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ウシ胎児血清(FBS)– 知っておくべきこと

血清は高品質が当たり前と思われているラボ用製品で、細胞アッセイや細胞培養の結果に大きく影響します。本サイトの5つの主要テーマは、細胞培養用血清の使用にあたって学ぶべき有用な基本情報です。

細胞や組織を培養する生物学者は、ウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)(またはFCS[fetal calf serum:子ウシ胎児血清]と呼ばれることもあります)などの血清製品が、ほとんどの用途で培養培地に必須の成分であることを知っています。血清は細胞培養培地に最も多く含まれる成分の1つであることが多く(通常は容量の2~15%)、その品質は培養の成否に大きく影響すると考えられます。

特にFBSは、その利用しやすさとともに、in vitroでの細胞の成長・増殖を促進する成長因子を豊富に供給できることから、哺乳類細胞の培養において最も広く用いられる培地添加剤です。血清はまた、pHの変化、タンパク質分解活性、エンドトキシンの存在など、細胞の増殖を阻害する可能性のあるさまざまな毒性作用を打ち消す、細胞培養システムの緩衝剤としても機能します。

私たちはFBS製品群を3つのカテゴリ(クラシック、プレミア、セレクト)に分類し、どのFBSがお客様の用途や予算に最適であるか判断しやすくなっています。メルクのFBS製品カテゴリは、お客様の用途に関連するパラメータに基づいています。

  • 特定の汚染物質を含まないことを検査済みの血清
  • γ線照射、非照射、非働化血清
  • 原産国
  • 幹細胞および心筋細胞培養への適合性
  • ろ過滅菌または限外ろ過済みの血清

研究室での血清の取扱い方

ラボ用に血清を注文したことがある人は、血清ボトルは通常凍った状態で届くため、配達のタイミングが重要であることを知っています。これは、血清中の重要な高分子の活性が-5~-20℃で保存することによって最も良好に保護され、血清を使用まで凍った状態で維持すると脂質の分解といったイベントの発生も抑制できることが理由です。 

血清は、30~37℃の水槽またはインキュベータ内で解凍する必要があります。血清のボトルは定期的に攪拌して、解凍中に血清に形成される塩およびタンパク質の濃度勾配を抑制することが重要です。これらの沈降物は細胞培養に有害ではありませんが、細胞データの再現性に影響を及ぼす可能性があります。37℃を超えないようにしてください。この温度を超えると重要な血清成分の分解が加速するため、血清の性能が損なわれる可能性があります。 

血清は温度以上に環境条件に敏感です。例えば、高強度/高エネルギーの光波長は成長因子の活性を低下させる可能性があります。この事実は、一部のバイオセーフティキャビネット内で無菌性の促進を目的としてUV光の近くで血清を使用する際に念頭に置いておくことが重要です。一般的なラボの照明条件では血清の完全性または性能に対する影響はほぼありません。

医師は、濁りのある患者サンプルを脂肪血症、または血中に脂肪が過剰にあることを示唆していると解釈する場合があります。同じことが、ラボにおける濁った血清にも当てはまります。サンプルを培養することで細菌汚染の可能性を除外できた場合、血清の濁りは脂質およびリポタンパクの沈降で説明できる可能性が高くなります。

血清の濁りは、バルクストック液を小分け分注して、凍結融解の繰り返しを避けることによって最小限にできます。凝固タンパク質であるフィブリンの存在がときに血清の濁りの原因であることがありますが、血清は血液の凝固後画分から調製するため、通常は大量のフィブリンや他の凝固因子を含みません。

血清の分注

血清を凍結保存用使い捨てチューブに分注するなどの適切な方法をとることにより、汚染物質へのばく露が繰り返される可能性が低下します。分注は、凍結融解を繰り返した結果引き起こされる脂質や脂質関連高分子の分解から生じる濁りを防止するのにも役立ちます。

血清の濁りに寄与する脂質含有量は種によって大きく異なる可能性があることを認識しておくことも有用です。  例えば(そして、おそらく驚くことではありませんが)、ブタ血清はウシ血清と比べて脂質含有量が多くなります。  ですから、さまざまな生物学的起源の血清は、製造工場においてそれぞれ特有の取り扱い方法や追加の処理ステップを用いて、ラボで使用できる最終製品を調製する必要があります。したがって、複数の種由来の血清を供給するメーカーは、エンドユーザーに脂質の生物学に関係なく均一で適切な血清製品を供給するために、個別のプロトコルを設定して原料を処理します。

原産国、病原体、FBSの調達

血清は生物学的製品であるため、原料動物の健康状態によって生じる変動を受けやすく、そのため、飼料、環境、および世界的な疾患要因による影響を受けます。したがって血清製品ユーザーが求める最も重要な特性の1つは原産国、または供給元です。

ウシ海綿状脳症(BSE)などの血清に対するさまざまな種特異的病原体の発生およびその影響は現在でも研究中ですが、USDAは、最新の病原体発生データにも基づいた、血清の輸入を承認された国の一覧を持っています。したがって、血清の消費者は常に、メーカーがその血清などの動物由来製品の原産国情報を提供することを期待しています。

血清承認国

USDAは米国への血清の輸入について承認された国の一覧を持っています(ガイドラインは毎年改訂)。これは、米国内の施設で採取され、USDAの継続的な検査を受けている米国原産の血清とは異なります。

国際的な試験と規制慣行

評価の高いメーカーは通常、血清産業が規定する合意のとれた検査方法を使用し、ラボに供給される血清が、細胞培養の性能に影響を及ぼしうる一般的な汚染物質の量に関する基準を満たすようにしています。いくつかの一般的な試験は以下のとおりです:

一般的な血清の特性および成分の試験に関する基準も設定され、重量オスモル濃度、総タンパク質、ヘモグロビン、および全般的な培養性能の一貫した評価が可能になっています。

血清産業におけるトレーサビリティと文書化

「原産国」が血清を採取した国を示しているのに対し、「トレーサビリティ」は血清製品の道程、すなわち原産国での採取から製造・配送までどれくらい良好に記録されているかを示します。

血清は凍結状態で加工施設に輸送し、解凍後、細菌、ウイルス、エンドトキシンおよびヘモグロビン含量について試験を行います。試験に合格した高品質の血清を数層のメンブレンフィルターでろ過します。最終ろ過には、孔径0.1 μmのフィルターを使用し、無菌状態で行っています。

ろ過した血清は、無菌状態で維持しながら無菌ボトルに分注し、すぐに−20℃に凍結させて検査を行い、すべてのロットが品質管理基準値またはそれ以上を達成しています。ご要望に応じて、ロット毎の試験成績書をご利用できます。

生物学的製品のトレーサビリティは、ラベルの記載が製品の履歴や含有量を正確に表示するものであることを確認するために重要です。  完璧な文書記録によって消費者および規制当局が血清製品の処理を監査することが可能であり、メーカーが各国の費用のバラツキを相殺するために血清のプールを行っている(性能を損なう可能性のある慣行)かどうかも明らかにできます。

FBSの経済学:FBS価格に影響する世界的要因

血清は、価格が原産国によって異なる商品生産物です。例えば、オーストラリア、ニュージーランド、米国原産の血清のコストは、他の国由来の血清よりも高い可能性があります。

これらの国々はBSEやFMD(口蹄疫)に汚染されていない状態が続いているため、OIE(国際獣疫事務局)のこれらの国々および米国に関する現行の地理的リスク評価で評点が高くなっています。オーストラリアおよびニュージーランドについては、地理的に隔離されていることも理由の1つです。厳格な農業規制慣行およびこれらの国由来の血清に対する需要の高まりが、価格を引き上げていると考えられます。

FBSや他の動物由来血清の利用可能性は元来、世界の動物疾患の状況、気候、飼料や水の供給の変動の影響を受けやすいものです。世界的な気象イベントがあった場合、しばしば農家はウシを血清採取工程に進めることが難しくなります。近年、ウシの群れの数が記録的に低下し、農家が群れを再構築しているところであるため、市場における血清量が少なくなっています。これらの要因により、産業全体の血清の価格設定は、非生物学的試薬に対する価格設定ではみられないような、不安定なものになっています。

そして最後に、特に医薬品部門において、細胞培養がより多くの国で広く普及するにつれ、こうした需要により促進される可能性がある供給量の変化が血清の価格設定に反映されることは確実です。このような状況から、FBSの需要と供給が不安定になり、世界的な血清の価格変動が生じています。 

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