マルチプレックスがんアッセイ:がんバイオマーカー検出による研究の進展
がん研究を進展させるためには、信頼性の高いがんバイオマーカーを検出することが重要です。MILLIPLEX®マルチプレックスがんアッセイが、肺がん、乳がん、がん免疫研究などのさまざまながん研究分野をどのように進展させているかをご覧ください。
マルチプレックスアッセイががん研究を進展させる方法
単一のタンパク質バイオマーカーの検出では、腫瘍と非腫瘍を識別するのに不十分なことが多くあります。マルチプレックスアッセイによる細胞内および血中がんマーカーのマルチプレックス検出は、アッセイの正確性およびロット間の一貫性により、正常なホメオスタシスおよび腫瘍形成プロセスの研究を加速することができます。
ビーズベースのLuminex® xMAP®プラットフォームを用いたMILLIPLEX®がんポートフォリオは、血清、血漿、組織、培養細胞、その他の生体サンプルに対応した幅広いマルチプレックスがんマーカーアッセイを取り揃えています。これらの検証済みのキットやアッセイにより、がん研究分野における特定のタンパク質を測定できます。
広範囲にわたるがんマルチプレックスパネル製品には、がんバイオマーカー、チェックポイントタンパク質、サイトカイン、ケモカイン、成長因子を測定するためのキットが含まれています。これらのパネルから主ながんバイオマーカーをいくつか表1に示します。
がん免疫研究
がん免疫研究において、免疫チェックポイント阻害薬は抗腫瘍免疫応答を改善する有効な方法であることが証明されています。多くの免疫チェックポイントタンパク質は、血中および腫瘍や腫瘍微小環境中で可溶性タンパク質として発現しています。
マルチプレックスアッセイは、免疫チェックポイントタンパク質の共抑制および共刺激の定量的プロファイリングに用いることができます。例えば、可溶性免疫チェックポイントタンパク質のがんバイオマーカーとしての利用を検討するために用いることができます。MILLIPLEX®ヒトがん免疫チェックポイントタンパク質パネル1によるがん免疫マルチプレックスアッセイを用いて、乳がん患者および大腸がん患者の血清サンプル、ならびに対応する健常血清サンプル中のチェックポイントタンパク質を測定しました。
このマルチプレックスアッセイで得られた可溶性チェックポイントタンパク質の解析により、血中のがんバイオマーカーと推定される以下の2つのバイオマーカーが明らかになりました。TIM-3とLAG-3です。乳がん血清サンプルおよび大腸がん血清サンプル中の可溶性TIM-3タンパク質は、健常血清コントロールと比較して有意に増加していました(p<0.001)。ヒト乳がん血清中のLAG-3も、健常コントロールの血清中の発現量と比較して増加していました(データ不掲載)。
さらに、このパネルを用いて、転移性乳がん患者3例および大腸がん患者2例の腫瘍および隣接する健常組織のライセートにおける免疫チェックポイントタンパク質発現プロファイルを解析しました(データ不掲載)。これらの対応するライセートでは、BTLA、CD27、TIM-3、HVEM、CD40、GITR、LAG-3、CTLA-4、CD80/B7-1、PD-L1、ICOSなどの複数のチェックポイントタンパク質の発現に差異が検出され、腫瘍微小環境におけるチェックポイントタンパク質の役割と複雑性が示唆されました。
これらの結果は、マルチプレックスアッセイが免疫チェックポイントタンパク質の同時定量に有用な研究ツールであるとともに、がんバイオマーカーの探索やがん免疫療法のトランスレーショナルリサーチに応用できる可能性があることを示しています。
切除可能な頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)の研究において、ニボルマブとタダラフィル併用/非併用下での末梢血サンプル中のバイオマーカーの相関を調べるために、MILLIPPLEX®アッセイがどのように用いられたかをご覧ください。
肺がん研究
がん免疫療法薬の恩恵を受けてきた研究分野の1つが肺がんです。マルチプレックスにより、肺がんに関連する複数のバイオマーカーを一度に評価し、相関を明らかにし、がんのプロセスをより深く理解することができます。例えば、以下の目的でマルチプレックスがんパネルが使用されています。
- NSCLCにおける血管新生バイオマーカーと早期転移進行の相関
- NSCLCにおけるPD-1/PD-L1パスウェイの理解:免疫療法を受けている患者サンプル中の免疫チェックポイントタンパク質のマルチプレックス測定
ラッシュ大学メディカルセンターの研究者がMILLPLEX®アッセイを用いた研究によりNSCLCの新規検査法をどのように開発しているか、詳細についてはこちらをご覧ください。
乳がん研究
免疫チェックポイントタンパク質やサイトカイン/ケモカインなどの免疫調節因子は、がん治療における疾患/治療バイオマーカーかつ標的薬として、新たな役割を担っています。これらの免疫調節因子のがんにおける役割の理解に役立つように、3つのLuminex®ベースのマルチプレックスイムノアッセイパネルを開発しました。48プレックスのヒトサイトカイン/ケモカインパネル、17プレックスのヒト免疫チェックポイントタンパク質パネル、31プレックスのヒト免疫チェックポイントタンパク質パネルです。マルチプレックスアッセイは、体液または細胞/組織ホモジネート中の主要な免疫調節タンパク質の発現量を同時に定量することにより、乳がんにおけるこれらの免疫調節因子の役割の理解に寄与します。
MILLIPLEX®ヒトがん免疫チェックポイントタンパク質パネル1およびパネル2によるがん免疫マルチプレックスアッセイならびにMILLIPLEX®ヒトサイトカイン/ケモカイン/成長因子パネルAによる免疫マルチプレックスアッセイを用いて、3種類の乳がんサンプル(乳がん患者と健常者の血清サンプル、乳がん腫瘍生検と隣接する健常組織ライセート、確立されたがん細胞株の培養上清)における95の免疫調節因子をプロファイリングしました。このマルチプレックスアッセイで得られた血中免疫タンパク質の解析により、乳がん血清サンプルは、健常コントロール血清と比較して、IL-6、IL-27、M-CSF、MDC、MIG、sCD27、sTIM-3、sCD40、Galectin-3、Galectin-1、FGL-1、BAFFが高く、EGFとsCD40Lが低いことが明らかになりました(図1に一部のアナライトを示す)。
図1.がん免疫マルチプレックスイムノアッセイの使用例。乳がん患者(赤色の乳がんサンプル[BrCa]、n=24)および健常者(青色のコントロールサンプル[Cont]、n=24)の血清中の可溶性免疫チェックポイントタンパク質およびサイトカイン/ケモカインを検出。この図は、これら2群の血清サンプルにおける6種類のがん免疫バイオマーカー(IL-6、MIG、IL-27、TIM3、Gal-1、FGL1)の発現量の差異を示す。すべてのp値は<0.0001。
転移性乳がん患者3例の腫瘍および隣接する健常組織の発現プロファイリングにより、対応するライセートにおいて、IL-6、IL-8、MIG、IL-1RA、IL-18、IP-10、MCP-1、MIP-1β、VEGF-A、BTLA、HVEM、CTLA-4、CD40、TLR-2、Siglec-9、CD25、Granzyme B、APRIL、BAFF、Nectin-2、Nectin-4、E-cadherin、IDO-1などの複数のタンパク質マーカーの発現量に差異があることが明らかになりました。同様の解析を、培養乳がん細胞の培養上清でも実施しました。結果として、Luminex®ベースのプロファイリングにより、血液、組織、細胞株における刺激性および抑制性免疫メディエーターの高感度かつ汎用性の高いマルチプレックス解析が可能になり、乳がん治療のためのバイオマーカーおよび治療ターゲットの発見に役立つ可能性があることが示唆されました。
大腸がん研究
近年、免疫チェックポイントタンパク質をターゲットとすることは、がんおよび免疫関連の有害事象の治療に対する革新となっています。多くのチェックポイント分子は、免疫細胞および/または腫瘍細胞上で、活性化受容体または抑制性受容体として同定されています。また、多くの免疫チェックポイントタンパク質は、血中で可溶性タンパク質としても発現しており、バイオマーカー候補として容易に利用できます。
マルチプレックスアッセイにより、大腸がんに関連する共抑制性および共刺激性の免疫チェックポイントタンパク質の定量的プロファイリングが可能になります。例えば、MILLIPLEX®ヒトがん免疫チェックポイントタンパク質パネル1によるがん免疫マルチプレックスアッセイを用いて、大腸がん(CRC)および敗血症患者におけるバイオマーカー候補としての血清中の免疫チェックポイントタンパク質の可能性を調査しました。CRC患者(n=20)、敗血症患者(n=20)および対応する健常者(n=20)の血清サンプルにおいて、複数のチェックポイントタンパク質の発現量を測定しました。
このマルチプレックスアッセイで得られた可溶性チェックポイントタンパク質の解析により、CRCまたは敗血症患者の血清サンプルでは、健常コントロール血清と比較して、sBTLA、sCD27、sTIM-3、sHVEM、sCD40、sPD-1、sPD-L1、sCD86、sTLR-2の9つの可溶性タンパク質の発現に差異があることが明らかになりました(図2に一部のアナライトを示す)。
図2.MILLIPLEX®ヒトがん免疫チェックポイントタンパク質パネル1は96ウェルプレートで実施。図は、大腸がん(CRC)、敗血症、または健常/コントロールサンプルにおける4つの可溶性バイオマーカー(sCD27、sTIM-3、sHVEM、sTLR2)の発現量の差異を示す。GraphPad Prismを用いてボックスプロットを作成し、Mann-Whitney検定を用いて統計解析を行った。**p<0.01、 ***p<0.001、 ****p<0.0001。
このグラフから、がんのマルチプレックスイムノアッセイが、CRCと敗血症に関連する血中免疫チェックポイントタンパク質の同時定量に有用であることが示されました。
チェックポイントタンパク質マーカー
血中腫瘍マーカー
血管新生
転移
がん自己抗体
研究目的での使用に限定されます。診断目的では使用しないでください。
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