生物学と従来の電子工学をつなぐ有機バイオエレクトロニクス材料およびデバイス
Bryan D. Paulsen1, 2, Alexander Giovannitti3, 4, Vishak Venkatraman1, 2, Jonathan Rivnay1, 2*
1Department of Biomedical Engineering, Northwestern University, Evanston, IL 60208, US, 2Simpson Querrey Institute for BioNanotechnology, Northwestern University, Chicago, IL 60611, USA, 3Department of Chemistry, Imperial College London, London SW7 2AZ, UK, 4epartment of Physics and Center for Plastic Electronics, Imperial College London, London SW7 2AZ, UK
Material Matters 2019, Vol.14 No.1
Article outline
はじめに
生物学と電子工学が融合したバイオエレクトロニクスでは、生体システムを検知、刺激および制御するために、マイクロエレクトロニクスを活用します。生体システムは、複雑な分子および細胞機構を用いて、イオン電荷(アニオンおよびカチオン)の移動および蓄積によって信号を伝えます。従来のマイクロエレクトロニクスでは、電荷(電子および正孔)の輸送と蓄積により信号を伝えるため、金属、無機半導体および酸化物誘電体を必要とし、信号の伝達に根本的なずれが生じます。こうした従来の半導体や金属に対して有機バイオエレクトロニクス材料には大きな利点があり、生体システムとの次世代インターフェース材料として、より優れた候補とされています1,2。有機材料はイオン信号と電子信号の相互変換において特に有効であり、生物学のイオンの世界と最新のマイクロエレクトロニクスとを効果的につなぎます。さらに、有機材料は溶液処理が可能な場合があり、生物の複雑な曲面に適合した柔軟で屈曲性のあるデバイスを製造し、電子機器と周囲の生体材料との間の機械的不整合を低減することも可能です。ここでは、特に新しい材料と用途を中心にして有機バイオエレクトロニクスの最近の進展について概説します。
共役ポリマー系混合導電体
有機エレクトロニクス材料の研究領域の中に、ほぼポリマー材料からなる混合導電体(イオン性と電子性の双方を示します)の分野が存在し、この導電体はバイオエレクトロニクス用途で特に有力な材料となります。これら共役ポリマー系混合導電体は、正孔および/または電子の輸送(電子伝導)とイオン種の物質輸送(イオン伝導)により、電荷を効率的に輸送することが可能です。これら材料では、電子電荷の輸送はπ共役系ポリマーの主鎖に沿ったホッピングや主鎖間のホッピングを介して起こります。一方、イオン輸送はポリマー鎖間の空孔におけるイオンの挿入および電場による移動または拡散を介して起こり、溶媒でポリマーが膨潤することでイオンが移動しやすくなります。ただし、バイオエレクトロニクス用途の場合、イオンと電子の同時輸送だけでは不十分です。イオン電流が電子電流を誘導し、電子電流がイオン電流を誘導することが可能になるような、強いイオン-電子カップリングこそが必要不可欠です。共役ポリマー系混合導電体では、電気化学ドーピングの酸化還元過程によりこのカップリングが生じ、ポリマー主鎖に沿って移動する電子の電荷をイオン種が安定化します。バイオエレクトロニクスのデバイスでは、このイオン-電子カップリングが、生体イオン信号から電子信号への変換または伝達として現れます。
有機混合導電体は、生体システムと3次元で相互作用する、特に高効率のイオン-電子変換材料であり、2次元界面のみで生体システムと相互作用する従来の金属または半導体材料を超えるものです。(図1A)。ポリマー系混合導電体は、生物媒体からポリマー全体までイオンおよび水分子で満たされてアクセス可能になっているため、3次元の界面が得られます(図1B)。透過性ポリマーは材料-電解質界面にイオン障壁がないため有効界面積が大幅に増加すると同時に、不連続な固体-電解質界面で発生する自然酸化物、ダングリングボンド、腐食、表面の再構築などの多くの問題を回避できます。このことから、混合導電体ポリマーの重要な性能指数の1つが体積比容量(C*)で、これは単位体積あたりのイオン-電子カップリングの大きさの基準です。イオン信号から電子信号への変換強度が、イオン-電子カップリングの大きさに比例するため、体積比容量は非常に重要な量です3。従来のマイクロエレクトロニクス材料では表面積が限られ、体積比容量が小さいのに対して、混合導電体ポリマーはアクセス可能な表面積と体積比容量が大きければ、ポリマーを用いて製造された生体プローブは、静電容量を数桁増加させ、界面インピーダンスを低減できるため、同体積の金属または半導体プローブと比較して信号伝達を大幅に向上することが可能です。
図1バイオエレクトロニクスのさまざまな界面の概略図。A)イオン不透過性電極における2次元の高インピーダンス界面。B)混合導電体電極における3次元の低インピーダンス界面。C)同じ混合導電体を有機電気化学トランジスタ(OECT:organic electrochemical transistor)に組み込んだ場合。
体積の効果以外に、共役ポリマー系混合導電体を有機電気化学トランジスタ(OECT)などの生体記録用デバイスのチャネル材料として使用することが可能です。トランジスタは、半導体が導電(オン)状態と抵抗(オフ)状態との間で変調する電気スイッチです。OECTでは、電気化学ドーピング機構によりイオン電流から電子電流への効率的な伝達が可能になると同時に、共役ポリマーの電気伝導率も変化します。この効果の強さ(体積電荷密度の変化に伴う導電率の変化)は、トランスコンダクタンス(gm)で表されます。生物学的環境と接触しているOECT構造では、トランスコンダクタンスを利用することで、混合導電体膜の電位ではなく電気伝導率を測定することが可能です。適切なバイアスをOECTにかけると、生体信号により誘起される導電率の変化(デバイスのトランスコンダクタンスで測定)を大きくすることが可能になり、効果的に生体信号が増幅されます(図1C)。これにより、1種類の混合導電体材料を用いることで、生物-非生物界面において生体信号の伝達と増幅を高効率で同時に直接行うことが可能になります。
PEDOT:PSSを使用したバイオエレクトロニクス
有機バイオエレクトロニクス研究で圧倒的に最も広く使用されているポリマー系混合導電体がPEDOT:PSSです。PEDOT:PSSは、共役ポリマーのポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と高分子電解質のポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)の複合物で、帯電防止コーティングや有機太陽電池(OPV:organic photovoltaic)の研究で20年以上にわたって広く使用されています。PSSの繰り返し単位の一部が脱プロトン化されており、その結果として負に帯電したスルホン酸基がPEDOT上の正孔を安定化することで、効果的にドーピングした導電性複合材料が得られます。PEDOT:PSSおよびPEDOTを使用したその他のインクは典型的には分散液として調製されます。キャスト成膜した場合、材料の導電率は調製方法や加工添加剤に応じて、10~1,000 S cm-1の範囲になります。薄膜状のPEDOT:PSSは、PEDOTが多い相とPSSが多い相が混合したマイクロスケールの形状を形成します。PSSは水に暴露すると容易に膨潤し、PEDOT:PSS膜内部に効率的なイオン輸送経路ができます。PSSは水との混和性が高いため、再分散を防いで膜の安定性を維持するために架橋剤が必要になる場合が多くなります。PEDOT:PSSが広く使用されているの1つの理由は、すでに市販されているという点が大きいのですが、電解重合や気相重合により合成されたPEDOT系材料もバイオエレクトロニクス用途で効果的に使用されています。
PEDOT系材料はさまざまなデバイスや用途に組み込まれており、ここではそのごく一部を選んで紹介します(図2)。生体信号の測定および記録のため、OECT構造に組み込まれたPEDOT:PSSは高品質の脳波検査(EEG:electroencephalography)4と頭蓋下皮質脳波検査(ECoG:electrocorticography)のコンフォーマルアレイ5の双方で使用されています。PEDOT:PSS製の細胞足場を使用したインピーダンス変化の測定により、細胞の増殖、運動性、または被覆率といった生物学的成長が測定されています6。また、PEDOT系材料は、生物活性の測定に加えて、その制御および刺激が可能です。細胞の基材として使用した場合、PEDOT:トシラートの酸化還元状態を調節することで、上皮幹細胞および神経系幹細胞の接着や密度を制御することができます7,8。OECTの配置によっては、PEDOT:PSSで神経細胞膜を局所的に脱分極して活動電位を発生させることも可能です。さらに、PEDOT:PSSを使用したこれらのOECTは、グリア瘢痕を形成させることなく1か月間にわたってin vivo に設置可能な屈曲性のある剥離パリレン製プローブの上に製造することが可能であり、プローブと周囲の脳組織との機械的な不整合が軽減されるため、OECTの刺激電極としての影響を抑制できます9。
図2PEDOT:PSSの構造と電気的記録および刺激の実施例。ECoGおよびEEGによる生体信号の検知、電流を用いた脱分極による局所的な神経細胞の活動電位の刺激、および酸化還元切替可能な基材を用いた細胞増殖の方向付け。
生体材料を刺激すると、電気信号がイオン信号に変換されます。イオン電流は生物学的環境に存在するイオン種で構成されます。特にイオンまたは神経伝達物質に特異的なチャンネルで神経活性が制御される神経学的用途など、一部の用途では特定のイオン種の電流を誘導することが望ましい場合があります。この用途を踏まえ、PEDOT:PSSを有機エレクトロニクスイオンポンプに使用した例があります10。PSSやポリ(スチレンスルホン酸-co-マレイン酸)(PSSA-co-MA)などの陽イオン交換膜(CEM:cation exchange membrane)を用いて、イオンポンプでカチオンを貯蔵場所から目的の場所へ輸送します(図3A)。イオンポンプの配置はリソグラフィ・パターニングにより決定され、カチオンを送達する場所をマイクロメートルのスケールで指定することが可能です。駆動電位を生成するために、電極材料はカチオン貯蔵場所では被酸化性の供給源となり、送達環境では被還元性の吸収源となり、貯蔵場所に戻るか廃棄される必要があります。
図3有機エレクトロニクスイオンポンプ(OEIP:organic electronic ion pump)による化学物質の放出の概略図。A)PEDOT:PSSを使用したイオンポンプによる抑制性神経伝達物質GABAの局所送達およびB)OEIPによるGABA送達を用いた過興奮状態の脳切片の抑制を示した典型的な応答例11。
PEDOT:PSSの体積比容量はイオンポンプの酸化還元電極材料として最適であり、神経活性を変調するために適切な濃度のイオンを送達することが可能です11。特に、海馬切片におけるてんかん様活性の抑制が報告されています11。PEDOT:PSSは、一般にGABAという略称で知られる抑制性神経伝達物質のλ-アミノ酪酸について、さまざまな方法で誘発したてんかん様活性を抑制するために十分な量を送達することができました(図3B)。この研究では、流体送達に伴う溶媒や浸透圧などのストレス要因がない状況でてんかん様活性を抑制する、分かりやすく一般的な方法として、GABAの直接イオン送達が示されています。さらに、イオンポンプを使用したGABA送達は非常に部位特異的であり、隣接する海馬領域でGABAによる抑制は観測されていません。イオンポンプを使用したGABA送達はin vivo でも実証されており、生きた動物被検体においてイオンポンプによるGABAの皮質および脊髄への局所送達が行われています12,13。これら用途の他にも、PEDOT系材料は人工筋肉(アクチュエーター)14、切替可能な表面15、およびニューロモーフィック(脳型)・コンピューティング・デバイス用の人工シナプスなどのバイオミメティクス(生物模倣)デバイス16の進展に貢献しています。
PEDOT:PSSは市販されており、さらに高い電気伝導率とイオン伝導率を持ち合わせていることから、有機材料のバイオエレクトロニクス分野での応用の拡大につながっています。成功は収めているものの、PEDOT:PSSは、固有の性質により応用が制限されます。まず、PEDOT:PSSはp型材料に限られ、これは電荷の輸送が正孔伝導だけで起こることを意味します。これに対して、n型材料は電子伝導体または両極性材料であり、正孔伝導体と電子伝導体の両方の役割をすることが可能です。さらに、PEDOT:PSSは本来、空乏モードの材料であり、つまり、そのままでは導電状態で、電気化学的に非導電状態に切り替えることが可能であることを意味します。これに対して、蓄積モードまたはエンハンスメントモード(ゲート電圧をかけない時に電流が流れないモード)の材料は、初期状態が非導電状態であり、電気化学的に導電状態に切り替えることが可能です。そのため、PEDOT:PSSはn型および/または蓄積モードの材料を必要とする多数の用途には適した材料ではありません。
PEDOT:PSSを超えるグリコール化された共役ポリマーの開発
PEDOT:PSS固有の限界のため、有機バイオエレクトロニクス分野における性能向上には新しい材料の開発が必要です。個々にイオン伝導性と電子伝導性を示す複数のポリマーをブレンドする方法から考えを変え、最近では電子輸送とイオン輸送の両方の機能を効率的に果たす単一成分材料が注目されています。電気伝導性ポリマーでは、高効率の電荷輸送のために主鎖のπ共役が必要です。したがって、イオン輸送を改善するための合成設計ルートとして、最近ではポリマー側鎖の制御が注目されています。有機エレクトロニクス材料の開発では、アルキル側鎖が共役ポリマーに付加された最初の目的は、共役ポリマーの有機溶媒に対する溶解度を向上し、処理を容易にすることでした。しかし、最終的に側鎖の制御は、ポリマーのマイクロ構造と形態を誘導し、電子的性質を制御する効果的な手段になることから17、この分野の研究が盛んになっています。
現在、イオン伝導性を誘起するための取組みとして報告されている側鎖の制御は、次の2つの経路のいずれかで行われています。より広く研究されている第1の経路は、共役高分子電解質を作製するため、イオンをポリマー骨格に側鎖でつなぎとめる方法です18,19。より最近開発された第2の経路は、共役ポリマーの通常のアルキル側鎖を、CH2-CH2-O構造(グリコール側鎖)の繰り返しからなるオリゴエチレングリコール側鎖で置換する方法です。これらグリコール側鎖は極性のエーテル酸素を含んでおり、固体高分子電解質であるポリエチレングリコールの挙動と同様に、エーテル酸素がイオンと水の双方にすぐに配位します。ここでは、最も有望な成果が最近得られている第2の経路に焦点を合わせて解説します。
バイオエレクトロニクス用途向けグリコール化共役ポリマーには、電界効果トランジスタや太陽電池で利用されている最先端ポリマーと同じ合成手法が使用されています。重合の前にモノマーを極性のグリコール側鎖で修飾した後、共役ポリマーに対して一般に使用されるStilleカップリングや鈴木カップリングなどのC–Cカップリング反応で重合を行います。これらの方法を使用して、真に単一成分のイオン-電子混合導電体であり、一般的な有機溶媒からの溶液処理が可能で、架橋なしでも水溶液中で安定であり、蓄積モード材料として動作し、(主鎖の化学的性質に応じて)p型またはn型での動作を示す、新しい種類のグリコール化共役ポリマーが作製されています。
バイオエレクトロニクス用途に向けたグリコール化共役ポリマーが報告されたのはごく最近ですが、その特性の利点を利用して、デバイスの性能向上やバイオエレクトロニクスの新たな可能性がすでに実現されています。例えば、同等のデバイスにおいて、新規に合成された2種類のグリコール化ポリチオフェンでPEDOT:PSSよりも高いC*およびトランスコンダクタンスgmが得られたことが報告されています3,20。poly(2-(3,3′-bis(2-(2-(2-methoxyethoxy)ethoxy)ethoxy)-[2,2’-bithiophen]-5-yl)thieno[3,2-b]thiophene)(p(g2T-TT))の場合、アルキル側鎖を持つ対応するポリマーを合成して試験を行うことで、ポリマー膜へのイオン輸送の優位性が決定される際の側鎖の役割が明確に示されています21。
PEDOT:PSSの場合と同様に、高性能p(g2T-TT)はp型材料であることが見いだされましたが、PEDOT:PSSとは異なり蓄積モード材料として動作します。これにより、サブスレッショルド(閾値下)領域で動作するOECT生体センサーが初めて実証されています22。真にスイッチとして機能するOECTにおいて、サブスレッショルド領域は、電気化学ポテンシャルによってOFF(高抵抗)状態からON(高導電)状態に切り替わったときに、初期の導電率の指数関数的な増加が起こる領域です。この領域で動作することにより、p(g2T-TT)を使用したOECTを組み込んだ検知回路では、非常に低い消費電力で大きな電圧利得(生体信号伝達)が得られています。埋込み型センサーやデバイスでは低消費電力が要求されるため、これは重要な成果です。注意すべき点として、PEDOT:PSSの導電性をオフに切り替えるために必要な電気化学ポテンシャルが水の安定性の限界(電気化学的窓)を超えるため、PEDOT:PSSを使用したデバイスではサブスレッショルド領域に到達できません。バイオセンシングにおけるサブスレッショルド領域の有効性は、EEG信号の測定により検証されています。OECTを使用したEEGセンサーでは、市販の医療用電極と比較して信号強度が2桁向上することが示されています。p(g2T-TT)を使用したOECTは蓄積モードで動作するため、真にOFF状態にすることが可能です。そのため、個々の検知用OECTが順次ONになり「読取り」が行われるマルチセンサーアレイ用に適しています。低電力のサブスレッショルド領域における動作と組み合わせることで、p(g2T-TT)を使用したOECTは、次世代の低電力で形状適合性のある埋込み型バイオセンシングアレイという興味深い展望を示しています。
グリコール側鎖の使用は、n型共役ポリマー混合導電体の開発につながっています。一般に、安定で高効率なn型電子輸送共役材料はp型と比較してあまり報告されていません。通常、安定なn型での動作は酸素や水分との反応を起こすため、製造や試験をすべて不活性なグローブボックス環境内で行うことが必要になる場合が多くなります。この理由から、n型材料が必要な用途では、カーボンナノチューブ、金属酸化物、またはより新しい2次元材料が使用される場合が多くありあります。そのため、n型共役ポリマー混合導電体の設計により、室温条件の水系電解質中で非常に安定した動作をする材料が得られたことは非常に興味深い結果です。ナフタレンジイミド(NDI)、ビチオフェン(T2)、およびアルコキシビチオフェン(gT2)の繰り返し単位を持つn型ポリマー系混合導電体が最近報告されています23,24。なお、90%のグリコール化NDI単位と10%のアルキル化NDI単位を含む統計共重合体(図4)では、すべてグリコール化されたポリマーと比較して性能が向上することが示されています。上記のp(g2T-TT)の場合と同様に、これらのn型ポリマーも蓄積モード材料として動作します。
n型および蓄積モード挙動を利用して、標的基質が代謝される際の酵素から混合導電体膜への電荷移動を検出するための電気化学的酵素センサー25に90%グリコール化共重合体(P-90)が使用されました。
図4A)p(g2T-TT)を使用したp型蓄積モードOECTのサブスレッショルド領域の傾きを強調した特性曲線および規格化したトランスコンダクタンス22。挿入図はp(g2T-TT)の化学構造式。B)NDIおよび2Tを使用したn型統計共重合体P-90の化学構造式。C)P-90を使用したn型蓄積モードトランジスタの乳酸濃度に依存したドレイン電流(ID)。挿入図:マイクロモル濃度の乳酸感度および乳酸濃度に依存したドレイン電流(導電率)変調の電気化学的酵素機構の概略図25。
このような電荷移動が起こるためには、酵素と同じ電気化学ポテンシャル領域で混合導電体が酸化還元活性を持たなければなりません。正電位で還元が起きる乳酸オキシダーゼの場合、n型のポリマー系混合導電体が必要です。乳酸オキシダーゼが乳酸をピルビン酸に変換するとき、酵素によって高効率で電荷がP-90共重合体へ移動します。続いて、この電荷移動によりP-90の導電率が乳酸濃度に比例して変調されます。OECTとしてセンサーを動作させることで、P-90への酵素電荷移動の局所的な増幅により、マイクロメートルスケールのセンサーで乳酸濃度を1ルットルあたりマイクロモルレベルまで検知することが可能になりました。
結論
有機材料にはイオンおよび電子の混合伝導性があるため、バイオエレクトロニクスの領域において強力なツールとなります。混合伝導により、生体信号の伝達と増幅の双方で大幅な向上が可能になります。このような利点は、PEDOT系材料、特に市販されているPEDOT:PSSを使用して最も広く開拓されています。極性のグリコール側鎖を持つ新規共役ポリマーが最近開発されたことで、PEDOT:PSSから大幅な性能向上が達成されており、電気化学的酵素センシングや低電力電気生理学的測定といった新しい用途が開かれています。共役ポリマー混合導電体、特にグリコール化側鎖を持つ混合導電体の分野はまだ比較的新しいものですが、有機バイオエレクトロニクスの分野を次のレベルに引き上げるような多数の新規材料および用途の開発が進められています。
参考文献
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