BCIPはアルカリホスファターゼ(AP)基質であり、これは脱リン酸化後にNBTによって酸化されて濃青色のインジゴ沈殿色素を生じます。青色の反応産物は水に対して不溶性です。NBT/BCIPは ready-to-use タブレット(製品番号11697471001)として提供されます。
NBT/BCIPプロトコルのトラブルシューティング
抗DIG-AP検出/NBT/BCIPと組み合わせた非放射性in situハイブリダイゼーションに推奨される対比染色:
NBT/BCIPは、従来の対比染色とは互換性がありません。キシレン含有封入剤(DPXなど)は、呈色沈殿の結晶形成につながる可能性があるため、NBT/BCIPシグナルの封入に使用しないでください。ただし、エオシンなどの従来の対比染色には、キシレンを含んだ封入剤が必要となります。
NBT/BCIPシグナルを含んだセクション専用の封入試薬として市販されている製品には、Biomedia製Crystalmountのほか、Vector Laboratories製VectamountまたはImmunomountが挙げられます。また、これらの封入剤と互換性のある有機対比染色(Vector Methyl Green、Vector Nuclear Fast Redなど)も、それぞれ同じメーカーから提供されています。
特定の対比染色を任意の封入剤と併用した結果は、主にNBT/BCIP色検出に使用される組織の種類によって決まります。
NBT/BCIP検出を行うかどうかにかかわらず、隣接するスライドの染色には一般的な対比染色を用い、封入には従来のキシレン含有封入剤を使用します。こうすることで、シグナルの有無にかかわらず、染色された組織を直接比較できるようになります。
封入剤の調製についてお客様がお勧めするプロトコール*:
グリセロールゼラチン:
- 0.2 Mリン酸緩衝液pH 7 100 mL
- アジ化ナトリウム200 mg
- ゼラチン15 g(溶けるまでかき混ぜる)
- グリセロール100 mL
封入剤を37 ℃に保ち、スライドとカバースリップに滴加します。封入剤の硬化後、シグナルはNBT/BCIP沈殿物の退色なしに数年間持続します。
*注記:「お客様がお勧めするプロトコル」とは、お客様の研究室で開発されたプロトコルを指し、Rocheでは検証していません。Rocheは、プロトコルの内容および正常な実行について責任を負いかねます。Rocheがご紹介するお客様のプロトコルは、研究者間の情報交換や経験の共有のみを目的としてRocheが提供するサービスです。
RNA ISHの際の「シグナルが弱い」問題と「シグナルが茶で染色される」問題のトラブルシューティング
1.青色シグナルではなく茶/紫で染色される
in situハイブリダイゼーション(ISH)では、NBT/BCIP呈色沈殿の色が青から茶または紫に変化することがあります。最終的な色は、主に組織内のターゲットmRNAの量によって決まりますが、プローブの長さと標識強度にも左右されます。また、検出溶液(アルカリホスファターゼの反応バッファー)のpHも影響する可能性があるため、pH 9.5に慎重に調整することが必要です。
一般的に、ターゲットRNAの量が多いほど、対応するシグナルが強くなり、呈色沈殿の青色が濃くなります。
濃い青色または紫色のシグナルが望ましい場合は、メルクのBM紫基質を試してください。
2.シグナルが弱い
プローブのテスト結果が良好で(ゲル電気泳動とスポットアッセイで問題がない)、ノーザンブロットが正常に機能しているにもかかわらず、ISHのシグナルが弱い場合(プロトコールに問題がないと仮定)は、組織切片の質、封入剤の精製全体、または検出手順を評価することが重要です。
- さまざまなプローブ濃度をテストしてみる:ハイブリダイゼーション混合液中のプローブの量を多くして評価します。たとえば、ハイブリダイゼーション溶液50 µLに対し、反応用の希釈標準液50 µLから1、2、4、8 µLをプローブとして加えます。
- 強力なポジティブコントロールを含めます。
- プロテイナーゼKやグリシンの代わりにクロロフォルムを使用するなどプロトコールを変更してみます。
まったく異なるプロトコールをテストすることで問題が解決する場合もあります。
注記:DIG in situハイブリダイゼーションの場合は、前処理の後およびハイブリダイゼーション前にスライドグラスを乾燥させないよう注意してください。スライドグラスの乾燥は非特異的バックグラウンドの原因になります。
心臓サンプルを用いたISHを行い、アルカリホスファターゼ(NBT/BCIP)検出手順を実施したところ、非特異的な青色の「小胞状」バックグラウンドが見られる:
心臓やその他の組織では、細胞内に脂質滴が蓄積することがあります。凍結切片に アルカリ性リン酸塩(NBT/BCIP)検出手順を用いると、呈色沈殿の一部がこれらの脂肪滴に滞留します。この問題は、プレハイブリダイゼーション手順の前に、これらのセクションをクロロホルムで脱脂(RTで10分)することによって解決できます。
通常のアルカリホスファターゼ検出システム(NBT/BCIP)検出システムを用いた後で、全般的に高い青色のバックグラウンドが生じる:
NBT/BCIPシステムで全般的に非特異バックグラウンドが高い場合は、組織が過度に固定されたことが原因として考えられます。このような組織サンプルでは通常、組織全般に青色の染色が見られます。組織サンプルの固定ステップの処理に対する変更が不可能な場合、青色のバックグラウンドを防ぐことはできませんが、このバックグラウンドが特異シグナル生成の妨げになることはありません。
in situハイブリダイゼーション実験でDIG NBT/BCIPシグナルの退色を防ぐための推奨事項:
in situハイブリダイゼーションの後でNBT/BCIPのシグナルが退色するのは非常に珍しいことです。退色が問題になるのは蛍光in situハイブリダイゼーションが一般的です。
NBT/BCIPシグナルを有するスライドをキシレンを含んだ封入剤で封入することは絶対に避けてください。封入剤中のキシレンは、呈色沈殿の結晶化を引き起こします。
切片の境目に非特異バックグランドが見られる:
- 検出手順の際に切片を乾燥させないよう注意してください。このようなバックグラウンドを生じさせる場合がある検出手順に加え、ハイブリダイゼーションなどのステップもこの問題の原因となる可能性があります。
- ハイブリダイゼーションの際に、切片がプレハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーションバッファーで完全に覆われていることを確認します。これらのステップでバッファーの容量を減少させることによる切片の乾燥が、バックグラウンドの根本原因である可能性があります。最良の結果を得るためのポイント:
- ハイブリダイゼーションに使用するボックスがしっかり密封されていることを確認します。
- ハイブリダイゼーションバッファーと同様のバッファーとフォルムアミドを含む溶液を用いた恒湿槽内でハイブリダイゼーションを行います。
- 切片にカバースリップをかぶせます(パラフィルムを使用するとさらに便利です)。
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