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ウェスタンブロッティングのローディングコントロール

Chandra Mohan, Ph.D., Wayne Speckmann, Ph.D, Robin Clark, Ph.D

ウェスタンブロッティングについて記載した最初の論文以来(Renart et al., 19791)、この免疫検出技術は、細胞または組織から抽出された複雑な混合物中の特定タンパク質を同定するために広く利用されています。ウェスタンブロッティングには3つの基本的な要素があります。タンパク質の大きさによる分離1、メンブレンなど固体支持体への転写2、適切な一次抗体を用いて標的タンパク質にラベリングし、続いて一般的には標識済み二次抗体を用いた可視化3です。その後のツールと技術の改良は、高感度の蛍光ラベルの開発とともに、検出限界を有意に高め、研究者が組織特異的な正常および疾患経路を調査できるようになりました。しかし、タンパク質レベルの変化を同定する定量的ウェスタンブロットを行う際、研究者はいつもいくつかの困難に直面します。これは、多くのタンパク質が異なる組織において、異なる生理学的および病理学的条件下で、異なる発現パターンを示すことによります。

ウェスタンブロッティング:単純ではないルーティン手法

ウェスタンブロッティングはおそらく世界中のラボで最もよく使用されている免疫アプリケーションですが、それでも見落とされてきた可能性がある重大な技術的問題がいくつか存在します。例えば、単離または分離プロトコルはタンパク質の完全性やその翻訳後修飾に影響するのでしょうか?タンパク質の分解または凝集と生物学的過程の関連産物とを区別できるでしょうか?結果が複数のバンドの場合、どのようにして結果なのか、変異なのか、人工物なのかを判別できるでしょうか? (Gorr and Vogel, 2015)

定量的ウェスタンブロットは異なる個体、治療条件、病状、または他の生物学的変数を表す一群のサンプル中の標的タンパク質の相対量を比較するために使用されます。複数サンプルの総タンパク質レベルを正確に識別して測定するために、研究者は内部標準として「ローディングコントロール」を使用します。このコントロールは、すべてのサンプル中に存在すると推定され、その相対存在量が生物学的変動または実験条件によって影響されないタンパク質に対する一次抗体の添加を指します。  ローディングコントロールのための一般的に良い候補のタンパク質は、偏在的に発現される「ハウスキーピング」遺伝子産物です。ローディングコントロールの使用は、異なるサンプルレーン間でローディングコントロールが同一という仮定のもと、結果を標準化するためにすべてのウェルにわたるサンプルの定量化を可能にします。ローディングコントロールを使用すると、「エッジ効果」を防ぐことができます。エッジ効果とは、多数のレーンを使用した場合に、外側のレーンのタンパク質は、フレームに近い位置でメンブレンに転写され、ブロットの端でより強い染色を引き起こす、一般的に見られる現象です。ローディングコントロールは、タンパク質をローディングするのにばらつきがあるかどうかを示すことに使用でき、標的のバンドでの変動を説明することができます。正しく使用すると、ローディングコントロールにより、ウェスタンブロットのすべてのレーンでローディング量にわずかな違いがあっても、タンパク質が適切に定量されるようになります。

ウェスタンブロット検証

抗β-アクチンモノクローナル抗体(A5316)のウェスタンブロット検証β-アクチン、β-チューブリン、GAPDHなどの構成的に発現するタンパク質は、定量的ウェスタンブロッティング用のローディングコントロールとしてよく選ばれます。ローディングコントロールの使用は、標的タンパク質の存在量の明らかなばらつきが、ゲルにロードされた総タンパク質量の不一致によるものではなく、関連する生物学的な変動に起因するものであることを確認するのに役立ちます。下記の表は、ウェスタンブロッティングのローディングコントロールとして有用なサンプル特異的および条件特異的な抗体を示しています。

ローディングコントロール抗体の選択

βアクチンおよびβチューブリンは、それらの発現がほとんどのモデル系で比較的構成的であるため、ローディングコントロールとして一貫して使用されています。  しかし、βアクチンおよびβチューブリンのレベルは組織間で異なり、その発現は病態の影響を受ける可能性があるという理由で、標準的なローディングコントロールとしてβアクチンを使用することの妥当性を疑問視する論文もあります(Ditmar and Ditmar, 2006; Eaton et al., 2013; Li and Shen, 2013)。これらの論文の著者らは、定量的ウェスタンブロッティングの代替技術として全タンパク質分析を提案しており、「ハウスキーピング」遺伝子産物は実験中の遺伝子の発現パターンを研究した後に慎重に使用すべきであると推奨しています。しかし、β-アクチンとβ-チューブリンは高度に保存されており、発現レベルが高く、大抵の実験条件下で安定性があるため、ローディングコントロールとして確かな利点があります。研究されている特定の組織または細胞に基づいてコントロールを選ばなければならないことに注意することは重要で、ローディングコントロールの均一性を検証するためのテストが必要になるでしょう。

ローディングコントロール抗体から効果的な結果を得るためのヒント

ウェスタンブロッティングのばらつきを克服し、データ解釈の誤りを減らすには、以下のいくつかの注意事項が役立つでしょう。

  • 安定的に発現し、実験条件による影響を最小限に抑えた内部ローディングコントロールを使用する。
  • サンプル中に構成的に発現していることが知られているタンパク質に対するローディングコントロール抗体を選択する。
  • 1つ目のコントロールで得られた結果を実証するために、2つ目のローディングコントロールを利用する。新しいサンプルまたは新規のサンプルの場合は、特に有用である。
  • ローディングコントロールは広範囲の分子量をカバーしなければならない。このため標的タンパク質と同一ではなく近似の分子量レンジのコントロールを選択することになる。これにより、ブロット上で標的バンドとコントロールバンドの両方を簡単に区別できるようになる。
  • ローディングコントロール抗体は、大量に発現しているハウスキーピングタンパク質を検出していることが多く、特に化学発光検出法を使用する場合はシグナル飽和を引き起こすことがある。飽和状態になるとローディングコントロールバンドが参照として役に立たなくなり、標的タンパク質量のサンプル間のばらつきを見えなくする可能性がある。

ローディングコントロールのシグナルが検出の直線範囲内に現れるように、開始前に使用するサンプルでローディングコントロールの最適な抗体濃度とブロット露出時間を決定してください。

表1:ローディングコントロール例
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参考文献

1.
Renart J, Reiser J, Stark GR. 1979. Transfer of proteins from gels to diazobenzyloxymethyl-paper and detection with antisera: a method for studying antibody specificity and antigen structure.. Proceedings of the National Academy of Sciences. 76(7):3116-3120. https://doi.org/10.1073/pnas.76.7.3116
2.
Dittmer A, Dittmer J. 2006. β-Actin is not a reliable loading control in Western blot analysis. Electrophoresis. 27(14):2844-2845. https://doi.org/10.1002/elps.200500785
3.
Eaton SL, Roche SL, Llavero Hurtado M, Oldknow KJ, Farquharson C, Gillingwater TH, Wishart TM. Total Protein Analysis as a Reliable Loading Control for Quantitative Fluorescent Western Blotting. PLoS ONE. 8(8):e72457. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0072457
4.
Li R, Shen Y. 2013. An old method facing a new challenge: Re-visiting housekeeping proteins as internal reference control for neuroscience research. Life Sciences. 92(13):747-751. https://doi.org/10.1016/j.lfs.2013.02.014
5.
Gorr TA, Vogel J. 2015. Western blotting revisited: Critical perusal of underappreciated technical issues. Prot.Clin. Appl.. 9(3-4):396-405. https://doi.org/10.1002/prca.201400118
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