フッ素化反応
フッ素は高い電気陰性度と小さなサイズという特徴を持つため、フッ素化(フッ素の導入)は化合物の生物学的特性を変化させる重大な能力を持っています。医薬品の研究開発では、ターゲット化合物のバイオアベイラビリティの向上や、代謝安定性を高める目的でフッ素を導入します。フッ素の導入に用いられる戦略の数も増えてきており、中でも重要なのは次のような反応です。
求核フッ素化
求核フッ素化法では、フッ化アルカリやフッ化アンモニウムをフッ化物源として、アルコールの直接置換、アルデヒド、ケトン、カルボン酸への付加など、化学選択性の高い方法で低分子合成を行うことができ、また、材料合成のためのポリフッ素化も可能です。
求電子フッ素化
求電子フッ素化では、炭素中心の求核試薬と求電子フッ素源の組み合わせが利用されます。従来、求電子フッ素供給源としては、毒性が高く、強力な酸化剤であるフッ素ガスが用いられていました。しかし、研究が進み、よりマイルドで安全性が高く、安定性の高い求電子フッ素化のための代替となる試薬が開発されました。これらの試薬は、求電子芳香族置換からα-フルオロ-ケト種の形成に至るまで、さまざまな用途で優れた有用性を示しています。
ジフルオロメチル化
ジフルオロメチル化では(C–H)結合の求核付加反応とラジカル官能基化により、試薬のジフルオロメチル基を生成します。ジフルオロメチル基(R-CF2H)はカルビノール基(CH2OH)に対する等価体であることから医薬品、農薬、材料研究分野で大きな注目を集めています。
トリフルオロメチル化
トリフルオロメチル化は、化学研究の中で急速に成長している分野であり、分子にトリフルオロメチル基を導入するための新しい化学的手法を、触媒反応を活用して構築しています。
図5.ラジカルトリフルオロメチル化
図6.求電子トリフルオロメチル化
パーフルオロアルキル化
パーフルオロアルキル化は、アルキル、アルケニル、アリールのハロゲン化物やカルボニル化合物と求核パーフルオロアルキル基との反応です。パーフルオロアルキル試薬の安定性が優れていることから、アリルリン酸エステルとのクロスカップリングを含む多様な反応に応用される魅力的な方法です。
関連技術資料
- Selectfluor™ (1-chloromethyl-4-fluoro-1,4-diazoniabicyclo[2.2.2]octane bis(tetrafluoroborate), or F-TEDA) is a user-friendly, mild, air- and moisture-stable, non-volatile reagent for electrophilic fluorination.
- The importance of selectively fluorinating compounds in medicinal chemistry, biology, and organic synthesis is well appreciated and provides a major impetus to the discovery of new and mild fluorinating agents that can operate safely and efficiently.
- (Phen)Cu-CF3(777692)は、熱的に安定かつ取扱いの容易な試薬で、芳香族ヨウ素化物のトリフルオロメチル化に有用です。
- The chiral auxiliaries TADDOLs (α,α,α,α-tetraaryl-1,3-dioxolane-4,5- dimethanols) developed by Seebach's group have found numerous applications in asymmetric synthesis ranging from utilization as stoichiometric chiral reagents or in Lewis acid mediated reactions, to roles in catalytic hydrogenation and stereoregular metathesis polymerization.
- 化学工業やドラッグデザイン分野における有機フッ素化合物の普及により、分子にC-F結合を導入する手法のニーズは高まっています。
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