微生物死滅曲線

微生物死滅曲線とは何か？

微生物死滅曲線は、哺乳類細胞に対し特定の抗生物質のばく露量を増やしていき、一定時間内にすべての細胞を死滅させられる最少濃度を決定する用量反応実験です。これは重要ステップであり、この後で抗生物質を使って形質未導入細胞を死滅させ、安定した細胞株を作ります。哺乳類細胞株は抗生物質に対する感受性がそれぞれ違うので、細胞株および抗生物質を変える場合は、常に微生物死滅曲線の実験を行うことをお勧めします。

微生物死滅曲線作成のための抗生物質の推奨濃度

下記表は、用量反応実験に採用できる汎用選択抗生物質の濃度範囲を示しています。

表 1 抗生物質の推奨濃度

抗生物質	製品番号	濃度範囲
アクチノマイシンD	A9415	5 – 10 µg/mL
アムホテリシンB	A9528 A2411	0.25 - 2.50 mg/mL
アムホテリシンB溶液	A2942	0.25 - 2.50 mg/mL
ブレオマイシン硫酸塩	B8416 203408-M	10 – 50 µg/mL
カルベニシリン	C3416	100 – 1000 µg/mL
クロラムフェニコール	C3175 C1919	5 – 50 µg/mL
G 418硫酸塩	345810 345812	100 – 800 µg/mL
G 418二硫酸塩	A1720 G1279	100 – 800 µg/mL
G 418二硫酸塩溶液	G8168	100 – 800 µg/mL
G 418溶液	G418-RO	50 -1000 µg/mL
ゲンタマイシン硫酸塩	G1264	50 – 1000 µg/mL
ゲンタマイシン硫酸塩溶液	G1272 G1397 G1522 345815	50 – 1000 µg/mL
ハイグロマイシンB	H3274 H9773 400050	200 – 800 µg/mL
ハイグロマイシンB溶液	10843555001 400052 400053	200 – 800 µg/mL
カナマイシン硫酸塩	K1377 10106801001 420411	100 – 1000 µg/mL
カナマイシン溶液	K0254 K0129	100 – 1000 µg/mL
マイトマイシンC	M4287 M7949 10107409001	10 – 100 µg/mL
ミコフェノール酸	M3536	10 – 100 µg/mL
ネオマイシン三硫酸塩	N6386 N3144	10 – 100 µg/mL
ネオマイシン溶液	N1142 480100	10 – 100 µg/mL
パロモマイシン硫酸塩	P8692 P5057	100 – 1000 µg/mL
ピューロマイシン	P8833	10 – 100 µg/mL
ピューロマイシン溶液	P9620	10 – 100 µg/mL
リファンピシン	R7382	10 – 50 µg/mL

被験細胞株によって用量反応が変わる可能性があります。表中の濃度範囲は参考としてお使いください。死滅曲線実験は、選択抗生物質の初回使用時または新しい細胞株を使用するたびに行わなければなりません。

死滅曲線実験のプロトコル

以下では、細胞死滅曲線を作成する方法を段階的に説明します。

必要な材料：

• 健康状態にある標的細胞株
• 細胞株に対して推奨されている完全培地（培地+血清）
• 対象の抗生物質

ステップ：

• トリプシン処理または丁寧に掻き取ることで健康な接着細胞を集めます。
• 完全培地で細胞懸濁液を希釈し、96ウェルプレートの各ウェルに最終100 μLになるよう播種します。抗生物質処理日の推奨細胞密度は約50%です。
• 抗生物質処理前の24ウェルプレート中の通常細胞密度：
• 0.8 – 2.5 X 10⁵細胞/接着細胞mL
• 2.5 – 4.5 X 10⁵細胞/細胞懸濁液mL
• 37^oCで一晩または全細胞が健康で良好状態になるまでインキュベートします。

注記：細胞が活発に分裂しているとき、抗生物質は最も効果を発揮します。このため用量反応がより正確になるよう、細胞密度の最適化をお勧めします。

図1． 各ウェルの選択抗生物質濃度の例

• 培地を各濃度の選択抗生物質を含む新鮮培地と交換します。96ウェルプレートの図（図1）に示したトリプリケートにおける各濃度を維持します。
• 抗生物質入り培地を48時間ごとに交換します。
• 定期的に光学顕微鏡で細胞を観察しながら、7～10日間培養します。使用した細胞株に応じて、培養期間を14日間まで延長できます。
• 10日目にMTTアッセイまたは高確度細胞カウンターで各ウェル中の細胞生死を判定します。
• 細胞増殖を完全に阻害する抗生物質の濃度を選びます。トランスフェクションの実験はすべてこの濃度で行い、抗生物質添加後も増殖する抵抗性の形質導入細胞を安定した細胞株として選択します（図2）。

図2． 微生物死滅曲線の一例

覚えておくべきポイント

• 適切なコントロールまたはブランクの維持：
  • 細胞は添加せず、抗生物質含有培地のみを添加したウェル
  • 培地および細胞を添加し、抗生物質は添加しないウェル
• 培地が蒸発すると抗生物質濃度が上昇し、示度が不正確になる恐れがあります。予防策として、インキュベーターの動作が正常であることを確認してください。

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