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細胞株の凍結保存

ECACC Laboratory Handbook 4th Edition

目的

細胞株の凍結保存

図1.細胞株の凍結保存

以下のプロトコルは、-80℃フリーザーを使用した細胞株の凍結保存法です。通常、ECACCではプログラムで制御されたフリーザーを使用しています。プログラム制御は細胞を凍結させるのに一番信頼性の高い方法ですが、多くの研究室にはコストがかかりすぎる場合がありますので、以下の方法を推奨します。もし多数の細胞株を日常的に保存する必要性がある場合はプログラム制御可能なフリーザーを使用するのが良いでしょう。

関連製品

  • 凍結用培地(通常は90% FBS、10% DMSO(カタログ番号C6164)またはグリセロール(カタログ番号C6039))
  • 70%(v/v)アルコール/滅菌水(793213
  • Ca2+/Mg2+不含PBS(D8537
  • Ca2+/Mg2+不含、0.05%トリプシン/EDTA含有HBSS溶液(T3924
  • DMSO(D2650

装置

  • 保護用具(滅菌グローブ、ラボコート)
  • フルフェイスマスク/バイザー
  • 37℃に設定したウォーターバス
  • 適切な封じ込めレベルの安全キャビネット
  • 遠心分離機
  • 血球計算盤(ヘモサイトメーター)(Bright-Line™血球計算盤(ヘモサイトメーター)製品番号Z359629、Improved Neubauer-Camlab CCH.AC1)
  • ラベル貼付済みアンプル/クライオチューブ
  • 細胞凍結保存用デバイス(例えばNalgene® Mr. Frosty製品番号C1562

キーポイント

  1. 凍結保存剤としてもっとも汎用されているのはジメチルスルホキシド(DMSO)ですが、DMSOは全ての細胞株の凍結保存に適しているわけではありません。HL60株などでは分化誘導を引き起こします。このような場合には代替としてグリセロールが使われる場合が多いですが、細胞株に添付されていた製品データシートで正しい凍結保存剤を確認しましょう。
  2. 上記で推奨されたECACCの凍結培地はほとんどの細胞株にとって良好でユニバーサルな培地であることが示されています。その他一般的に使用される凍結培地は70%基本培地、20%FBS、10%DMSOの組成ですが、全ての細胞株に使用できる訳ではありません。ルーチンワークとして使用する前に、自分の細胞に適しているのか必ず確認しましょう。
  3. 凍結する細胞は状態が良好で、対数増殖期であることが必須条件です。この状態にするには細胞が100%コンフルエントにならない(最大細胞密度を下回っている)よう注意して、培地は凍結する24時間前までには取り替えておきましょう。
  4. 適した冷却時間は細胞により異なることがありますが、一般的に1分間あたり-1~-3℃の冷却が多くの細胞に適しています。
  5. Mr. Frostyシステムの代替として使用されるTaylor Wharton passive freezerでは、液体窒素の蒸気で満たされたデュワー瓶のネックにアンプルを置くことができます。このシステムによりアンプルの温度を徐々に低下させることができます。多数のアンプルをルーチンに凍結する場合は、自動コントロールのフリーザーを使うのも良いでしょう。
  6. 使用可能な凍結装置がない場合の最後の手段として、アンプルを断熱性の高い箱(厚さ1cm以上のポリスチレン箱など)の中に入れ、-80℃で一晩置いてもよいです。その場合、凍結している間に箱が直立していることを確認することが重要です。凍結したら、アンプルを液体窒素貯蔵容器の気相に移し、その位置を記録しておきます。
  7. もし-80℃の冷凍庫による凍結を行う場合は、間違ってサンプルが移動されたりしないよう、細胞株の凍結用に割り当てられた場所を用意することが重要です。凍結中の重要なプロセスでこのようなことが起こってしまった場合、生存率と回復率に悪影響が生じます。
DMSOボトル

図2.DMSOボトル

Mr. Frosty containers

図3.Mr. Frosty Containers

実験手順

  1. 顕微鏡で培養細胞を観察して細胞密度を確認し、同時にバクテリアやカビのコンタミがないか観察します。対数増殖期の細胞を回収します。接着性細胞の場合は、可能であれば80~90%コンフルエントの状態で細胞を回収します。
  2. 既述のとおり接着性・半接着性細胞はトリプシン-EDTAを使用し、懸濁液の状態にします。懸濁液は加えたトリプシンと等量以上の新鮮な培地を加えて再懸濁してください。懸濁液の状態のまま使える細胞株もあります。
  3. 少量(100~200 μL)を取り、細胞をカウントします。理想的には、凍結後の良好な回復のため、細胞生存率は90%以上である必要があります。
  4. 残りの培養細胞を遠心します(150×g、5分間)。
  5. 濃度が2~4×106cells/mLになるように凍結培地に細胞を再懸濁します。
  6. 1 mLの細胞を、細胞株名・継代番号・ロット番号・細胞濃度・日付をラベルに記入した凍結保存アンプルにピペットで分注します。
  7. アンプルをpassive freezer(例えばNalgene Mr. Frosty Freezing Container)内に静置します。フリーザーをイソプロピルアルコールで満たし、-80℃で一晩置きます。
  8. 凍結したアンプルは液体窒素貯蔵容器の気相に移し、その位置を記録しておきます。

Bright-LineはCambridge Instruments, Inc.
の商標です。Nalgeneは、Thermo Fisher Scientificまたはその子会社の登録商標です。

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