生薬製品向け品質管理用標準物質における定量NMR
Markus Veit
i.DRAS GmbH, Fraunhoferstrasse 18b, 82152 Planegg/Martinsried, Germany
AnalytiX Volume 10 Article 1
生薬製品の製造承認手続きの範囲では、使用したすべての標準物質の包括申請資料と分析証明書をまとめなければなりません。この申請書類では、同定手段(NMR、MS、IR、UVなど)、純度(含水量、残留溶媒、無機不純物、有機不純物)、および標準物質の内容量に関する情報を提供しなければなりません。現在、アッセイは2種類の方法(好ましくは、互いに独立した方法)を使用して実施します。これには一般にクロマトグラフィー法を適用します。次に、純度試験の結果とクロマトグラフィー分離システムでの被分析物質ごとの面積百分率に基づいて内容物を割り当てます。しかし、この手順は純度が十分高い(99.5%超)標準物質にしか適用できません。
天然起源の標準物質は一般に複雑な分子構造を持つため稀にしか合成できず、天然源から単離しなければなりません。しかし、植物から99.5%を超える純度で物質を単離するには相当な努力が必要です。さらに、単離精製の領域はクロマトグラフィー法で行うため、認証の枠組みでの内容量分析と純度分析には同じ方法を利用するのが普通です。余分に行うことには、精製中に分離されなかった不純物を認証中にも見落とすリスクが伴います。このような不純物は被分析物質と生合成的に関連することが多く、構造が極めて類似しているために分離がますます困難になります。したがって、特に天然源から単離および精製された標準物質では、純度試験に適用する方法の選択性(特異性)が中心的な役割を果たします。その結果、確立された手順を使用して関連ガイドラインに従うだけで、天然源から単離された標準物質を認証できることはまずありません。
SI単位への直接トレーサビリティーを伝える「直接」または「相対」一次測定法は、説明したすべての問題を回避して計量品質の改善を保証します1。これらの方法は、医薬品標準物質として使用される天然物の内容物割り当てにますます利用されるようになっています。
定量NMR分光法(qNMR)は相対一次測定法です2。qNMRを利用すると標準物質とその認証の確立が単純化され、信頼性が向上します。定量NMR分光法の最も重要な原理は、シグナル強度と共鳴線に寄与する原子核の数が正比例することです。
一般に、内容量の分析には、主成分による直接分析と不純物による間接分析の2つがあります。内容物の割り当ては標準物質の認証に中心的な役割を果たすため、ここでは直接法を適用します。それには、主成分(標準物質)を内部標準に照らして評価します。この方法の利点は、主成分の最適積分可能なシグナルの明確な割り当てしか要求されないという事実にあります。この状況では、一般にその他のシグナルの組成および/または定性的な割り当てを知っている必要はありません。主成分の内容量を測定するには、内部標準と被分析物質を一緒に秤量して1本のNMRチューブに入れなければなりません。計算には、主成分と内部標準の適切な選択的シグナルの強度を使用します。被分析物質の相対的な内容量は、強度比に基づいてm/m%として計算できます。
例として、2-ヒドロキシ-3,5-ジニトロ安息香酸を内部標準として含むビテキシン-2"-O-ラムノシドのスペクトルを図1に示します。
図1.ビテキシン-2"-O-ラムノシドと内部標準の2-ヒドロキシ-3,5-ジニトロ安息香酸のNMRスペクトル。主成分の内容量の定量には、ビテキシン-2"-O-ラムノシドのプロトンH6と2-ヒドロキシ-3,5-ジニトロ安息香酸の芳香族プロトン(H4およびH6)を使用します。
最終的には、記述した方法を使用した内容物割り当てだけでなく、NMR法を構造解析の古典的なやり方で使用した同定試験もワンステップで行うことができました。したがって、非常に高価な天然物など、供給された認証が求められる物質を本質的に減らすことができるため、単離と精製に関連する広範な取り組みに伴う高いコストが削減されます。
欧州CCQM(Comité Consultatif pour la Quantité de Matière)は、物理パラメーターと分析化学における測定法の確度と精度の正確な記述と向上の調和を保証します。ドイツ連邦材料試験研究所(BAM)は、CCQM指令に基づいて定量NMR分光法の能力を規定し、国際的な試験所間試験でのその有効性を立証する責任を負っています3。BAMは、この点ではドイツ国内の計量機関として機能しています。ドイツの公的資金によるプロジェクトの中で、標準物質の認証妥当性を包括的に確認して結果を確立できます。現在、その大部分が公開されています4。NMR分光法は一次法の性質を持つため、CCQMに対する発表3,4で実証されているように、医薬品標準物質に対して計量学的に最高の品質でSIに基づく認証を実施するためのすべての要件を満たしています。研究プロジェクトの結果に基づいて欧州薬局方のNMR分光法に関連したモノグラフが改訂され、現在では医薬品分析の公定法としてqNMRを使用することが認められています。
qNMRは、このプロジェクトが実現されている間に、生薬製品の品質管理用標準物質としての天然物を認証する可能性がある一次分析法として基本的に適切であることが証明できました。生薬製品の分析に関連して選択した標準物質の全部で14種類の試料を使用し、定量1H-NMRの計量品質、したがって医薬品分析へのその適合性を調査しました。
スペクトル中のシグナルの定性的な割り当て(特異性および選択性)は定量分析で最も重要な部分であることが示されました。分子が大きく複雑なほど、この評価は困難になりました。その上、複雑な化合物の場合、極めて類似した構造を持つ不純物のスペクトルがわずかしか異なっていないおよび/または少数の振動数でしか異なっていないという事実が問題を大きくしました。しかし、この問題はNMR固有のものではなく、すべての分光法とクロマトグラフィー法にも伝えることができます。それにもかかわらず、被分析物質を選択的に定量できないために別の方法がうまくいかない場合でも、qNMRはスペクトル中のさらに遠いシグナルで評価して正確な結果をもたらしました。その上、いくつかの物質では、クロマトグラフィー法で検出されなかった別の不純物がqNMRで検出でき、部分的な同定と定量さえ可能になりました。対象である被分析物質のそれぞれについて、分析に使用するシグナルの選択性を1H-NMR(一部、13Cデカップリングを使用)と1H、13Cヘテロ相関二次元NMR法(HMQC、HMBC)によって確立し、不純物に由来するシグナルの割り当てについてはH、H相関二次元NMR法(COSY)によって確立しました。
その結果、今では標準物質を認証するためのqNMR測定の記録、処理、および評価の標準運用手順を利用できます。
ドイツの国内規制当局(BfArM)と欧州のEMEAがqNMR結果を許容することを確認するために、ICHガイドライン5に準拠してこれらの研究を実施しました。22の業界、研究所、および大学の機関で組織し評価した国内ラボ間試験により、1つの物質を基準にしたラボ内検証の一般化が明確に立証されました。
計量品質(確度と精度)を決定するために、ISOガイドラインに準拠した完全な不確かさのバジェットをqNMR分光法によるアッセイに対して確立しました。一般に、調査したすべての物質で1g/g%以下の拡張された測定の不確かさ(k=2)を決定しました。
参考文献
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