3D細胞培養
従来の細胞培養技術は、シンプルな無孔質の二次元(2D)表面の上で開発されました。そのシンプルさから、不可欠なテクニックとしてライフサイエンス分野全体に広まりました。細胞は、in vivoにおいて三次元の環境と相互に作用し合うことから、3D細胞培養のツール、試薬およびテクニックは、がん研究、創薬、神経科学および再生医学を含む多種多様なアプリケーションおよび領域に関する、予測精度の高いin vitro細胞モデルの創造に貢献しています。
一般的に、3D細胞培養モデルはその方法から、以下の2種類の主要カテゴリに分類することができます。1)ハイドロゲルや3Dスキャフォールドを用いた、スキャフォールド(足場)提供型の技術および2)通常、スフェロイドと呼ばれる、自由に浮遊する細胞凝集体を用いるスキャフォールドフリー型の技術。どちらの技術を選ぶかは、原則的には細胞自体の性質によりますが、3D培養の目的や目標にも依存します。
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技術資料・プロトコルの検索
スキャフォールド(足場)提供型の3D細胞培養技術
スキャフォールド提供型培養では、人工構造物またはハイドロゲルと呼ばれるポリマーネットワークにより細胞が立体的に支持されます。これらの親水性ネットワークは、90%以上の水分を含み、動物由来の細胞外マトリックス(ECM)タンパク質で構成されていますが、アニマルフリーの合成製品も利用可能です。細胞は、in vivoにおける細胞外マトリックスを模倣したハイドロゲルの中に封入されます。
いわゆる“ハード”スキャフォールドを、特殊な培養用器具を使って、主にポリカプロラクトンなどの生分解性物質できた線維状またはスポンジ様の物質、あるいはイメージングに適した透明なポリスチレンから作製することも可能です。これらの作られた足場は、in vivoのECMには似ていませんが、再現性が強化されており、培養からの細胞の回収が容易です。
スキャフォールドフリー型の3D細胞培養技術
足場のない状態で増殖した細胞は、スフェロイドと呼ばれる立体的な凝集体を形成し、ECMを分泌して本来の固形組織に似た状態になります。一般的な例として、tumorsphere(がん幹細胞塊)が挙げられますが、このtumorsphereは腫瘍形成における酸素濃度勾配および栄養素へのアクセスに関する研究を可能にします。創薬や毒性の分野では、2D培養よりも生物学的関連性の高いモデルのスフェロイド培養が、ハイスループット化合物スクリーニングにおいては多く好まれます。スフェロイドは、低接着性マイクロプレート、バイオリアクターおよびマイクロ流体培養システムなどの様々な環境で培養することができます。スキャフォールドの有無を問わず、このシステムは、あらゆる方向からの基質、その他の細胞および細胞外の因子との相互作用を可能にします。
より高度な3D細胞培養アプリケーション
高度な3D細胞培養システムを用いることにより、倫理的問題を気にせずに、古典的な2D細胞培養技術のアクセスしやすさとin vivo動物モデルの生物学的関連性とを融合することが可能です。最近では、腫瘍スフェロイド、幹細胞由来または患者由来のオルガノイド、ならびに細胞やバイオインクを用いた3Dバイオプリンティングで作製した組織などの高度な3D細胞培養技術を用いて、よりin vivo近い細胞応答がモデル化されています。一部の組織については、iPS細胞由来オルガノイドの販売が開始されたことにより、再現性がより向上し、研究室で作られたオルガノイドとの比較が促進されています。
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