コンテンツへスキップ
Merck
ホーム薬物送達PEG修飾のための官能基化ポリエチレングリコール

PEG修飾のための官能基化ポリエチレングリコール

Matthias Junkers

ChemFiles, 2010, Vol.10 No.3

循環半減期は、新薬開発における重要な要素のひとつです。この点で、非ペプチドの低分子からペプチド、タンパク質、抗体フラグメント、アプタマー、糖、オリゴヌクレオチドに至る広範な候補物質をポリエチレングリコール鎖で修飾すること(いわゆるPEG化、PEGylation、PEG-ing)には数多くのメリットがあります。

PEG化は、ペプチドやタンパク質が持つバイオテクノロジー的な活性を高めるための最も有効な技術のひとつと考えられています1

  • 毒性、免疫原性、抗原性がなく、水溶性が高く、FDAにも認可されています2
  • PEGで修飾された分子はタンパク分解酵素や抗体から認識されにくくなるため、PEGコンジュゲートは代謝酵素による分解を受けにくく、タンパクの免疫原性を低減します(スキーム 1)。
  • さらに、PEG化は体内での薬物輸送を改善する可能性があります3
  • PEG化は薬物動態特性を改善し、薬物の目的とする活性を維持します4

PEG-タンパクコンジュゲートの治療薬(PEG-アデノシンデアミナーゼ)が最初にFDAに認可された1990年以後、数多くの新規PEG化医薬品が上市され、数十億ドルにのぼる大きなビジネスとなっています2。治療薬としてFDAに認可されたペプチド、タンパク質、低分子、オリゴヌクレオチド、抗体のPEGコンジュゲートの一部を表1にまとめました。

薬物候補物質の性質に与えるPEG化の影響

スキーム1薬物候補物質の性質に与えるPEG化の影響

表1FDAで承認された治療用PEGコンジュゲートの例 (Ref 5-9)

PEGの創薬への応用

さらに最近では、タンパク質の徐放速度を制御するためにPEG化を利用する戦略が注力されています10。一般に、酵素や加水分解によって開裂する原子団がタンパク質とPEGの間に導入され、トリガーとなっています。

創薬分野以外の官能基化ポリエチレングリコールの利用例としては以下のようなものが挙げられます。

  • SPPS(固相ペプチド合成)における可溶化ハンドルの導入11
  • ペプチド合成における可溶性担体12
  • 有機合成における可溶性担体13
  • ペプチド合成における親水性アミノ酸の導入14
  • PEG 被覆表面の形成15
  • マクロ分子の表面への結合形成16
  • バイオリアクター向けPEG-コファクター付加体17

PEG化試薬

シグマアルドリッチでは、効率的なPEG化のための20kDaまでのPEG化試薬を幅広く取り揃えています。同一置換基を有するホモ二官能性PEG、異なる置換基を有するヘテロ二官能性PEG、メトキシPEGなどの様々なPEG化試薬が高品質かつ単分散で入手可能です。第一級アミンやチオール類へのコンジュゲートに広く用いられている活性化ポリエチレングリコールも提供しています。タンパク質やペプチドのアミノ基は、アルキル化やアシル化によるPEG化に好んで用いられます。アルキル化はアミンの+電荷を維持するのに対し、アシル化は中性のアミド結合を生成します。アシル化は、N-ヒドロキシスクシイミド(NHS)で活性化するのが一般的です。アジド官能基化PEGは、StaudingerライゲーションとHuisgen双極子環化付加反応によく用いられています。また、ヘテロ二官能性PEGは、マクロ分子の架橋剤やスペーサーとして極めて有用であり、これらのターゲット分子は、適切に官能基化されたPEGリンカーが重要な役割を果たします。

関連製品
Loading

参考文献

1.
Freitas, D.. SciTopics 2010, April 14th. www.scitopics.com/PEGylation
2.
Veronese FM, Pasut G. 2005. PEGylation, successful approach to drug delivery. Drug Discovery Today. 10(21):1451-1458. https://doi.org/10.1016/s1359-6446(05)03575-0
3.
Veronese FM. 2001. Peptide and protein PEGylation. Biomaterials. 22(5):405-417. https://doi.org/10.1016/s0142-9612(00)00193-9
4.
Veronese FM, Mero A. 2008. The Impact of PEGylation on Biological Therapies. BioDrugs. 22(5):315-329. https://doi.org/10.2165/00063030-200822050-00004
5.
Bailon, P. et al.. 2001. Bioconjug.Chem., 12, 195..
6.
Trainer, P. J. N.. 2000. Eng. J. Med., 342, 1171..
7.
2002. The EyeTech Study Group Retina, 22, 143..
8.
Pasut G, Guiotto A, Veronese F. 2004. Protein, peptide and non-peptide drug PEGylation for therapeutic application. Expert Opinion on Therapeutic Patents. 14(6):859-894. https://doi.org/10.1517/13543776.14.6.859
9.
Chapman AP. 2002. PEGylated antibodies and antibody fragments for improved therapy: a review. Advanced Drug Delivery Reviews. 54(4):531-545. https://doi.org/10.1016/s0169-409x(02)00026-1
10.
Zhao, H.; Yang, K.;, Martinez., A. et al.. 2006. Bioconjug.Chem., 17, 341..
11.
Seitz O, Kunz H. 1997. HYCRON, an Allylic Anchor for High-Efficiency Solid Phase Synthesis of Protected Peptides and Glycopeptides. J. Org.Chem.. 62(4):813-826. https://doi.org/10.1021/jo960743w
12.
Pillai VNR, Mutter M, Bayer E, Gatfield I. 1980. New, easily removable poly(ethylene glycol) supports for the liquid-phase method of peptide synthesis. J. Org.Chem.. 45(26):5364-5370. https://doi.org/10.1021/jo01314a032
13.
Gravert DJ, Janda KD. 1997. Organic Synthesis on Soluble Polymer Supports: Liquid-Phase Methodologies. Chem. Rev.. 97(2):489-510. https://doi.org/10.1021/cr960064l
14.
Koskinen, A. M. P. et al.. 1995. Bioorg.Med. Chem. Lett., 5, 573..
15.
Harris JM, Struck EC, Case MG, Paley MS, Yalpani M, Van Alstine JM, Brooks DE. 1984. Synthesis and characterization of poly(ethylene glycol) derivatives. J. Polym.Sci. Polym.Chem. Ed.. 22(2):341-352. https://doi.org/10.1002/pol.1984.170220207
16.
Andreadis JD. 2000. Use of immobilized PCR primers to generate covalently immobilized DNAs for in vitro transcription/translation reactions. 28(2):5e-5. https://doi.org/10.1093/nar/28.2.e5
17.
Okada H, Urabe I. 1987. [4] Polymerizable NAD derivative and model enzyme reactor with recycling of polyethylene glycol-bound NAD.34-45. https://doi.org/10.1016/s0076-6879(87)36006-9
ログインして続行

続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。

アカウントをお持ちではありませんか?