ペプチドの設計
カスタムでのペプチド合成を選択する際には、その設計過程でいくつかの重要な要素を検討する必要があります。検討事項には、配列長、溶解度、配列安定性などがあります。
配列長
ペプチド純度は通常、配列長が増加するとともに低下します。 30アミノ酸を超える長さの配列には特別な注意が必要です。長さの増加は、すなわちアミノ酸結合の数の増加であり、精製において合成不純物を除去する際、溶解度の問題を引き起こす場合があります。
ペプチド溶解度
アミノ酸は、それらの側鎖の疎水性または親水性に基づくハイドロパシー指数(hydropathy index)に従って分類されます。ペプチド配列に疎水性または親水性アミノ酸を加える、または除去することは、水溶液中で最終ペプチドを合成、精製、可溶化できるかどうかに影響します。
アミノ酸の分類:
疎水性(非極性):Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Val
非電荷(極性):Asn, Cys, Gly, Gln, Pro, Ser, Thr, Tyr
酸性(極性):Asp、Glu
塩基性(極性):His, Lys, Arg
ヒント―疎水性アミノ酸の含有量を全配列長の50%未満に抑え、5アミノ酸ごとに荷電アミノ酸1個以上を含むようにします。 生理的pHでは、Asp、Glu、Lys、Argが荷電側鎖を有します。 1残基の保存的置換、例えばAlaからGlyへの置換や、N末端またはC末端への極性アミノ酸の付加などによって、溶解度が向上する可能性があります。
ペプチド配列安定性
ペプチド安定性を向上させ、より高い純度と最適な溶解度を得るための方法はいくつかあります。ペプチド配列のアミノ酸組成が全体の安定性に影響を及ぼし、以下の状況を考慮する必要があります:
1.複数のCys、Met、Trpアミノ酸は、酸化および/または副反応を起こしやすいことが一因となり、
高純度で得ることが困難な場合があります。
ヒント―これらの残基が最も少なくなる配列を選択するか、これらのアミノ酸の保存的置換を選択します。 ノルロイシンがMetの代わりとなり得たり、SerがCysより反応性の低い置換残基となります。 タンパク質配列から重複するペプチドを設計する場合は、各ペプチドの開始点を移動させることによって、疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基のバランスを良くすることもできます。
2.N末端のGln(Q)は不安定であり、切り出しの際の酸性条件にさらされると環化してピログルタミン酸になる場合があります。
ヒント―配列のN末端をアミド化するか、このアミノ酸を置換します。
3.アスパラギン(N)は、ペプチド配列のN末端に位置すると除去が困難な保護基を有します。
ヒント―この位置のAsnを除去し、別のアミノ酸で置換するか、アミノ酸残基1つ分ペプチドを延長します。
4.配列に含まれる複数のプロリン(P)または隣接するセリン(S)は、純度の低下または多数の
欠失を有する生成物をもたらすことがあります。複数のプロリンは、cis/trans異性化を起こし、見かけ上純度の低い生成物をもたらすこともあります。
5.Betaシート形成は、合成中ペプチド鎖の溶媒和を不完全にし、最終生成物における欠失配列の
発生率を上昇させることが懸念されます。
ヒント―複数のまたは隣接するVal、Ile、Tyr、Phe、Trp、Leu、Gln、Thrを有する配列を避けてください。 保存的置換、例えば3残基おきのGlyまたはPro挿入、GlnからAsnへの置換、ThrからSerへの置換などによって、このパターンを壊してください。
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