同じランプを使用して別の色を発することができます。細胞骨格を直接染色できるアクリジンオレンジ、DAPI、およびHoechst 33258などの蛍光色素もあり、核酸染色にも使用されます。抗体、レクチン、ヌクレオチドなどの生物学的プローブと結合するフルオレセイン、ローダミン、およびフィコエリトリンなどのその他の色素は、特定の細胞または組織の検出に使用されます。
蛍光色素は、保存および使用中に遮光する必要があります。
参考文献
CF™色素
CF™色素は、非常に水溶性の高い蛍光色素シリーズで、可視から近赤外(近IR)までのスペクトルをカバーして、抗体、タンパク質、核酸などの生体分子を標識します。画期的な化学技術を用いて開発されたCF™色素の輝度、光安定性、および色選択性は、合理的な色素設計により、他の市販色素と同等以上の品質を実現しています。
CF™色素製品ラインには、反応性CF™色素、標識キット、CF™標識二次抗体、およびその他の生物学的複合体が含まれます。この製品群により二次抗体と標識の広範囲で緻密な選択肢がさらに広がるため、研究者の皆様はさらに高い感度、高輝度の結果、および優れた光安定性をイムノアッセイで獲得できます。
CF™色素に関する詳細情報と蛍光色素比較チャートについては、sigma-aldrich.com/cfdyesをご覧ください。
ビオチン標識
ビオチン(ビタミンH)は、アビジンと4:1の割合で高親和性の結合(Ka = 1015)をする補助因子です。この結合力は、実質的に不可逆な相互作用をもたらします。この相互作用は、抗原の免疫標識のために組織染色、ブロッティング、およびマルチウェルのアッセイで利用されています。ビオチン標識抗体プローブは、組織サンプル、マイクロタイタープレート、またはメンブレン上の標的と結合します。酵素1、蛍光色素2またはコロイド金属3と結合したアビジンは、ビオチン標識プローブの複数の部位と結合します。このようにしてアビジンはシグナルを増幅し、結果として抗体-酵素または抗体-蛍光色素の複合体単独よりも高い感度をもたらします。可視化は、 蛍光の検出、酵素によって基質変換した比色法または化学発光法の最終生成物、または顕微鏡観察によって行うことができます。アビジン-ビオチン系は、免疫組織染色法と免疫細胞染色法4、イムノブロット5およびELISA6で使用されてきました。 内因性ビオチンを含む肝臓や腎臓などの一部の組織にアビジン-ビオチン系を使用すると、バックグラウンド染色が高くなるおそれがあります。8
参考文献
アビジン、ExtrAvidin®、ストレプトアビジン試薬
アビジンは、メンブレンや組織に対して非特異的結合を示すと報告されています。また、アビジンの非特異的結合が問題となるアプリケーション用にストレプトアビジンとExtrAvidin®を取り揃えています。
アビジン、ExtrAvidin®およびストレプトアビジンは、非標識、またはイムノアッセイ用に酵素、蛍光色素、および金コロイドの標識済み製品を取り揃えています。アビジンは、アガロースに固定されているタイプもあり、免疫沈降法やアフィニティ精製の処理に使用されます。
アビジン
アビジンは卵白に見られる65 kDaのタンパク質で、4つの同一サブユニットから成り、それぞれがビオチン(ビタミンH)に対する高親和性結合部位を持ちます。この結合力(Ka = 1015)は、実質的に不可逆な相互作用をもたらします。この相互作用は、抗原の免疫標識のために組織染色、ブロッティング、およびマルチウェルのアッセイで利用されてきました。ビオチン標識プローブは、二次抗体やレクチン、そのほかの生理活性物質で、組織サンプル、マイクロタイタープレート、またはメンブレン上のターゲットと結合します。酵素や蛍光色素などの標識と結合したアビジンは、基質の蛍光検出や酵素変換を検出することによりビオチン標識プローブと結合し、目に見える最終生成物を産生して可視化します。このシステムではアビジンは二次プローブとして機能し、一次ビオチン標識プローブの複数の部位に付着してシグナルを増幅します。アビジン-酵素複合体を使用すれば、酵素による基質変換によってさらに増幅され、基質が枯渇するか反応が停止されるまで、目に見える生成物を産生し続けます。
ExtrAvidin®
ExtrAvidin®は、卵白アビジンの修飾型で、アビジンのビオチンに対する高い親和性と特異性を維持しますが、アビジンで報告されているような生理的pHにおける非特異的結合を示しません。
ストレプトアビジン
ストレプトアビジンは、Streptomyces avidiniiによって産生されるアビジンの一種で、卵白アビジンより若干低い非特異的結合を示しますが、バックグラウンド染色が問題になることがあります。ストレプトアビジンは、約60 kDaのホモ四量体タンパク質で、それぞれが約15 kDaの4つの同一サブユニットから成ります。1分子のストレプトアビジンは、実質的に不可逆な非共有相互作用によって4分子のビオチンと結合します。
ExtrAvidin®染色キット
カタログでのみ入手可能なExtrAvidin®は特殊な形態のアビジンで、アビジンのビオチンに対する高い特異性および親和性と、生理的pHにおける低い非特異的結合を両立します。そのため、ExtrAvidin®アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼ複合体は、低バックグラウンドで高感度を示します。
特長・利点
参考文献
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