図1.Structures of the new deoxofluorination reagents, XtalFluor-E® (719439) and XtalFluor-M® (719447).
有機分子の骨格にフッ素を導入することは、重要な変換反応です。DAST(235253、774642)やDeoxo-Fluor®は優れたフッ素化剤としてよく知られていますが、実際に使用する場合には、取扱いの煩雑さと安全性の問題を考慮せざるを得ません。
Couturierらによって最近開発されたXtalFluor-E®とXtalFluor-M®は、従来のフッ素化剤の問題点の多くを解決する試薬です2。XtalFluorは、「クリスタルフロー」というその名の通り結晶性の脱酸素的フッ素化剤で、短時間であれば空気中で取り扱えます。また、基質適用性と反応性も、従来の脱酸素的フッ素化剤とほぼ同じで、アルコールからフッ化アルキル、アルデヒドとケトンからgeminal-ジフルオリド、カルボン酸から酸フッ化物、スルホキシドからフルオロメチルチオエーテル、ヘミアセタール糖からグリコシルフッ素ドナーがそれぞれ得られます(Scheme 1)。
スキーム1.Generic substrate scope of XtalFluor-mediated deoxofluorination.
その他の特長としては、無水反応条件下で遊離のHFを発生しないことが挙げられます。反応機構については解明中ですが、XtalFluorがフッ素を脱離せずにC-O結合を活性化するためと考えられています。DBU、Et3N・3HF、Et3N・2HFなどの反応促進剤が共存する場合にのみ、フッ素が活性炭素原子を攻撃します。脱酸素的フッ素化剤の化学効率は高く、
XtalFluorは、DASTやDeoxo-Fluor®に比べて熱安定性が高いという結果が熱量試験(ARC)から得られており、スケールアップにおける実用性が高いこともこの試薬の魅力となっています(表 1)。
表 1.Accelerated Rate Calorimetry (ARC) data comparisons indicating a higher thermal stability of the XtalFluors.
参考文献
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