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パラフィン包埋組織の免疫組織染色プロトコル

免疫組織染色手法

免疫組織染色は、組織中の特定の抗原を検出するための有用なツールです。標準的な染色プロトコルでは、一次抗体を添加する前にまず組織切片を脱パラフィン処理してから、再水和します。続いて、酵素標識二次抗体を添加してから酵素に特異的な基質を添加すると、特定の染色を可視化できます。染色が認められない、または弱い場合には、酵素消化による抗原の「脱マスキング(抗原の露出)」が必要になることがあります。

ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ標識を用いた、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片の免疫組織染色プロトコルを以下に示します。

試薬・機器 | プロトコル

免疫組織染色

図1.免疫組織染色


 

試薬・機器

これらの製品の多くは下記の関連製品でご覧いただけます。

  1. ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片
  2. 0.01 Mリン酸緩衝生理食塩水 pH 7.4(PBS)(製品番号P3813またはP4417‐錠剤)
  3. ウシ血清アルブミン(BSA)(製品番号A9647
  4. 希釈液:1% BSA含有PBS(製品番号P3688
  5. キシレン(製品番号247642または製品番号534056
  6. 無水エタノール(製品番号32221〔欧州のみ〕または製品番号E7023
  7. 0.1%トリプシン(製品番号T7409)含有PBSまたはトリプシン錠(製品番号T7168)含有4mM CaCl2、200 mmトリス pH 7.7または0.1%プロテアーゼ(製品番号P5380)含有PBS
  8. マイクロ波(電子レンジ)抗原賦活化溶液:10 mMクエン酸ナトリウム(製品番号C8532)バッファー pH 6.0、1 mM EDTA(製品番号ED4SS)pH 8.0
  9. 一次抗体
  10. オプション1:ビオチン標識二次抗体およびExtrAvidin‐ペルオキシダーゼ(製品番号
    E2886)またはExtrAvidin‐アルカリホスファターゼ(E2636)、またはオプション2:ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ標識済み二次抗体
  11. ペルオキシダーゼ標識二次抗体またはExtrAvidin‐ペルオキシダーゼを使用する場合:3% 過酸化水素(脱イオン水を使用して、30%原液から新たに調製)
  12. 酵素基質:必要な酵素および色による(基質を参照)
  13. ペルオキシダーゼの場合:AEC染色キット(製品番号AEC101)、DAB(製品番号D4418またはD0426
  14. アルカリホスファターゼの場合:Fast Red TR/Naphtol AS-MX(製品番号B5655)。
  15. マイヤーヘマトキシリン(製品番号MHS1
  16. コプリン染色槽(製品番号S5641
  17. マイクロ波(電子レンジ)
  18. 顕微鏡

 

IHCプロトコルの手順

  1. スライド調製
  2. 一次抗体反応
  3. 二次抗体反応
  4. 基質の調製
  5. 発色
  6. 対比染色

スライド調製

脱パラフィン処理と再水和 | 抗原賦活化-脱マスキング内因性ペルオキシダーゼの不活性化

脱パラフィン処理と再水和

  1. スライドを56~60℃のオーブンの中に15分間入れます(注意:オーブンの温度は60℃を超えないようにしてください)。
  2. キシレン槽に移してから、5分ごとにキシレンを2回交換します。
  3. 余分な液体を振り落とし、新しい無水エタノールにスライドを入れて3分ごとにエタノールを2回交換して再水和させます。
  4. 余分な液体を振り落とし、新しい90%エタノールにスライドを3分間入れます。
  5. 余分な液体を振り落とし、新しい80%エタノールにスライドを3分間入れます。
  6. 水道水をゆっくり流しながらスライドを30秒間すすぎます(切片が流れ落ちたり動いたりするおそれがあるため、直接噴射しないでください)。
  7. さらに再水和させるためにPBS洗浄槽に入れます(室温で30分間)。

抗原賦活化-抗原の脱マスキング

注記:このステップは、染色が弱いか染色されない場合、または一次抗体の仕様により抗原に「脱マスキング(露出)」が必要な場合のみ実施します。

抗体と抗原によっては賦活化の方法が複数あります:

酵素による賦活化:

  1. 0.1%トリプシンまたは0.1%プロテアーゼを含むPBSを37℃で2~30分間インキュベートします。インキュベーション時間を長くすると、特異的染色も強化されます。PBSで10分間すすぎます。

マイクロ波による賦活化

  1. 脱イオン水でスライドを洗浄し、抗原賦活化溶液を入れたマイクロ波耐性のプラスチック製染色槽に入れます。スライド全体が溶液に浸っていることを確認します。
  2. 高出力(約700ワット)の電子レンジに5分間かけます。スライド全体が賦活化溶液に浸っていることを確認し、浸っていなければ新しい溶液を追加して再度電子レンジにかけます。
  3. この手順は2~3回繰り返すことができます。
  4. 室温で少なくとも20分かけて徐々に冷ましてから、次のステップに進みます。

内因性ペルオキシダーゼの不活性化

注記:このステップは、ペルオキシダーゼ標識二次抗体またはExtrAvidin‐ペルオキシダーゼを使用する場合のみ実施されます。

  1. スライドを平面に置きます。スライド同士が触れないようにしてください。切片が完全に乾燥しないように維持してください。
  2. 切片全体が浸るように3% 過酸化水素を十分に滴下します。
  3. 室温で5分間インキュベートします。
  4. 洗浄ボトルを用いてPBSですすぎます。
  5. スライドをPBS洗浄槽に2分間入れます。

一次抗体反応

注記:

a. 一次抗体反応前のサンプルを5% BSAで10分間プレインキュベートすると、バックグラウンド染色を抑えることができます。動物組織で最良の結果を得るには、二次抗体の宿主と同じ動物種由来の5~10%の正常血清を使用してください。
b. 使用前に、各一次抗体に応じた最適な希釈倍率とインキュベーション時間を決定する必要があります。

  1. スライドの水を流してから余分な水分をすばやく振り落とし、各スライドの切片の周囲を丁寧に拭きます。
  2. 一次抗体またはネガティブコントロール試薬を、その最適な希釈倍率になるまで希釈液で希釈します。ネガティブコントロール試薬としては希釈液を単独で用いることができます。ポジティブコントロールのスライド(試験対象の抗原を含むことが既知の組織)についても実行する必要があります。
  3. 一次抗体溶液100 µLを適切なスライドに添加して、組織切片全体を浸します。
  4. 各スライドを2方向に傾けて、液体がスライド上で均一に広がるようにします。
  5. 37℃の湿式チャンバーで少なくとも60分間インキュベートします。抗原が低密度の場合は、インキュベーションの延長が推奨されます。
  6. 洗浄ボトルを用いてPBSで丁寧にすすぎます。スライドをPBS洗浄槽に5分間入れます。

二次抗体反応

オプション1-ビオチン/ExtrAvidin検出
オプション2-酵素標識二次抗体

オプション1-ビオチン/ExtrAvidin検出

  1. スライドの水を流してから余分な水分を振り落とし、前と同じようにスライドを丁寧に拭きます。
  2. ビオチン標識二次抗体を、その最適濃度になるまで希釈液で希釈します。
  3. 各スライドに100 µLを添加して組織切片全体を浸します。
  4. 各スライドを2方向に傾けます。
  5. 室温で湿式チャンバーで少なくとも30分間インキュベートします。
  6. 洗浄ボトルを用いてPBSで丁寧にすすぎます。
  7. スライドをPBS洗浄槽に5分間入れます。

ExtrAvidin反応

  1. スライドの水を流します。余分な液体を振り落とし、前と同じようにスライドを丁寧に拭きます。
  2. ExtrAvidinペルオキシダーゼまたはExtrAvidinアルカリホスファターゼを、その最適濃度になるまで希釈液で希釈します。
  3. 全スライドに100 µLを添加して切片全体を浸します。
  4. 各スライドを2方向に傾けます。
  5. 室温で湿式チャンバーで少なくとも20分間インキュベートします。
  6. 洗浄ボトルを用いてPBSで丁寧にすすぎます。
  7. スライドをPBS洗浄槽に5分間入れます。
  8. 基質の調製および発色ステップへ進んでください。

オプション2-酵素標識二次抗体

  1. スライドの水を流します。余分な液体をすばやく振り落とし、前と同じようにスライドを丁寧に拭きます。
  2. ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ標識二次抗体を、その最適な希釈倍率になるまで希釈液で希釈します。
  3. 全スライドに100 µLを添加して切片全体を浸します。
  4. 各スライドを2方向に傾けます。
  5. 室温または37℃で湿式チャンバーで30分間インキュベートします。
  6. 洗浄ボトルを用いてPBSで丁寧にすすぎます。
  7. スライドをPBS洗浄槽に5分間入れます。

基質の調製

基質混合液は、最終洗浄ステップの間に調製することをお勧めします。

注記:1 mMレバミゾール(製品番号L9756)をアルカリホスファターゼ基質溶液に添加すると、内因性アルカリホスファターゼ活性が強く阻害されます(腸のアイソザイムの活性を除く)

発色

  1. スライドの水を流します。余分な液体を振り落とし、これまでと同様にスライドを丁寧に拭きます。
  2. 組織切片全体が浸るように、新しく調製した基質混合液を十分に滴下します。
  3. 5~10分間、あるいは望ましい発色反応が顕微鏡で観察されるまでインキュベートします。ネガティブコントロールにバックグラウンド染色が現れる前に、洗浄ボトルを用いて純水で丁寧にすすぐことにより反応を止めます。

対比染色

注記:この方法によって形成されるAEC染色は有機溶媒に可溶なため、AEC基質を使用する場合はアルコールを含む溶液(ハリスヘマトキシリン、酸アルコールなど)を対比染色に使用しないでください。スライドを乾燥させたり、トルエン(またはキシレン)に戻したり、トルエンを含む封入剤で封入したりしないでください。

  1. 切片全体が浸るまで十分なマイヤーヘマトキシリンを添加するか、マイヤーヘマトキシリンの槽にスライドを入れます。
  2. 使用したヘマトキシリンの濃度に応じて、0.5~5分間インキュベートします。
  3. 洗浄ボトルを用い、スライドを純水で丁寧にすすぎます。
  4. 水道水をゆっくり流しながらスライドを5分間すすぎます(切片が流れ落ちたり動いたりするおそれがあるため、直接噴射しないでください)。
  5. グリセロールゼラチンなどの水溶性封入剤を用いて切片を封入します。カバースリップは、透明マニキュアで密封できます。
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参考文献

1.
Cuello A. 1993. Immunohistochemistry II. 1. Wiley.
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