Duolink® PLAトラブルシューティングガイド
実験のTips & Tricks
タンパク質検出用のDuolink® PLAテクノロジーでは、規定のステップを進めていくだけのシンプルで簡単なプロトコルが用意されています。このセクションではDuolink® PLAを用いた実験をスムーズに進めるために必要な注意事項について説明します。
事前に考えるべき事項
- 解析するサンプルにおいて、一次抗体のパフォーマンスが最適になる条件を検討します。検討すべき条件として、サンプル処理パラメータ(固定、透過処理、抗原賦活化など)、一次抗体価、およびインキュベーション時間などがあります。
- 結果の適切な評価のため、実験手技に対するコントロールを設定し、可能であればコントロールサンプルも設定します。
- Duolink® PLA Controlキットは実験手技をテストし、良好な実験結果を得るために便利なツールです。キットには細胞が播種された顕微鏡スライドと抗体のペアが梱包されており、Duolink® PLA試薬を用いてタンパク質間の相互作用を観察することができます。PLAシグナルが確実に得られることを保証します。Duolink® PLAテクノロジーを用いた実験にコントロールを設定し、より信頼性を確保するために、本コントロールキットをご利用ください。
共通する実験パラメータ
- サンプルが乾燥しないようにしてください。インキュベーションでは、加湿チャンバーを使用してください。
- サンプルから余分な洗浄バッファーをできるだけ取り除いてください。洗浄バッファーが残っていると抗体がさらに希釈されたり、ライゲーション効率や増幅効率が低下する可能性があります。
- サンプルを囲む場合は疎水性ペンを使用してください。こうすれば、チャンバースライドを用いる場合、ウェル間の溶液の交差汚染を防ぐのに役立ちます。また、組織切片を使用する場合、試薬量を最小限にできます。
- 最良の結果を得るには、特に酵素を用いる手順(ライゲーション反応と増幅反応)では、すべての手順を適切な温度とインキュベーション時間で実施してください。
- 低発現のタンパク質を検出するためには、増幅時間を延長する必要があるかもしれません。このような条件でバックグラウンドが増加する場合、増幅と検出を別々に実施します。Duolink®明視野用増幅バッファー(検出オリゴを含まない)を用いて増幅し、その後Duolink®蛍光用増幅バッファー(検出オリゴを含む)を添加して30分間インキュベートします。
- 十分量のサンプル洗浄バッファーで洗浄し、サンプルが完全にバッファーに浸っていることを確認します。洗浄バッファーA、Bの使用が定められている場合は、指定どおりにしてください。洗浄は室温で行ってください。
- 使用中の酵素はクーラーラックに入れた状態にしてください。使用前に、他の試薬(例えば、ライゲーションバッファー、増幅バッファー)が完全に解凍され、ボルテックス済みであることを確認してください。
サンプルの保管・解析
- Duolink® PLAプローブはすべて4℃で保管しなければなりません。Duolink® Probemakerを用いて作成したプローブも同様です。凍結しないこと。凍結すると結果の質が著しく低下します。
- 蛍光を用いた解析では、DAPI含有Duolink®封入剤を使って封入した後、4℃の暗所で最長4日間保存できます。封入すれば、−20℃で最長6か月間保存できます。
- 過度に露出露光時間を長くしないでください。蛍光シグナルが融合し、正確な定量分析が難しくなる場合があります。なお、シグナルの融合はフローサイトメトリー解析に影響しません。
- 実験サンプルとコントロールサンプルとで検出パラメータを変えずに画像を取得してください。
よくある質問
このセクションではよくある質問に対する回答を紹介します。ただし、一部は専有情報のため、開示できません。非開示情報には、試薬およびバッファーの組成、オリゴヌクレオチドの長さと配列、またはDuolink® PLAプローブおよびDuolink®Probemakerキットの結合化学に関する質問が含まれます。
一般的な質問
- 近接ライゲーションが可能な最短距離と最長距離は?
Duolink® PLA製品はすべて、近接性を検出できるように設計されています。2次抗体法を使用する場合、標的タンパク質(エピトープ)2個がシグナルを生成できる理論上の最大距離は40 nmです。数値は、抗体の平均直径が約10 nmであることを前提にしています。理論的には、2つの一次抗体が結合でき、立体的な障害がない限り、Duolink® PLAは互いの距離が0 nm以内のエピトープを検出できます。
- Duolink® PLA製品/試薬の有効期間は?
- 検出キットに含まれるすべての試薬は、必ず常時−20℃で保存してください。これは、リガーゼおよびポリメラーゼ酵素にとって特に重要であり、冷凍庫から取り出した場合、予冷したクーラーラックの中で保存する必要があります(クーラーラックは酵素を−20℃に保つものを使用します。酵素を氷槽に入れるだけでは不十分です)。Duolink® PLAプローブ、抗体希釈液、ブロッキング溶液、および封入剤は、必ず4℃で保管してください。PLAプローブおよびProbemakerで生成したPLAプローブは凍結しないでください。
- Duolink® PLA Probemakerは、−20℃で保管した場合に限り、お客様のラボに到着後6か月間保証します。抗体コンジュゲーション反応後の有効期間は、ほとんどの場合4℃で3~6か月です。これは抗体が特別な保存剤を必要とするか否かに大きく依存します。
- Duolink® PLAを生細胞サンプル、または固定していない組織サンプルに利用できますか?
- Duolink® PLAは固定細胞および組織に最適化されています。
- 抗体およびプローブが標的を特定するためには透過化が必要です。
- さらに、Duolink® PLA試薬(酵素、DNAオリゴ)の一部は、生体細胞の能動的メカニズムにより破壊される可能性があります。
- PLAプローブと従来の免疫蛍光法を組み合わせることはできますか?
可能です。 すべての一次抗体が異なる種に由来し、蛍光検出における蛍光色が異なっていれば、Duolink® PLAと従来の免疫蛍光法を組み合わせることが可能です。
Duolink®PLAプロトコル・解析
- Duolink®PLAプローブとは?
- Duolink® PLAプローブは、PLUSまたはMINUSのいずれかのオリゴヌクレオチドが共有結合した二次抗体です。
- 二次抗体は、家畜種のロバ(Equus asinus domesticus)に由来します。
- 抗マウス、抗ウサギ、抗ヤギポリクローナル抗体を用いて作成しています。
- 上記以外の動物種との交差反応性は極めて低いです。
- 必要な細胞/組織の最小数と最大数は?
- 原則として、Duolink® PLAの実験に必要な細胞数は最低1個です。実際に用意する細胞の最小数は、用途によって異なります。
- 最大細胞数は設定が難しいです。細胞密度が高すぎると、抗体や試薬がサンプル中央の細胞に届きにくくなる場合があります。50~70%コンフルエントが適切です。
- 組織数には最小値がありません。最大値に関しては、30 µm厚までの組織切片を用いた場合、良好な結果が得られています。5~10 µmの厚さが適切です。
- 実験が成功するかどうかは、組織切片とその前処理(固定、透過化、エピトープ賦活化など)の両方に依存します。
- 実験手順のどの時点であれば中断できますか?(プロトコルを中断する場合はいつが適切ですか?)
- Duolink® PLAプロトコルにはいくつかの中断できるステップがあります。具体的には、
- 固定後のサンプルは1x PBSに入れて4℃で数日間静置できます。
- ブロッキング抗体および一次抗体は一晩のインキュベーションが可能です。一次抗体によって、インキュベーション時間は30分~一晩と幅があります。特定の一次抗体に対する推奨インキュベーション時間がこれより短い場合でも、4℃で一晩までインキュベーション時間を延長できる場合があります。
- 実験手順終了後
- 蛍光検出:最終洗浄ステップの後、封入前にスライドを室温で一晩乾燥してもよいです。分析前の封入したスライドは4℃で最長4日間の保存、または密封後−20℃で数か月間の保存が可能です。スライドは暗所で保管するようご注意ください。
- HRP検出(明視野):最後の脱水ステップ後、スライドを新鮮キシレンに浸しておくか、スライドを封入します。スライドを封入したら、通常一晩、乾燥させる必要があります。
- 注記:ライゲーションおよび増幅の条件は最適化されているので、変更しないでください。微量タンパク質の検出またはフローサイトメトリー解析では例外的に変更できる可能性がありますが、増幅と検出のステップを別々に行わない場合、バックグラウンドが増加する可能性があります。
- Duolink® PLAプロトコルにはいくつかの中断できるステップがあります。具体的には、
- インキュベーション時間および温度を変えるとどのような影響がありますか?
Duolink® PLAプロトコルは、結果の質を損なうことなく、できるだけ短時間で結果を取得できるよう最適化されています。インキュベーション時間および温度の最適化はその重要要素であり、プロトコルの推奨事項に従った場合に最良の結果が得られます。
- Single recognition実験の方法を教えてください。
Single recognition実験を行うには、特定の標的タンパク質に対する一次抗体1種類と、一次抗体の生物種に対する2つのPLAプローブが必要です(例えば、一次抗体をウサギで作製した場合は、抗ウサギPLUS PLAプローブと抗ウサギMINUS PLAプローブが必要です)。それ以外は通常通りにDuolink® PLA実験を実施します。
- PLAシグナルはいつまで持続しますか? PLAシグナルは安定ですか?PLAシグナルを維持するには、どのようにスライドを保存すればよいですか?
- DAPI入りDuolink® PLA封入剤はPLAシグナルの保存性を高めるので、蛍光法での使用を強くお勧めします。他の封入剤を使うと、場合によってはサンプルに添加した直後にPLAシグナルが弱くなることがあります。
- DAPI入りDuolink® PLA封入剤で封入した顕微鏡解析前のスライドは、4℃の暗所で最長4日間保存できます。
- 週末の間、未封入のスライドを−20℃で保存することもできます。
- 長期保存の場合、カバーガラスの端に透明マニキュアを塗ることをお勧めします。こうすれば、スライドを最長半年間−20℃で保存できますが、通常、シグナルは時間とともにわずかに減衰します。蛍光顕微鏡解析後のスライドは、さらにシグナルが減衰すると予想されます。
- 明視野用としては、非水性(キシレンベース)永久保存用(ハードセット)封入剤でスライドを封入すると、サンプルを室温で保存でき、PLAシグナルは数年間持続します。
実験に必要とされる条件
- Duolink® PLAプローブを使用するときの一次抗体の必要条件は?または、どの抗体がお勧めですか?
- 一次抗体の要件は以下の通りです。
- IgGクラス
- 検出対象の標的に特異的で、できればアフィニティ精製した抗体
- 宿主はマウス、ウサギ、ヤギ、またはヒト
- モノクローナルまたはポリクローナル
- IF、IHC、またはその両方で検証済みの抗体。現在、バリデート済みPLA用抗体が購入可能です。
- 私たちは70,000種類以上の一次抗体を提供していますので、ご検討ください。
- 私たちはBethyl Laboratories社と提携し、PLA用にバリデートした一次抗体ペアを提供しています。
- 一次抗体の要件は以下の通りです。
- 一次抗体の使用濃度は?
IHCまたはIFの染色条件を既に確立している場合は、同じ一次抗体濃度で始めてください。場合によっては、一次抗体濃度の検討が必要になることがあります。
Duolink®Probemaker
- 抗体がマウス、ウサギ、ヤギ以外の生物種に由来します。 それでも、Duolink® PLAを使用できますか?
可能です。 私たちは、PLAオリゴヌクレオチドPLUS鎖またはMINUS鎖とお客様の抗体との結合を可能にするDuolink® PLA Probemakerキットを提供しています。 このようにして専用のPLAプローブを構築し、後でDuolink® PLA試薬と組み合わせて対象タンパク質の検出に利用できます。 - 2つの一次抗体がどちらも同じ生物種に由来します。それでも、Duolink® PLAを使用できますか?
可能です。 私たちは、PLAオリゴヌクレオチドPLUSまたはMINUSとお客様の一次抗体との結合を可能にするDuolink® PLA Probemakerキットを提供しています。 このようにして専用のPLAプローブを構築し、後でDuolink® PLA試薬と組み合わせて対象タンパク質の検出に利用できます。 これにより、タンパク質ホモ二量体の検出が可能になります。 - Probemakerキットはどのような時に使えばよいですか?
Probemakerキットは、PLAオリゴ(PLUSまたはMINUS)があらゆる抗体に結合できるようにします。したがって、直接検出用の一次抗体または間接検出用の二次抗体から、Probemakerを用いてPLAプローブを作製することができます。- 一次抗体の宿主がマウス、ウサギ、ヤギまたはヒトではない場合
- 同一生物種に由来する2種類の一次抗体を用いる場合
- サンプルと同じ宿主種由来の一次抗体を使用する場合(“マウス on マウス”など)
- Probemakerキットに関する抗体の推奨条件はありますか?
- 抗体濃度は1 mg/mL
- コンジュゲーション1反応あたりの抗体量は20 ug
- 抗体は添加物を含まないこと
- Duolink® PLA Probemakerを使用する場合、1 mg/mLよりも低濃度の一次抗体を使用できますか?
- Duolink® PLA Probemakerの各キットに梱包されている試薬は、1 mg/mL濃度の抗体20 µgを結合させることができます。この濃度での使用を強く推奨します。
- これより低濃度または高濃度では良好な結果を保証できません。
- 抗体濃度が低すぎる場合は、遠心分離機を用いた限外ろ過により濃縮してください。なお、このプロセスでは、適切なバッファーを添加し、遠心分離・限外ろ過を繰り返すことで、バッファーを交換してもよいです。
- 抗体濃度が高すぎる場合は、アミンを含まないバッファー(PBSなど)で希釈してください。
- 一次抗体が添加物を多量に含んでいます。どうすればいいですか?
- Duolink® PLA Probemaker使用前の抗体前処理については、標準プロトコルを参考にしてください。
- バッファーの交換およびアジドやトレハロースのような低分子添加物を除去するには、PBSを用いた透析またはPBSで平衡化したスピンカラム(Sephadex G25)でゲルろ過を行います。
- BSAやゼラチンなどの高分子添加物を除去するには、プロテインAまたはプロテインGで精製することをお勧めします。 抗体は低pHで溶出されますが、低pHが抗体活性に影響を及ぼす可能性があります。 中性pHの強力なバッファーを直ちに加えることを推奨します。 この精製法では常に抗体をロスします。
- 結合抗体はどの程度希釈すればよいですか?
抗体の使用濃度は、主に抗体の感度、サンプルの種類、およびサンプルの前処理に左右されます。 一般に、IFまたはIHCで良好な結果が得られる濃度で開始することを推奨します。 場合によっては一次抗体濃度の検討が必要になることがあります。 - 直接結合させた一次抗体とPLAプローブを組み合わせることはできますか?
可能です。 一方がPLUS、もう一方がMINUSで、種交差反応性がない限り(PLAプローブの標的が、直接結合させた一次抗体と異なる生物種由来の抗体である場合)、直接結合させた抗体とDuolink® PLAプローブを組み合わせることができます。
サポート
サポートが必要な場合はお問い合わせください。
お問い合わせの際は、以下の情報をご提供ください。
- お客様の実験内容
- 実験結果の画像
- 用いたコントロール(対照実験として、あるいは手技確認のための、ポジティブ/ネガティブコントロール)(ある場合)
- 以前のIF/IHCの結果(ある場合)
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