循環半減期は、新薬開発における重要な要素のひとつです。この点で、非ペプチドの低分子からペプチド、タンパク質、抗体フラグメント、アプタマー、糖、オリゴヌクレオチドに至る広範な候補物質をポリエチレングリコール鎖で修飾すること(いわゆるPEG化、PEGylation、PEG-ing)には数多くのメリットがあります。
PEG化は、ペプチドやタンパク質が持つバイオテクノロジー的な活性を高めるための最も有効な技術のひとつと考えられています1。
- 毒性、免疫原性、抗原性がなく、水溶性が高く、FDAにも認可されています2。
- PEGで修飾された分子はタンパク分解酵素や抗体から認識されにくくなるため、PEGコンジュゲートは代謝酵素による分解を受けにくく、タンパクの免疫原性を低減します(スキーム 1)。
- さらに、PEG化は体内での薬物輸送を改善する可能性があります3。
- PEG化は薬物動態特性を改善し、薬物の目的とする活性を維持します4。
PEG-タンパクコンジュゲートの治療薬(PEG-アデノシンデアミナーゼ)が最初にFDAに認可された1990年以後、数多くの新規PEG化医薬品が上市され、数十億ドルにのぼる大きなビジネスとなっています2。治療薬としてFDAに認可されたペプチド、タンパク質、低分子、オリゴヌクレオチド、抗体のPEGコンジュゲートの一部を表1にまとめました。
スキーム1薬物候補物質の性質に与えるPEG化の影響
PEGの創薬への応用
さらに最近では、タンパク質の徐放速度を制御するためにPEG化を利用する戦略が注力されています10。一般に、酵素や加水分解によって開裂する原子団がタンパク質とPEGの間に導入され、トリガーとなっています。
創薬分野以外の官能基化ポリエチレングリコールの利用例としては以下のようなものが挙げられます。
- SPPS(固相ペプチド合成)における可溶化ハンドルの導入11
- ペプチド合成における可溶性担体12
- 有機合成における可溶性担体13
- ペプチド合成における親水性アミノ酸の導入14
- PEG 被覆表面の形成15
- マクロ分子の表面への結合形成16
- バイオリアクター向けPEG-コファクター付加体17
PEG化試薬
シグマアルドリッチでは、効率的なPEG化のための20kDaまでのPEG化試薬を幅広く取り揃えています。同一置換基を有するホモ二官能性PEG、異なる置換基を有するヘテロ二官能性PEG、メトキシPEGなどの様々なPEG化試薬が高品質かつ単分散で入手可能です。第一級アミンやチオール類へのコンジュゲートに広く用いられている活性化ポリエチレングリコールも提供しています。タンパク質やペプチドのアミノ基は、アルキル化やアシル化によるPEG化に好んで用いられます。アルキル化はアミンの+電荷を維持するのに対し、アシル化は中性のアミド結合を生成します。アシル化は、N-ヒドロキシスクシイミド(NHS)で活性化するのが一般的です。アジド官能基化PEGは、StaudingerライゲーションとHuisgen双極子環化付加反応によく用いられています。また、ヘテロ二官能性PEGは、マクロ分子の架橋剤やスペーサーとして極めて有用であり、これらのターゲット分子は、適切に官能基化されたPEGリンカーが重要な役割を果たします。
参考文献
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