ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のアプリケーション
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は分子生物学の中で中核的な役割を担う強力な手法であり、効率的かつ迅速なin vitro法でさまざまな材料から特定のDNAまたはRNA配列を酵素を用いて増幅します。標準的なPCRは以下の要素から構成されます:標的DNA、合成オリゴヌクレオチドプライマーのセット(標的DNA配列を側面から攻撃)、熱安定DNAポリメラーゼ(通常はTaqポリメラーゼ)、ヌクレオチド。サーマルサイクラーによる増幅サイクルは、1回のサイクルごとに以下の3ステップが進行します:二本鎖DNA(dsDNA)を変性させて単鎖DNAへ分離、標的DNAの配列に合わせてプライマーをアニーリング、最後に伸長。最後のステージでは、DNAポリメラーゼがプライマー由来のDNAを伸長して新しいdsDNA(オリジナルの鎖と新規作成した鎖を持つ)を生成します。1回のサイクルで合成された鎖を次回のサイクルでテンプレートとして使用することにより、20回のサイクルでDNAの量が100万倍にも増幅されます。
逆転写PCR(RT-PCR)
RT-PCR(逆転写PCR)は標準PCR法の変形の1つであり、非常に小さなサンプルから取得した特定のmRNAの増幅過程を含むことを特徴とします。標準的なクローニング法で必要となる退屈なmRNA精製プロセスを省略できるのが利点です。RT-PCRでは、標準PCR試薬に加えて、逆転写酵素とRNAサンプルを使用します。反応混合物を37℃まで加熱することにより、逆転写酵素がRNAサンプルから相補的cDNAのコピーを作成できるようにします。このcDNAがプライマーの1つにアニーリング(対合)することによって、第1鎖が合成されます。それ以後は標準PCRと同じプロセスが繰り返され、最終的にdsDNAが作成されます。RT-PCRはしばしばリアルタイムPCR(qPCR)と組み合わせて使用されることがあり、この手法は細胞や組織内での転写レベルを定量する目的で広く使用されています。
ホットスタートPCR
ホットスタートPCRは、加熱による活性化段階が開始されるまで反応設定中のホットスタートTaqポリメラーゼまたは修飾dNTPの取込みを阻害する技術です。ホットスタートポリメラーゼの活動を阻むために使用できる方法は、化学修飾、抗体媒介、アプタマー媒介法を含めてさまざまな方法が存在します。
長鎖標的を正確に増幅するエンドポイントPCR
標的の存在検出や反応完了時における相対的存在量の確認を目的としてエンドポイントPCRがしばしば使用されます。標準PCRを使用して作り出される配列の長さは限定(5kb程度)されますが、「校正」活性を示す追加ファクターを組み込むことによって問題を克服できることがあります。LA(Long and Accurate)PCRは第二の熱安定ポリメラーゼ(末端ヌクレオチド誤取り込み修復のためにエキソヌクレアーゼの位置が3′→5′へ変化)を組み込むことによって、長さが40 kbに達するDNA標的を増幅することが可能であり、フィデリティもはるかに優れています。
関連技術資料
- This page shows PCR and RT-PCR amplification troubleshooting.
- Digital PCR is an end-point PCR method that is used for absolute quantification and for analysis of minority sequences against a background of similar majority sequences, e.g., quantification of somatic mutations.
- Ethidium bromide is a well-known and widely used fluorescent dye in biotechnology research.
- The polymerase chain reaction is one of the most widely used techniques in molecular biology. The PCR process consists of three main steps, Denaturation, Annealing & Extension
- The purpose of Hot Start PCR is to inhibit the PCR reaction in order to reduce nonspecific amplification, prevent the formation of primer dimers, and increase product yields.
- すべて表示 (118)
関連プロトコル
- 標準PCRプロトコルのステップについて理解し、試薬リストやサイクルパラメータを確認しましょう。DNAの一般的なPCR増幅に用いるこの手法には、標準的なTaq DNAポリメラーゼが使用されます。
- アニーリングとは、相補的配列を有する2つの一本鎖オリゴヌクレオチドを加熱・冷却して二本鎖を形成させる工程です。加熱によってすべての水素結合が切断され、冷却によって配列間に新しい結合が形成されます。
- 最近接塩基法または基本計算法のような理論的方法を用いてオリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)を計算します。DNAの融解温度(Tm値)とは、オリゴヌクレオチドの50%が完全に相補的な分子と二本鎖を形成し、残りの50%が溶液中に遊離している状態になる温度です。
- 変動性をもたらすさまざまな要因は、PCRのワークフロー全体に影響を及ぼします。サンプルの原料や逆転写ステップの要件など、可変コンポーネントの多くは避けられません。アッセイデザインも変動性が高く、PCRの成否を分けうる要因であると同時に、アッセイの再現性や感度に貢献する要因でもあります。
- The exrract-N-Amp kit protocol provides a rapid DNA extraction method that leads to a PCR-ready sample in 15 minutes. Optimized PCR ReadyMix yields successful and clean amplification. RED loading dye allows for sample tracking.
- すべて表示 (83)
技術資料・プロトコルの検索
続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。
アカウントをお持ちではありませんか?