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免疫組織染色:皮膚がんにおける現行のアプリケーション

免疫組織染色の技法およびアプリケーションは過去25年間で大きく進歩しましたが、皮膚病理学診断は今なおH&E染色スライドを主な基盤としています。しかし、判定が困難な症例の診断において免疫組織染色(IHC)が役立つ例が多くあります。皮膚病理学における抗体利用法のいくつかを以下に示します。

皮膚紡錘細胞腫瘍

日光により損傷した皮膚の異型紡錘細胞腫瘍の鑑別診断には、異型線維黄色腫、紡錘細胞または線維形成性黒色腫、紡錘細胞扁平上皮がん、および平滑筋肉腫が含まれます。これは皮膚腫瘍の病理学において珍しくありませんが、見分けることが困難です。  重複反応および、まれではあるものの異常発現の可能性があるため、これらの診断それぞれを裏付けるまたは否定するIHCマーカーのパネルを選択する必要があります。

紡錘細胞SCC

扁平上皮がん(SCC)は通常、ビメンチンではなくサイトケラチンを用いて染色されます。しかし、表皮内のがんの発生起源が明らかでない、または角質化のエビデンスが認められない紡錘細胞SCCは、多くの場合、ビメンチン陽性であり、AE1およびAE3を含むルーチンのサイトケラチン染色では陰性または局所的にのみ陽性です。FolpeとCooper 1は、CK903(34betaE12)およびCK5&6など高分子量(HMW)サイトケラチンがこの状況で感受性を示すマーカーであることを発見しましたが、一部の紡錘細胞SCCはいずれにも染色されません。2-4

異型線維黄色腫

異型線維黄色腫(AFX)は、低悪性度の多形性の表在性紡錘細胞腫瘍であり、真皮の他の異型紡錘細胞腫瘍と組織学的に識別する必要があります。これらの他の腫瘍の多くには免疫組織染色的マーカーが存在しますが、AFXの診断は概ね例外の一つです。  さまざまなマーカーがAFXの反応性により特定されていますが、これらのマーカーのみ特異的ではありません。プロコラーゲン1(PC1)、CD10、およびS100A6は通常AFXで反応性がありますが、これらのマーカーはしばしば他のさまざまな腫瘍を染色します。プロコラーゲンは線維芽細胞から分泌され、細胞外マトリックスで切断されコラーゲンを生成します。大半のAFXでPC1発現がみられることから、この腫瘍は線維組織球性に分類されると考えられています。ただし、PC1染色は単独では使用しません。平滑筋肉腫の約4分の3、また、線維形成性黒色腫(DM)および紡錘細胞SCCの約3分の1もPC1陽性であることから、ケラチン、S-100、またはデスミンとの反応性はPC1陽性を上回ります。5-7 すべてのIHCマーカーと同様、この抗体染色の綿密な局在性を確立する必要があります。PC1+腫瘍細胞は、陽性のバックグラウンド線維芽細胞と識別する必要があります。

S100A6(カルサイクリン)はS-100ファミリーのカルシウム結合タンパク質であり、メラニン形成細胞(メラノサイト)、シュワン細胞、ランゲルハンス細胞、および真皮樹状細胞から分離されています。母斑および一部の黒色腫(メラノーマ)の染色を除き、多数の線維組織球性病変はS100A6で陽性染色を示します。ある小規模の研究8では、AFX症例の80%(5例中4例)でS100A6の存在が明らかにされました。しかし、紡錘細胞の識別における他の腫瘍でもまたS100A6との反応性が明らかにされており、そこにはかなりの割合でDM、平滑筋肉腫、および紡錘細胞SCCが含まれます。9

同様に、CD10はAFXに対し感受性を示しますが、特異的ではありません。ある小規模の研究10 では、AFXの94%(16例中15例)でCD10の強い発現が示された一方で、DMの3分の1(9例中3例)、紡錘細胞SCCの2分の1(10例中5例)で反応性についても確認されました。

筋線維芽細胞の識別の指標となる筋原性マーカー(カルポニン、SMA、HHF35)の局所発現は、AFXの最大3分の1で認められます。1, 11したがって、アクチン、平滑筋(SMA)またはカルポニンのみの使用では平滑筋肉腫の診断には不十分であり、デスミンまたはh-カルデスモンなど他の筋肉マーカーをパネルに含める必要があります。S-100+樹状細胞は病変部(おそらくランゲルハンス細胞)でコロニー形成するため、AFXでのS-100の解明には注意を要します12,13が、腫瘍細胞は概ねS100-であり、実質的にはDMは除外されます。また、AFXの多核巨細胞はMART-1/MelanAおよびHMB-45を発現します。14,15

従来、AFXで使用される反応性の低い他の非特異的マーカーには、CD68、13 アンチキモトリプシン、アンチトリプシン、16およびCD9917  が含まれています。研究によりCD163はリソソームを染色する細胞小器官特異的マーカーであるCD68と比べて組織球に特異的であることが示されています。一部のAFXでCD68反応性が認められるため、CD163発現が報告されたことは驚くべきことではありません18。  

偽血管腫性または出血性の特徴を有するAFXを血管肉腫と識別する際には注意が必要です。AFXでD2-40、FLI-1、およびCD31が不定期に発現することにより、さらに複雑化する可能性があります。19-22CD34およびERGは、これらの存在の識別に有用となる可能性があります。21

線維形成性黒色腫

線維形成性黒色腫(DM)ではしばしばメラニン欠失が認められ、時には境界部病変が認められない場合もあります。鑑別診断を検討する際には、サイトケラチン(2%)、SMA、およびデスミンがDMで異常発現する可能性があることに留意する必要があります。  また、CD68+黒色腫はAFXと誤診される可能性があります。HMB-45は通常陰性であり、Melan AはDMの7%でのみ陽性です。23

小眼球症転写因子(MiTF)も同様にDMでは低い感度を示しています。S-100は、特異的ではないものの紡錘細胞黒色腫/DMに対し感受性を示すマーカーです。ただし、多くの瘢痕には、特に再切除標本では識別を複雑化するS-100+紡錘細胞が含まれていますが、DMとは異なり、S-100+細胞は限局性であり、主に水平方向に存在します。  神経成長因子受容体(NGFR)(p75)は、ほとんどの線維形成性黒色腫および神経向性黒色腫で発現する神経堤マーカーであり、しばしばS-100よりも強く発現します。24,26

平滑筋肉腫、AFX、および紡錘細胞SCCの81%はp75に対し陰性であり、反応性を有する紡錘細胞SCCは陽性の限局性の病巣のみを示します。25 しかし、末梢神経鞘腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、神経性母斑など他の多くの悪性紡錘細胞腫瘍もまた、p75陽性を示します。線維形成または神経向性が認められない紡錘細胞黒色腫、多くの典型的な類上皮黒色腫、および母斑は、p75で染色されない、または限局的にのみ染色されます。26 瘢痕では、S-100と同様にp75+細胞が認められることがあり(おそらく筋線維芽細胞、神経小束、またはシュワン細胞)、瘢痕とDMを識別する際に注意が必要です。27

性決定領域Y-box10(SOX-10)は、特異性が改善されたS-100と同等の感度を有するDMマーカーであることが実証されています。AFXおよび紡錘細胞SCCはSOX-10発現を示しませんが、悪性末梢神経鞘腫瘍はS-100と同様に散在性の陽性を示します。28SOX-10は、特に再切除標本でのDMの特定において重要な代替手段となっています。Ramos-Herberth ら29により、瘢痕の組織球および線維芽細胞でMiTFおよびS-100の強い発現が認められたのに対し、瘢痕の紡錘状線維芽細胞におけるSOX-10発現はまれであり弱いと報告されました。

誤診を防ぐため、異型皮膚紡錘細胞腫瘍では免疫組織染色的マーカーのパネルを使用する必要があります。DMに対してはS-100およびSOX-10、紡錘細胞SCCに対しては高分子量ケラチンおよびp63、平滑筋肉腫に対してはデスミンおよびh-カルデスモン、そして出血性腫瘍の場合、血管肉腫に対してはERGまたはCD34を組み合わせます。

皮膚付属器腫瘍

皮脂腺腫瘍

皮脂腺がんと扁平上皮がん(SCC)の識別は困難な場合があります。安齋ら30は、アンドロゲン受容体(AR)およびアディポフィリンの発現がSCCではなく皮脂腺がんの診断を裏付けることを発見しました。  皮脂腺の上皮腫(皮脂腺腫)は、ほとんどが基底類似細胞で構成されており、成熟した皮脂腺細胞の割合はわずかです。したがって、皮脂腺腫の基底類似細胞と基底細胞がん(BCC)の基底類似細胞には組織学的な重複があります。IHCは一般的に識別には不要ですが、上皮膜抗原(EMA)は皮脂腺腫における大半の成熟した皮脂腺細胞を明らかにするもののBCCでその発現がみられることはまれです。31,32  また、皮脂腺腫のアディポフィリンに対する反応性によりBCCと識別することも可能です。1 この環境下でのBer-EP4の有用性については議論の余地があります。BCCはBer-EP4に対し陽性染色を示しますが、皮脂腺病変におけるその反応性についてはさまざまな文献に記されています。31,33

アディポフィリンは細胞内脂肪滴の表面に存在するタンパク質であるため、皮脂腺病変、特に高分化病変で発現します。皮脂腺腫瘍と明細胞組織構造を有する他の皮膚病変を識別するためにアディポフィリンを使用する場合は、注意が必要です。  転移性腎細胞がんおよびエクリン-アポクリンがんは発現を示しています。34,35 黄色腫および黄色肉芽腫を含む黄色腫性病変は、アディポフィリン反応性を示すことが報告されていますが、皮脂腺腫瘍での膜小胞パターンとは対照的に、黄色腫性病変ではより顆粒状パターンを示しています。34 この顆粒状パターンは明細胞BCCおよびSCCでも報告されており、これらの腫瘍を皮脂腺がんと識別する際に混乱を引き起こす可能性があります。しかし、顆粒状パターンの存在および発現強度の低下は前者の腫瘍に優位に働きます。35,36 侵襲的な経過を示す可能性のある皮脂腺がんは、良性皮脂腺腫瘍と正確に識別する必要があります。Cabralら37は、特に小さな部分生検において、形態学的識別に有用となる免疫組織染色的方法を探し求めました。p53タンパク質は腫瘍抑制因子です。突然変異により、免疫組織染色的(核染色)に検出可能な、異常に安定であるが不活性なp53タンパク質が生成されます。  皮脂腺がんは、おそらく欠陥のあるp53増加と関連しています。   皮脂腺がんでは、皮脂腺腫および皮脂上皮腫と比較して、p53およびKi-67(MIB-1)による核染色が有意に増加し、BCL2およびp21レベルが低下しています。

一部の症例では、IHCは原因となる遺伝的事象の代替タンパク質マーカーとして機能することができます。皮脂腺腫瘍は比較的まれであり、その診断によりミュアトール症候群(MTS)の可能性が高まります。一部の患者では最初の症状としてみられるのは皮脂腺腫のみであるため、皮膚病理医が最初にこの症候群ではないかと疑う可能性があります。MTSは、特に泌尿生殖器および胃腸で認められる複数のケラトアカントーマおよび内臓悪性腫瘍を伴う常染色体優性疾患です。  低頻度の関連疾患として、乳房および肺の腫瘍が含まれます。MTSは、ミスマッチ修復遺伝子MSH2およびMLH1の変異による不活性化に起因するものが最も多く、マイクロサテライト不安定性がもたらされます。MSH6およびPMS2など、他のミスマッチ修復タンパク質が関与している可能性があります。  特に50歳未満の患者で、複数の病変が存在する場合、腫瘍が非顔面部位を含む場合、また、嚢胞性またはケラトアカントーマ様の構造が存在する場合、皮脂腺腫瘍(皮脂腺増殖症を除く)においてこのパネル(MSH2、MLH1、MSH6、PMS2の有無にかかわらず)をチェックすることは合理的です。38,39 一部の文献の著者は保守的であり、結腸直腸がんの個人歴または家族歴のある患者のみのスクリーニングを推奨していますが、40 他の著者41,42 は、年齢またはその他の臨床的特徴にかかわらずスクリーニングを実施するよう推奨しています。

毛根鞘腫

孤発性毛根鞘腫は通常散発性ですが、多臓器での過誤腫性増殖およびがん腫を特徴とする常染色体優性疾患であるカウデン症候群と関連している可能性があります。この症候群は、バンド10q23.3にある腫瘍抑制因子ホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)の生殖細胞変異と関連しています。PTENによる免疫反応性の完全な消失は、カウデン症候群関連毛根鞘腫患者6人中5人(83%)に認められましたが、散発性病変の患者では33人中1人(3%)のみでした。43Shonら44により、カウデン症候群関連病変13例および散発性毛根鞘腫19例で同様の結果が報告されています。このことから、免疫組織染色的スクリーニングの役割はMTSでの使用と同等であることが示唆されています。線維形成性毛根鞘腫の部分生検では、BCCとの識別を要する場合があります。毛根鞘腫の上皮細胞におけるCD34免疫検出は、識別に役立ちます。45

転移性腺がん由来の原発性皮膚付属器腫瘍

転移性腺がんと原発性皮膚付属器腫瘍(PCAN)、特に悪性腫瘍との識別は困難な場合があります。Qureshiら46 により、汗腺分化を伴うほとんどのPCANがp63ならびに高分子量CK5および6に対して陽性であるのに対し、転移性腺がんでは発現がまれであることが判明しました。示差的なp63反応性は他の研究でも裏付けられています。47-49

同様に、Plumb24により、研究対象の大半の腫瘍が良性であったにもかかわらず、PCANの95%以上でCK5および6の発現があったことが判明しています。全体で、転移性腺がんは症例の33%(27例中9例)のみでCK5/6を発現し、主としてその強度は弱いものでした。しかし、転移性乳がんは、症例のほぼ半数でCK5および6に反応しました。50  Ivanら51 は、p63の解析を拡張し付属器がんからの転移を含めたところ、PCANの91%がp63で強く標識されており、アポクリンがんおよび粘液がんを除き、それらの転移は同様に標識されていることが判明しました。

また、ポドプラニン(D2-40)の発現は、PCANから皮膚に転移した腺がんの識別に役立ちます。D2-40との反応性は、原発性皮膚がんおよび皮膚付属器腫瘍では認められますが、皮膚への転移性腺がんでは認められません。47,52Mahalingam48が示唆したとおり、免疫組織染色のパネルは転移性腺がんとPCANとの識別において最高の感度および特異度を提供する可能性があります。これらの推奨パネルには、p63、D2-40、およびCK15が含まれていました。これら3つすべての陽性染色は、転移性腺がんではなくPCANの診断に優位に働きます。

腺がんは皮膚に転移し、まれに、それが一次診断の最初の症状となる可能性があります。原発部位の特定は、良好な予後および治療効果をもたらします。IHCは多くの症例で有用性を示しています。示差的なサイトケラチン染色(CK7およびCK20)は、この環境下では役立つ場合がありますが、特異的ではありません。最も多くみられる皮膚転移のうち、乳腺がんおよび肺腺がんはCK7+/CK20-であり、結腸直腸がんはCK7-/CK20+です。53 他の有用な免疫組織染色にはCDX-2およびTTF-1などがあります。核マーカーであるCDX-2は、ほぼすべての結腸直腸がんで発現していますが、胃腺がん、胆膵腺がん、粘液性卵巣腺がんなど、他のいくつかの腺がんでも発現しています。54,55  TTF-1は肺または甲状腺を原発部位とする腫瘍に比較的特異的なマーカーです。肺腺がんの約3分の2がTTF-1を発現しています。しかし、発現は通常、肺がんおよび肺粘液性腺がん/細気管支肺胞がんのSCCでは認められません。54,56 CDX-2およびTTF-1は、原発不明の転移性腺がんの原発を特定するために抗体パネルに追加されました。Parkら57 は、原発部位の予測を改善する抗体パネルを提案し評価しました。パネルには、CK7、CK20、TTF-1、およびCDX-2に加え、がん胎児性抗原(CEA)、上皮ムチン遺伝子MUC2およびMUC5AC、ER、ならびにgross cystic disease fluid protein 15(GCDFP-15)が含まれていました。GCDFP-15は、43~77%の反応性を有する比較的特異的な乳がんのマーカーです。この数値は感度が限定的であることを示しています。ムチンの発現量は、異なる臓器から発生するがん腫間で異なります。MUC2およびMUC5ACはそれぞれ、主に結腸腺がんおよび粘液性卵巣腺がんで発現しますが、重複するパターンがあります。表現型の組み合わせにより、症例の75%で原発部位が正確に予測されました。57 皮膚転移は腎細胞がん(RCC)患者の最大11%で発生し、疾患の徴候を示している可能性があります。58 CD10は、急性リンパ性白血病で最初に特定された金属膜エンドペプチダーゼであり、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、肝細胞がん、尿路上皮がん、および前立腺がんでも発現しています。59  CD10は腎がん、特に明細胞がん、およびそれほど多くはありませんが乳頭状または嫌色素性RCCの診断の確定に使用されることがあります。60  転移性RCCの組織学的鑑別診断には、原発性皮膚付属器腫瘍が含まれます。CD10は、付属器腫瘍においてBahramiら58  により評価され、その識別における有用性が判定されました。エクリンおよびアポクリン腫瘍の6%および皮脂腺腫瘍の40%がCD10反応性を示しました。また、皮膚に転移したRCCは他の明細胞病変に擬態することがあります。Perna61  は、黄色腫、黄色板腫、黄色肉芽腫など明細胞類似病変でCD10を評価しました。CD10はそれらの病変のほとんどを染色しましたが、RCCでは細胞質パターンだったのに対し、主に膜パターンでした。また、CD10の発現は気球細胞母斑および明細胞汗腺腫のそれぞれ25%および33%で認められましたが、明細胞では10%未満に限定されていました。転移性RCCと他の皮膚明細胞病変間の反応性の重複は、腎細胞がんマーカー(RCC-Ma)では見られません。Pernaら62 により、皮膚RCC転移の62.5%でRCC-Maの発現が示され、黄色腫、黄色肉芽腫、気球細胞母斑、明細胞汗腺腫、および皮脂腺腫瘍などの明細胞類似病変では反応性がないことが判明しました。また、PAX-8はRCC-Maと比べて感度の高い腎腫瘍マーカーです。さらに、PAX-8はメルケル細胞がんなど甲状腺、婦人科、および神経内分泌腫瘍を染色します。63,64

メラニン形成細胞腫瘍

メラニン形成細胞腫瘍の発生母地は必ずしも明らかではない場合があります。形態学的情報のほか、IHCはメラニン形成細胞病変と非メラニン形成細胞病変を識別するのに有用となります。S-100による染色は、最初の最も長く使用されているメラニン形成細胞病変マーカーの1つでした。大半の黒色腫はS-100+ですが、そのマーカーは特異性に乏しく、神経組織、ランゲルハンス細胞、Rosai-Dorfman(ロザイ・ドルフマン)病、およびその他の腫瘍を染色します。したがって、S100þ腫瘍がメラニン形成細胞性であることを確認するために他の抗体が必要になる場合があります。MART-1(T細胞により認識されるメラノーマ抗原)とMelan A抗体はどちらも同じ遺伝子産物を認識し、正常なメラニン形成細胞、母斑、黒色腫により発現されますが、DMによる発現頻度は低くなります。66 プレメラノソームマーカーである抗gp100としても知られるHMB-45は、青色母斑のびまん性皮膚染色を除き、メラニン形成細胞母斑の表皮内形成部位および表在性真皮形成部位を標識することが示されています。67 MART-1と比較して、HMB-45は、原発性黒色腫および転移性黒色腫のいずれにおいても弱くかつ限局性の染色を示すことが判明しています。したがって、HMB-45は比較的特異的であり、まれにみられる他の腫瘍(血管周囲類上皮細胞腫瘍[PEComas]など)のみ染色しますが、黒色腫に対してあまり感度は高くありません。68,69  MiTFはメラニン形成細胞、マスト細胞、網膜色素上皮細胞、および破骨細胞の正常な胚発生に関与しています。70 メラニン形成細胞は核MiTFを発現しています。大半の黒色腫はMiTF反応性を維持していますが、線維形成性および紡錘細胞黒色腫の大部分は染色されません。70,71 MiTFによる陽性は、従来の転移性黒色腫の88%(266例中235例)で報告されています。71 しかし、MiTFは特異的ではなく、神経線維腫、皮膚線維腫、AFX、平滑筋肉腫、神経鞘腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、孤立性線維性腫瘍、腱鞘巨細胞腫、皮膚瘢痕、および顆粒細胞腫でも染色が報告されています。68,72

神経堤細胞で発現する核転写因子であるSOX-10は、シュワン細胞とメラニン形成細胞の識別に重要です。核染色は、正常なメラニン形成細胞、シュワン細胞、エクリン分泌コイル細胞、筋上皮細胞、および主にマスト細胞の細胞質染色で認められます。73,74  発現はすべてのタイプの母斑(青色、neurotized、異形成、スピッツ、莢膜)および黒色腫(類上皮、紡錘細胞型、線維形成性、転移性)で示されています。75,76  また、これらの特異性は高く、その他のいくつかの腫瘍、すなわち顆粒細胞腫、神経鞘腫、神経線維腫、筋上皮腫、明細胞肉腫、およびいくつかの乳管がんなどでのみ発現しています。富細胞性神経莢腫、ランゲルハンス細胞組織球症、神経周膜腫、MCC、紡錘細胞SCC、AFX、および平滑筋肉腫では明らかに認められません。72-75,77,78 SOX-10は、日光により損傷した皮膚上でのメラニン形成細胞(メラノサイト)増殖下、DM、およびセンチネルリンパ節生検の評価時に特に有用です。

これまでNKI-C3、TRP-1、TRP-2(チロシナーゼに対する抗体)、SM5-1、PNL2、KBA.62など、他のいくつかのメラノサイトマーカーが研究されてきました。79-84  既知の血液リンパ系マーカーである多発性骨髄腫1(MUM1)は、DMを除き原発性黒色腫の90%以上、転移性黒色腫の80%において、母斑で陽性の免疫染色を示します。85,86 現時点では、これらのうちで過去に検討されたマーカーを上回る大きな利点を示したものはありません。

一部の黒色腫は異常な免疫組織染色的発現を示し、デスミン、SMA、CD68、CEA、およびEMAを発現する可能性があります。87 Korabiowskaら88 により、悪性黒色腫の6%でサイトケラチンが発現し、染色は限局的で、細胞の3%以上のみ染色されることが判明しました。前述のメラノサイトマーカーを含むパネルの使用により、誤診を防ぎます。

PEComasには、平滑筋およびメラニン形成細胞の免疫表現型の特徴があります。多くは後腹膜または内臓で発生しますが、一部は皮膚で発生します。これらの病変は、ルーチン検査の切片および免疫組織染色検査でメラニン形成細胞腫瘍に類似することがあります。HMB-45は最も感度の高いマーカーですが、多くの症例でMelan AおよびMiTFも発現しています。PEComasは、S-100発現が認められない点でメラニン形成細胞病変と異なります。89

色素沈着したメラニン形成細胞は色素沈着した角化細胞およびメラノファージと混同される可能性があるため、色素沈着の高いメラニン形成細胞腫瘍をルーチンのヘマトキシリン-エオジン(H&E)染色スライドで評価することは困難です。色原体として免疫染色でジアミノベンジジンを用いると、発色が褐色であるため、メラニンと識別することは困難です。代替法には赤色の色原体の使用またはメラニン漂白剤の使用などがありますが、漂白により、抗原性の低下、メラニンの不完全な除去、細胞学的詳細の喪失がもたらされる可能性があります。

接合部メラニン形成細胞増殖

特に日光により損傷した皮膚では、H&E染色切片で表皮内のメラニン形成細胞を確実に特定することが困難な場合があります。精査しても色素沈着した角化細胞をメラニン形成細胞と明確に識別できない、またはメラニン形成細胞の密集をはっきりと確認できない可能性があります。その結果、多くの病理医は、in situで黒色腫を類似した細胞と識別するのに、IHCを採用しています。また、S-100は表皮内ランゲルハンス細胞を強調するため、推奨されていません。MART-1/Melan Aは従来この環境下で評価されてきましたが、いくつかの研究90-92 では、隣接する角化細胞を取り囲む細胞質樹状突起の標識により、これらのマーカーがメラニン形成細胞と認識される数を人為的に増加させる可能性があることが示されています。利用可能な核メラノサイトマーカーは、感度が高く、特異的であり、細胞質樹状突起による問題を回避します。91SOX-10は、S-100と同等またはそれ以上の感度を有する核マーカーであり、表皮のランゲルハンス細胞など、妨げとなる他の細胞を染色しません。91  MiTFの核発現についてはSOX-10と同等の利点がありますが、原因となるわずかなDMの特定についてはかなり感度が低いです。核メラノサイトマーカーを初めて使用する際、注意が必要です。染色パターンの変化に適合するまで細胞質マーカーと並行して実行する必要があります。コンフルエンスは、細胞質マーカーで見られるように、核マーカーは並置されたメラニン形成細胞の細胞質中では反応性を示さないため、最初はそれほど明白ではないかもしれません。

Pagetoid(パジェトイド)がん

Pagetoid(パジェトイド)分布を有する表皮内病変は、診断が困難な場合があります。報告によれば、CK7陽性は、乳房Paget(パジェット)病および乳房外Paget(パジェット)病(EMPD)をPagetoid Bowen(パジェトイド・ボーエン)病および上皮内黒色腫と識別します。しかし、このマーカーの感度は100%ではなく、CK7+Pagetoid Bowen(パジェトイド・ボーエン)病の症例が時折報告されています。93,94 同様に、CAM5.2の発現は上皮内SCCよりPaget(パジェット)病またはEMPDで見られますが、反応性はどちらについても報告されています。94,95 。SellheyerとKrahl96は、Pagetoid(パジェトイド)皮膚腫瘍の評価に用いるパネルにBer-EP4を追加することを提案しました。彼らの研究30 では、Ber-EP4はEMPDの全症例を標識しましたが、Bowen(ボーエン)病および上皮内黒色腫を標識することはできませんでした。他の著者ら97 は、EMPDで反応性が認められないのとは対照的に、pagetoid(パジェトイド) SCCin situで強い核p63を特定しています。  いくつかの研究では、IHCによる原発性EMPDと二次性EMPDとの識別が試みられましたが、原発性EMPDでCK20および前立腺特異抗原(PSA)の発現が時折認められるなど、免疫プロファイルは重複する傾向があります。98これまでのところ、CDX-2反応性は、肛門直腸腺がんに続発するEMPDでのみ報告されています。

硬化性上皮性腫瘍

硬化性上皮性腫瘍の識別は、学術的関心だけでなく、臨床管理にとっても最重要であり、細かな表面生検での診断がしばしば要求されます。CD23、CD5、CD10、CD34、CK20、CK15、ストロメライシン-3、BCL2、AR、PHLDA1、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Ber-EP4、p63などを含む、線維硬化性毛包上皮腫(DTE)、浸潤性またはモルフェア型BCC、および微小嚢胞性付属器がんを識別するのに有用なさまざまな免疫組織染色的マーカーが研究されています。99-103入手データの多くは1つのグループにより報告された数例に基づいており、さらなる検証が必要です。他の研究において同一のマーカーで矛盾する結果が出ています。いくつかについてはさらに詳しく言及すべきですが、組織病理学的基準および臨床データは今なお現在の絶対的基準です。

ARおよびCK20のパネルは、DTEとモルフェア型BCCの識別に有用であることが立証されています。100, 104。CK20+メルケル細胞はコロニー形成DTEとして確認されていますが、BCCおよび微小嚢胞性付属器がんでは確認されていません。105 しかし、DTEで確認されたメルケル細胞は少数である可能性があり連続切片を要するため、既存の軟毛性毛包におけるメルケル細胞の誤解釈を避けるために注意が必要です。核のAR発現は、大半のモルフェア型BCCで限局的に認められ、大半のDTEでは認められません。100, 104また、ARの反応性は古典型すなわち従来型の毛包上皮腫で認められています。106

いくつかの研究では、従来型の毛包上皮腫または毛芽腫を非侵襲型のBCCと識別する免疫マーカーの特定が試みられました。この環境下でのCD34およびBCL2使用を裏付けるデータがあるものの、硬化性上皮性腫瘍でこれらのマーカーを評価する研究はごく少数です。従来型の毛包上皮腫と同様、Kirchmannら107により、DTEの間質がCD34陽性であることが判明し、モルフェア型BCCおよび微小嚢胞性付属器がんのネガティブ染色間質と識別されました。しかし、Costache ら104 はDTE19例のいずれにおいても間質染色を確認できませんでした。BCL2は、従来型の毛包上皮腫では腫瘍島の周辺でのみ発現を示す傾向がありますが、BCCでは腫瘍島全体に存在し、DTEおよびモルフェア型BCCの小島では、Costacheら104の研究で認められるとおり、その識別は不明瞭です。

最近の研究では、p75NTR(CD271)およびPHLDA1の有用性が評価されています。  モルフェア型BCCは、腫瘍細胞でp75の発現が認められない、または限局性もしくは弱い発現のみを示す傾向がありますが、DTEでは強度にびまん性の陽性が示されます。108, 109p75は通常、毛包の外根鞘で発現します。したがって、DTEの反応性は毛包のその部分に類似する毛包過誤腫としての分類をサポートします。微小嚢胞性付属器がんは半分近くが強い陽性を示すため、p75では確実に識別できません。108PHLDA1は、毛包の毛隆起(バルジ)部分にある毛包幹細胞マーカーです。そのマーカーの反応性は、浸潤性またはモルフェア型BCCでは発現しない、または発現がごくわずかであるのに対し、腫瘍細胞では50%以上に認められるため、DTEを明らかにします。102, 103, 110潰瘍に近接するメラニン形成細胞および腫瘍細胞でのコロニー形成により陽性である可能性があり、解釈には注意が必要です。102 CD34で前述したように、いくつかの研究ではこれらの腫瘍の識別を試みる際、腫瘍間質に集中してきました。

黒色腫の予後

H&E染色切片から得られる黒色腫の予後指標には、潰瘍形成と腫瘍の深達度が含まれますが、IHCを使用した予後判定に関する研究が増えています。リンパ管浸潤の特定はD2-40、リンパ管内皮細胞マーカー、またはCD34の使用により増加し、認識は無病生存率および全生存率の低下と関連しています。111-113  黒色腫における真皮の有糸分裂の存在は、疾患管理および予後の考慮において重要な変数です。厚さ1mm未満の黒色腫で1つの有糸分裂像を特定することによりステージが変わるため、2010 American Joint Committee on Cancer(AJCC)ガイドラインでは、黒色腫のステージ分類において有糸分裂の特定がますます重要になっています。114 しかし、有糸分裂の探索には時間がかかる可能性があり、アポトーシス、核濃縮、および過色素性核を有糸分裂像と識別することは困難で判断が主観的となる可能性があります。ヒストンH3は、細胞周期の後期G2期およびM期の有糸分裂クロマチン凝縮中にリン酸化されます。H&E計測で400倍の倍率が使用されるのに対し、リン酸化ヒストンH3(PHH3)の免疫組織染色は、200倍の倍率でも有糸分裂の計測を可能にします。PHH3は、MIB-1とは異なり、細胞周期のM期に特異的であり、アポトーシス細胞では発現しません。PHH3は、有糸分裂の「ホットスポット」を特定しやすくし、有糸分裂数の決定に必要な時間を短縮し、標準的なH&E染色切片での計測数以上に再現性を改善します。115 有糸分裂期全体の大部分を占める前期は標準切片では事実上検出できませんが、PHH3では十分に強調されるため、PHH3での計測数がH&E染色切片での計測数よりも多いことは驚くことではありません。また、PHH3計測数は非メラニン細胞の有糸分裂像の誤解釈により誤って増加する可能性があります。  PHH3により計測された有糸分裂数は、H&E染色切片により計測された有糸分裂数よりも強力な予後指標であることが証明されています。116 PHH3の使用は有糸分裂の正確な計測を改善し、生存率との関連を示すことが知られていますが、117 現在の黒色腫のステージ分類基準は、H&E染色スライドにより計測された有糸分裂の割合に基づいています。(ステージ)pT1bのPHH3ベースのカットオフレベルを決定する必要があると考えられます。

SOX-10は、センチネルリンパ節の転移性黒色腫の高感度マーカーですが、S-100とは異なり、濾胞樹状細胞または洞組織球では発現しないため、小さな微小転移巣および分離細胞の識別が向上します。HMB-45は、転移性黒色腫(HMB-45+の場合)とリンパ節母斑(HMB-45-)を識別できます。HMB-45とは異なり、SOX-10はリンパ節母斑と転移を識別せず、見分けるためにはリンパ節の場所、細胞診、および原発巣との比較に注意する必要があります。

悪性の小型青色細胞腫瘍

メルケル細胞がん(MCC)の小型青色細胞の出現は、ユーイング肉腫/原始神経外胚葉性腫瘍(EWS/PNET)、転移性小細胞肺がん、神経芽細胞腫、リンパ腫、および黒色腫などの鑑別診断に導きます。MCCは通常S-100を発現しませんが、クロモグラニン、神経特異エノラーゼ(NSE)、シナプトフィジンなどの神経内分泌マーカーを発現し、ニューロフィラメントタンパク質およびCK20による核傍ドット染色を示すため、小型細胞黒色腫は免疫組織染色的に識別することができます。  転移性小細胞肺がんは通常、CK20およびニューロフィラメントタンパク質に対して陰性ですが、古典的にはCK7および甲状腺転写因子1(TTF-1)に対し陽性であり、MCCでは通常見られない所見です。118, 119  CK20は大半のMCC(87%)に存在しますが、CK7が特定されることはまれです。119  MCCでは古典的なCK20+/CK7-パターンであるにもかかわらず、CK20-/CK7+MCCについて記述されています。119, 120 IHCが必要な場合、センチネルリンパ節の評価において原発腫瘍の染色パターンを認識しておくことが重要です。  MCCにCD45/LCAが認められないため、通常リンパ腫を除外するには十分ですが、リンパ腫の評価に使用される一部のマーカーがMCCで検出可能であるため、ALK1(使用するクローン次第)を未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、BCL2をB細胞リンパ腫、TdTおよびPAX-5をBリンパ芽球性リンパ腫、またCD56をナチュラルキラーT細胞リンパ腫とみなすなどの誤診につながります。119,121-124

MCCと同様、EWS/PNETもまたNSE、クロモグラニン、およびシナプトフィジンを発現する可能性があります。CD99はEWS/PNETに使用されるマーカーですが、特異的ではなく、リンパ芽球性リンパ腫、一部の横紋筋肉腫、小細胞がん、カルチノイド腫瘍、黒色腫、さらには少数のMCCでも認められています。125-128 また、FLI-1抗体はEWS/PNETおよび血管腫瘍の核マーカーです。  しかし、リンパ腫、MCC、および黒色腫の一部でも発現しています。127, 129-132。パンケラチン反応性は通常EWS/PNETでは認められず、MCCとは異なりCK20の発現は報告されていません。EWS/PNETとMCCを識別する最も確実な方法は、EWS/PNETで通常EWSおよびFLI-1遺伝子に関連するt(11; 22)を明らかにする細胞遺伝学的解析です。128, 133

c-kitプロトオンコジーンは膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(KIT受容体/CD117)をコードします。CD117は、急性骨髄性白血病、肥満細胞症、黒色腫、小細胞肺がん、消化管間質腫瘍など、さまざまな腫瘍で発現しています。CD117は大半のMCCで発現しています。134, 135KITの発現はMCCで認められますが、メシル酸イマチニブに対する反応が乏しく裏付けが不足しています。135-137まれに、MCCはBCCに類似していることがあり、いずれもBer-EP4、BCL2、およびNCAM/CD56をしばしば発現します。  さらに、BCCは時折クロモグラニンとシナプトフィジンを発現することができます。

線維組織球性病変

富細胞性神経莢腫

末梢神経鞘由来であると考えられていた神経鞘粘液腫は、1980年にGallagerとHelwig138により神経莢腫として再指定されました。1986年に、細胞型はRosatiら139により富細胞性神経莢腫(CNT)と指定されました。現在、神経莢腫には、粘液性、富細胞性、混合性の3つのサブタイプが認識されています。CNTの系統については議論が分かれるところであり、筋線維芽細胞、神経鞘、メラニン形成細胞、および平滑筋腫の識別について議論されています。免疫反応性マーカーは、SMA、CD68、およびCD10による病巣染色を含むさまざまな細胞型にわたっています。140, 141タンパク質遺伝子産物9.5(PGP 9.5、ユビキチンカルボキシル末端ヒドロキシラーゼ-1としても知られる)の反応性は神経莢腫の診断に有用ですが、特異性が低いという課題もあります。142 PGP 9.5は、顆粒細胞腫などの神経鞘腫、ならびに皮膚線維腫、血管腫瘍、および平滑筋腫などの他の腫瘍を含む線維芽細胞腫瘍で陽性を示します。143, 144D2-40は、前述のとおりリンパ管およびPCANで発現していますが、反応性は過去に研究された15例のCNTでも報告されています。146 富細胞性神経莢腫および線維性組織球腫は形態学的特徴を共有することがあり、いずれもD2-40の発現を示しているため、識別をさらに複雑にしています。

粘液性神経莢腫はS-100+ですが、CNTでは異なり、末梢神経鞘またはメラニン形成細胞の組織形成に強く反発しています。しかし、CNTはS100A6タンパク質(カルサイクリン)に対して陽性を示します。142, 146 このタンパク質との反応性はメラニン形成細胞および皮膚樹状細胞でも発現しているため、CNTの診断に相当するわけではありません。142また、富細胞性神経鞘腫は組織学的にメラニン形成細胞病変と混同されることがあります。この鑑別診断を検討する場合、S-100染色陰性を示すS100A6反応性は、メラニン形成細胞病変を事実上排除します。コロニーを形成する抗原提示細胞のS-100発現が認められる場合があるため、病変細胞の反応性と混同し誤診を引き起こしてはなりません。  典型的なメラノサイトマーカーであるS-100、HMB-45、およびMelan AはCNTでは認められませんが、S100A6などの特異性の低い他のメラノサイトマーカーが特定されています。141, 142 多くのCNTはNKI-C3(CD63)を発現していますが、このマーカーは特異性が低く、母斑、黒色腫、顆粒細胞腫、および一部の線維組織球性病変で確認されています。142, 147 近年、抗メラノーマモノクローナル抗体であるKBA.62の発現がCNT18例中18例(100%)で報告されています。148  また、MiTFは大半のCNTを強調表示させるメラノサイトマーカーです。

皮膚線維腫および隆起性皮膚線維肉腫

大半の皮膚線維腫(DF)は、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)と簡単に識別することができます。しかし、形態学的特徴のみでは必ずしも深部または細胞性のDFとDFSPを確実に識別することはできません。一般的に、CD34および第XIIIa因子は識別に使用されてきました。通常、DFSPはCD34+および第XIIIa-因子であり、DFはCD34-および第XIIIa+因子です。しかし、これは絶対的ではありません。149-151一部のDFは、特に細胞性および深部DFの周辺でCD34による限局性染色を示し、時折DFSPはCD34に対し陰性を示します。152 CD34は瘢痕から消失するものの瘢痕周囲組織で増殖するため、CD34によるDFSPマージンの解釈には注意が必要です。153 CD34陽性はDFSPに限定されません。また、これは内皮細胞マーカーであり、孤立性線維性腫瘍、紡錘細胞性脂肪腫、表在性肢端線維粘液腫、硬化性線維腫、カポジ肉腫、神経線維腫、毛根鞘腫、硬化性粘液水腫、および腎性全身性線維症などを染色します。154-156 。通常、第XIIIa因子は微弱であり、DF周辺、または紡錘細胞優位の細胞性DFでびまん性に確認されるのみです。150  多くの代替マーカーが検討されていますが、ほとんどの場合、少数の症例による単独研究です。これらのマーカーには、HMGA1および2、CD163、ApoD、テネイシン、S100A6、MMP-2および-11、IGFBP7、カテプシンK、ならびにD2-40が含まれます。

神経外胚葉および間葉系幹細胞マーカーであるネスチンは、4つの異なる研究157-160 によりDFSPおよびDF約200例の比較的大きな対象集団で評価され、同様の結果が示されました。DFSPではネスチンの強力な発現が認められ、DFでは発現が認められないか、限局性発現がまれに認められるのみでした。DFSPの線維肉腫領域では存在しない、または減少しているCD34とは異なり、ネスチンでは変動がありませんでした。160 また、マトリックスメタロプロテイナーゼファミリーのメンバーであるストロメライシン3(MMP-11)の免疫組織染色は少なくとも5つの別々の研究151, 161-164  で検討されており、同様の結果を示しました。ストロメライシン3は創傷治癒および腫瘍浸潤時の組織リモデリングに関与しており、大半のDFで紡錘細胞のびまん性細胞質染色が認められますが、DFSPで認められるのはまれです。

血管腫瘍

フォン・ヴィレブランド因子(第VIII因子関連抗原)、CD34、CD31(血小板内皮細胞接着分子‐1)、FLI-1、ERGなどいくつかの内皮細胞マーカーが利用可能です。第VIII因子関連抗原は内皮細胞に特異的ですが、低感度です。血清中を循環するため、壊死および出血した領域で認められます。CD34は高い感度を示しますが、DFSPおよび類上皮肉腫などいくつかの非血管腫瘍でも発現しています。CD34はカポジ肉腫に対して感度の高いマーカーとみなされてきましたが、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス8潜伏感染関連核抗原(HHV-8)が、その意味でCD34の使用に取って代わりました。1, 165 CD31は血管内皮および血管腫瘍に対し最も高感度のマーカーとみなされてきました。内皮細胞で発現しますが、特異的ではなく、がん腫、リンパ腫、AFX、類上皮肉腫、EWS/PNET、マクロファージ、血小板、および形質細胞の一部で報告されています。21, 166 。ごく最近では、FLI-1およびERGが内皮分化の核マーカーとして報告されました。Folpeら167により、良性および悪性の血管腫瘍の94%でFLI-1の発現が判明しましたが、FLI-1はEWS/PNETのマーカーでもあり、症例の約90%で発現が認められ、一部の黒色腫、平滑筋肉腫、SCC、およびAFXで発現を示しています。91 これまでのところ、ERGは血管病変の高感度で特異的なマーカーであり、前立腺がん、EWS/PNET、類上皮肉腫および骨髄性肉腫の一部でのみ発現を示しています。168-170 Raoら166  により、組織マイクロアレイで34件の血管肉腫が評価され、ERGおよびFLI-1が最も感度の高い免疫マーカーであることが判明しました。  血管肉腫はしばしば1つ以上の内皮細胞マーカーの発現低下を示し、特に類上皮血管肉腫では、同時にケラチンの発現を示すことがあり、診断にパネルを使用する必要があることを示唆しています。

また、血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞を識別するマーカーについても調査されています。リンパ管内皮表現型の調節および維持に重要な転写因子であるProx1は、リンパ管腫、カポジ肉腫、房状血管腫、およびカポジ肉腫様血管内皮腫で発現します。171  モノクローナル抗体D2-40はリンパ管内皮で高度に発現する糖タンパク質であるポドプラニンに結合します。D2-40は、正常組織ならびにカポジ肉腫、ダブスカ腫瘍、リンパ管腫、鋲釘状血管腫(標的様ヘモジデリン性血管腫)などの血管病変の一部、また血管肉腫、特に類上皮内皮細胞を有する血管肉腫の一部における、リンパ管内皮の感度の高いマーカーとして確認されています。一般的に、古典的な血管腫はD2-40を発現しません。172, 173 D2-40は、皮脂腺腫瘍、類上皮肉腫、AFX、SCC、CNT、DFおよびPCANなどさまざまな病変で可変的に発現します。  血管肉腫におけるProx1およびD2-40などのリンパ系マーカーの発現は、それが混合内皮表現型を示す可能性があることを示唆しています。22, 166, 171  。乳児血管腫は出生後に出現し、生後1年で急速に大きくなり、生後10年以内に自然消退します。この疾患の大きな組織病理学的特徴は成長に伴い自然消退することで、血管奇形とそれらを識別することは困難な場合があります。赤血球型グルコーストランスポータータンパク質(GLUT1)の内皮免疫反応性は、通常、脳および胎盤のような血液組織バリア機能を有する内皮に限定されており、乳児血管腫のすべての段階で確認されますが、血管奇形、化膿性肉芽腫、および肉芽組織では反応性が認められません。174-176  発現を解釈する際に赤血球の正常な反応性を差し引いて考える必要があります。  また、GLUT1の発現は正常な神経周囲細胞および神経周膜腫でも示されています。177これらのS-100-、良性末梢神経鞘腫瘍もまたEMA陽性ですが、細胞質突起が非常に薄く広く分岐しているため、限局性で弱いパターンでしばしば認められます。密着結合の構成要素であるクローディン1およびGLUT1は、EMAと比べて神経周膜腫でより強く、よりびまん性で染色されます。178 乳児血管腫および血管奇形には異なる臨床経過があり、その違いは方針を立てる上で重要です。

ウィルムス腫瘍1(WT1)細胞質内皮発現は、乳児血管腫、非退縮型先天性血管腫、急速退縮型先天性血管腫、房状血管腫、化膿性肉芽腫、微小静脈血管腫、および老人性血管腫などの血管腫瘍で報告されていますが、リンパ管奇形および静脈血管奇形では報告はありません。179-181  しかし、WT1陽性が研究対象とされた5例のステージ2の動静脈奇形で報告され、180 おそらくはそのステージでの活発な増殖および臨床的拡張が原因です。現在のデータは限定的ですが、WT1の結果は疣状血管腫および鋲釘血管腫で矛盾しており、これらの病変を腫瘍または奇形として適切に分類することにさらに疑問を呈しています。181-183さらに非退縮型先天性血管腫および急速退縮型先天性血管腫と乳児血管腫との識別などが重要となります。これらの病変はその病名が示すように異なる挙動を示しますが、乳児血管腫と重複する組織学的特徴を有しています。しかし、急速退縮型先天性血管腫および非退縮型先天性血管腫のいずれもGLUT1を発現しません。176, 184

造血器腫瘍および組織球系腫瘍

皮膚B細胞リンパ腫

CD20はB細胞リンパ腫の98%で発現するB細胞特異的マーカーですが、抗CD20抗体(リツキシマブ)を投与したリンパ腫では消失する可能性があります。CD79aは前駆B細胞の段階で発現し、Bリンパ球の分化においてCD20よりも遅く消失します。このため、形質細胞はCD79aに対して陽性ですがCD20に対しては陽性ではありません。したがって、CD79aは大半のB細胞病変を染色し、リツキシマブ投与のB細胞リンパ腫でも認められます。PAX-5は、初期のB細胞発生で発現する核マーカーであるため、形質細胞では陰性ですが、リツキシマブ療法後に再発性B細胞リンパ腫を染色することができます。185, 186  CD38およびCD138(シンデカン-1)は形質細胞で発現します。

皮膚リンパ球腫を除き、皮膚への著しいB細胞浸潤が反応性を示すことはまれであり、B細胞リンパ腫の可能性を強く示唆しています。構造的に、浸潤は結節性またはびまん性である場合があります。びまん型には濾胞中心細胞リンパ腫、下肢型および非特異型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が含まれます。結節型は皮膚リンパ球腫、辺縁帯リンパ腫、および濾胞中心細胞リンパ腫のごく一部に見られます。  正常な胚中心は、BCL6+、BCL2-、およびCD10+であり、CD21+および/またはCD23+濾胞樹状細胞ネットワークおよび高い増殖指数を有しています。良性のリンパ濾胞は、皮膚リンパ球腫および辺縁帯リンパ腫に認められます。辺縁帯リンパ腫の濾胞間成分は腫瘍性であり、免疫組織染色的にはBCL2+であるのに対し、BCL6およびCD10は陰性です。形質細胞様の分化がある場合、軽鎖の偏りを免疫組織染色的に評価することができます。正常なK:λ比は2:1ですが、5:1または3:1を超えるλ:K比はクローン性を裏付けます。しかし、この比率の再現性は低いです。187

皮膚濾胞中心細胞リンパ腫は胚中心細胞由来であるためBCL6+およびBCL2-です。BCL2の発現が認められる場合は、リンパから皮膚への病気の広がりを示しています。185T細胞はBCL2+であり、濾胞中心細胞リンパ腫のリンパ球様細胞の一部を構成します。BCL2の発現は腫瘍細胞のみで解釈すべきであり、コロニー形成T細胞と混同すべきではありません。また、下肢型DLBCLもCD20+およびBCL6+を示しますが、濾胞中心細胞リンパ腫とは異なり、BCL2、MUM1、およびFOXP1を発現します。188 また、MUM1は黒色腫および未分化大細胞リンパ腫(ALCL)でも発現します。

皮膚T細胞リンパ腫

皮膚リンパ増殖性疾患は、皮膚病理学で最も困難な問題の1つかもしれません。菌状息肉症型皮膚T細胞リンパ腫(MF)は、反応性T細胞浸潤と識別する必要があります。クローン性に対するT細胞受容体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析は、この状況下で役に立ちます。しかし、初期MFの多くの症例はPCRで多クローン性(ポリクローナル)であり、良性皮膚疾患のいくつかの症例で単クローン性(モノクローナル)が確認されています。189 良性炎症性浸潤のように、MFの大半の症例はCD4+Tヘルパー細胞表現型を有していますが、対照的に、表皮成分における他のT細胞マーカーの発現欠失を示す可能性があります。最も頻繁にダウンレギュレーションされる抗原はCD7であり、僅差でCD5が続きます。187 しかし、そのダウンレギュレーションは絶対的なものではなく、一部の良性炎症性浸潤、特に急性のものではCD7の消失を示しています。190 したがって、CD7の解釈は、臨床的および組織学的特徴を踏まえて行う必要があります。汎T細胞マーカーCD3、CD5、またはCD43の相対的な欠如、またはCD4およびCD8両者いずれにも見られる発現もしくは消失は、良性の病態と比べてMFで認められることが多いです。いくつかの研究は、表皮のCD4:CD8比が2より大きいのは炎症過程というよりMFであることを裏付けていると示唆しています。191 しかし、かなり重複部分があり、炎症状態で最大6の比率を示しています。192 Ortonneら193 により、初期MFの診断改善が試みられ、25%未満の表皮CD8:CD3比はMFを明示するものではないが示唆的であることが判明しました。CD4ではなくCD3を使用することにより、CD4+ランゲルハンス細胞が誤って解釈される懸念がなくなります。実際には、これらの比率の適用による評価では、正確な診断を行うには再現性が良好ではありません。対照的に、CD8+MFが一部存在し、これは小児および低色素症例で最も多く認められます。187 国際皮膚リンパ腫学会(ISCL)は、臨床的、組織病理学的、生体分子的、および免疫病理学的基準を含むスコアリングシステムに基づいた、早期MFの診断アルゴリズムを提案しました。このスコアに含まれる免疫組織学的特徴は、T細胞50%未満でみられるCD2、CD3、またはCD5陽性、T細胞10%未満でみられるCD7陽性、およびCD2、CD3、CD5、またはCD7の発現における表皮/真皮の不一致です。194

皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫は、定義上、αβ受容体クラスのCD8+細胞傷害性T細胞腫瘍であるため、β-F1+であり、皮膚γδリンパ腫と識別されます。皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫は、通常、TIA-1、グランザイムB、およびパーフォリンに対して陽性です。T細胞による脂肪細胞のリミングは、特にKi-67+の場合、診断に有用な特徴です。187

感染性病原体

現在IHCは、患者の組織サンプルにおいて感染症の迅速な形態学的診断に使用されており、患者のケアにおける臨床決定を促進しています。感染症の診断では、IHCは次の微生物の特定に役立つことが示されています。(1)ルーチンまたは特殊な染色法による検出が困難である、(2)染色されにくい、(3)存在数が少ない、または(4)培養不能である。多くの感染症の免疫組織染色的診断を支援するためにいくつかの抗体が開発されてきましたが、複数の理由で皮膚病理学に有用とされているのはこれらの抗体のごく一部にすぎません。195-197  皮膚感染症診断におけるIHCの使用は、ルーチンの顕微鏡検査のみでは確実な診断が困難な特定のウイルスおよび細菌感染症の診断を確認するために適用されています。

IHCおよびウイルス病原体

IHCは、特に非定型の皮膚症状の症例において単純ヘルペスウイルス(HSV)の検出および特定に役立ちます。例えば、IHCにより陰部潰瘍を有する寝たきりの高齢患者5人のHSV感染(I型3人およびII型2人)を特定することができましたが、組織学的検査では5人中2人の患者のみHSV感染が示唆されました。197, 198 ある研究では、HSVの診断においてIHCの感度および特異度がISHと同等であると示されました。199  使用されるポリクローナル抗体は高感度であるにもかかわらず、抗原的に類似したHSV IとHSV IIを識別することができません。7同様に、IHCは水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染(水痘帯状疱疹および帯状疱疹)の診断において、塗抹標本とホルマリン固定パラフィン包埋皮膚切片の両方でVZVORF63コード化タンパク質(IE63)およびVZV後期タンパク質gEを検出することにより、標準的な微視的評価と比べて高い特異度および感度を有することも示されています。200 このことは、免疫不全患者のVZV感染の早期診断につながり、その結果早期治療を可能にするという点で特に重要です。

エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、さまざまな良性(炎症性偽腫瘍)および悪性(非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、上咽頭がん、胃がん)病変に存在することに加え、口腔毛状白板症および伝染性単核球症を引き起こします。201  IHCは、EBV発現タンパク質の同定を介してEBV感染の診断に長い間使用されており、発現プロファイルに基づき潜伏感染を複製感染と識別することもできます。  実際、LMP1免疫染色(細胞質内局在および膜局在)は、伝染性単核球症患者のリンパ節中のEBVの同定において、EBV-encoded RNA ISH(EBER-ISH)法とほぼ同等の有効性があることが示されています。BZLF1、EBNA1、EBNA2、およびLMP2Aなど他のEBVタンパク質の検出は、IHCにより実現できます。201

サイトメガロウイルス(CMV)感染は、免疫不全患者(HIV感染患者など)で特に多く認められ、皮膚症状は、潰瘍、小胞、丘疹、紫斑、疣贅状病変、結節性痒疹様病変、および指梗塞などさまざまです。 光学顕微鏡検査は、主に内皮細胞内、場合によっては角化細胞、汗腺上皮細胞、マクロファージ、線維芽細胞内のCMV封入体の検出において高い感度を有していますが、激しい炎症がある場合または1~2つの細胞のみが感染している場合など一部の症例では、診断を確定するために免疫組織染色的分析が必要になる場合があります。202  IHCは迅速な診断を可能にし、その感度は光学顕微鏡検査よりも優れており、培養法およびISH法と同等です。

ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)は、カポジ肉腫(KS)の主な原因です。紡錘細胞および薄壁の原始血管通路を裏打ちする細胞におけるHHV-8潜伏核抗原-1の陽性核免疫染色を通じて、パラフィン包埋切片におけるHHV-8の免疫組織染色的検出はKSの診断に感度および特異度が高いことが示されており、特に血管肉腫、カポジ肉腫様血管内皮腫、紡錘細胞血管腫などの類似病変との識別が可能になります。203, 204  核内の免疫局在性は陽性とみなされました。

IHCおよび細菌性病原体

ルーチンの評価では、梅毒が疑われる診断を確認するためのシュタイナーまたはワルチン・スターリー銀染色の使用は、通常では大きくバックグラウンド染色により妨げられるため、低感度です(33~71%)。204-207 いくつかの研究では、免疫組織染色は銀染色よりも優れた感度で梅毒トレポネーマ(T pallidum)を検出することが示されています。205-207  モノクローナル抗体により、Hoangら205 は、銀染色では41%の検出だったのに対し、第2期梅毒患者から採取した生検標本17件中12件(71%)で陽性染色を示しました。Buffetら206による梅毒トレポネーマポリクローナル抗体を使用した別の研究では、第2期梅毒患者から採取した皮膚生検標本12件中11件(91%)でスピロヘータが検出されました。最近では、Mart´ın-Ezquerraら207 が第1期梅毒患者8人および第2期梅毒患者26人の生検標本34件における銀染色および免疫組織染色による梅毒トレポネーマポリクローナル抗体の発現の感度を研究しました。ワルチン・スターリー染色により生検標本34件中17件(50%)(第1期梅毒8件中4件および第2期梅毒26件中13件)でスピロヘータが確認されたのに対し、IHCではスピロヘータが34件中29件(85%)(第1期梅毒8件中8件および第2期梅毒26件中21件)で確認されたため、免疫組織染色的分析はワルチン・スターリー染色よりも高い感度を示しました。この研究では、著者らはIHCを用いて第1期梅毒および第2期梅毒における梅毒トレポネーマのさまざまな分布パターンを特定することもできました。第1期梅毒は上皮向性(下部粘膜/表皮の細胞内分布に豊富なスピロヘータ)および血管向性(血管壁を取り巻くトレポネーマ)の両方のパターンを示しましたが、第2期梅毒は上皮向性パターンのみを示しました。著者らは、梅毒トレポネーマの免疫組織染色的分布パターンにより、第1期梅毒および第2期梅毒の診断的鑑別ができると結論づけました。207

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