ハイドロゲル
生理学的状態の細胞は、通常、細胞外因子と三次元(3D)で相互作用しています。細胞外マトリックス(ECM)は、ペプチド、多糖類、タンパク質、酵素および細胞外に存在するシグナル伝達分子で構成された生物学的ポリマーの複合体です。細胞とそれを取り囲むECMとの相互作用により、細胞の極性化、形状、運動性、分化などの多くの表現型に影響を及ぼす合図が送られます。従来の、通常はポリスチレンまたはガラス製の二次元(2D)基質の上で培養され増殖した細胞の多くは、in vivoで観察される同じ種類の細胞の表現型を十分には再現しません。In vitroで培養された細胞を、元の生理学的組織に非常に近い状態にするためのアプローチの1つに、ECMを生理学的に模倣した3Dハイドロゲルの中に細胞を封じ込めて培養する方法があります。この戦略は、通常、3D細胞培養と呼ばれる、幅広い三次元の細胞培養アプローチのなかの1分野です。
図1.ハイドロゲルが、生物学的関連性の高い3D細胞培養を可能にします。
3Dハイドロゲルを用いるアプリケーション
3Dハイドロゲル内で増殖した細胞は、数多くのアプリケーションで有用であることが証明されています。従来の不死化細胞株をハイドロゲルに封入された状態で培養し、スフェロイドと呼ばれる多細胞性の複合体を形成することができます。スフェロイドは、2D環境で培養した同じ細胞では見ることのできない大量の情報を提供することが証明されています。3Dハイドロゲル内で増殖した幹細胞は、本来の組織に非常に似た、複数の細胞種に分化することが可能です。幹細胞は3Dオルガノイドを形成して、ミニ臓器に分化するようプログラムすることができます。このミニ臓器は、予測性が高く、再現可能かつ拡張可能な、複雑な生理学的in vitroモデルとして用いられています。ハイドロゲルを用いた細胞培養のほかのアプリケーションでは、形態学的特性の獲得や細胞運動性を含む細胞の物理的刺激感受性の挙動に対する、ハイドロゲルの生理学的特性の解明に着目しています。
天然由来3Dハイドロゲル
生理学的な細胞外マトリックスをin vitroで模倣する、最も伝統的な方法は、生物から抽出した天然のECMを用いることです。伝統的に、Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫の基底膜から抽出したECMが、3D細胞培養アプリケーションに用いられてきました。都合のよいことに、EHS ECM抽出物は4℃では液体で、室温でゼラチン化するので、簡単に細胞を封じ込めることが可能です。これは、ECM Gelハイドロゲルとして市販されています。いくつかのアプリケーションでは、ヒト細胞由来のECM抽出物が重要となります。MaxGel™ ECMは、in vitro由来のヒトの基底膜抽出物(BME)です。
合成3Dハイドロゲル
一部のアプリケーションでは、再構成された合成ハイドロゲルが最適な選択肢かもしれません。化学組成の明らかなハイドロゲル製品は再現性が高く、成長因子などの培地成分の存在や濃度がわかっています。さらに、特定のアプリケーションでは、ハイドロゲルの主要な物理的パラメータが重要かもしれません。具体的な例を挙げると、
- 弾性係数
- 孔径
- ハイドロゲルの膨潤
- 架橋形成
- 解離条件
私たちは、HyStem®ハイドロゲルスキャフォールド、TrueGel3D™ハイドロゲルキットおよびCell-In-a-Box®技術を含む、合成ハイドロゲル開発に用いられる試薬、キットおよびプロトコルを複数取り揃えています。
図2.合成細胞外マトリックス(ECM)
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