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細胞シグナル伝達マルチプレックスアッセイ:細胞が情報伝達する仕組みを解明

MILLIPLEX®ビーズベースのマルチプレックスアッセイを使用して、細胞シグナル伝達経路の活性化を測定しましょう。Luminex® xMAP®テクノロジーに基づく細胞シグナル伝達リン酸化タンパク質アッセイにより、同一または異なる経路内の複数のリン酸化タンパク質や総タンパク質を単一サンプルからマルチプレックスで測定することができます。これにより、がん、免疫/炎症、毒性などの多くの研究をどのように進めることができるのかをご覧ください。

細胞シグナル伝達経路をマルチプレックス解析することの利点

マルチプレックス解析により、大量のサンプルを必要とする従来のウェスタンブロッティング法、質量分析法、放射性リン酸化アッセイと比較して、細胞内経路に関する疑問を迅速に明らかにすることができます。例えば、Luminex® xMAP®テクノロジーに基づくMILLIPLEX®マルチプレックスアッセイを用いると、時間とサンプルを節約できます。表1に、MILLIPLEX®アッセイとウェスタンブロッティングの比較を示します。

表1.MILLIPLEX®アッセイによるマルチプレックスの利点とウェスタンブロッティングとの比較

MILLIPLEX®細胞内経路マルチプレックスキットおよびパネルは、血中バイオマーカーキットの製造に用いられるのと同じ厳しい性能基準で分析検証され、貴重なサンプルから可能な限りのデータが得られるように最適化されています。細胞シグナル伝達アッセイは、シグナル伝達タンパク質の総タンパク質とリン酸化タンパク質の両方を正確に相対定量し、研究対象のシグナル経路の関わりやクロストークを解明します。

分析検証されたこれらの細胞内経路アッセイキットには、以下が含まれます。

  • アッセイ性能を評価するための刺激・非刺激細胞ライセート
  • 目的のアナライトを捕捉するためのプレミックス磁気ビーズ
  • パネル内で一貫したアナライトプロファイルが得られるように設計された検出抗体カクテル
  • 相対定量的データ(蛍光強度の中央値、MFI)

研究における細胞シグナル伝達マルチプレックスアッセイの使用方法

細胞シグナル伝達マルチプレックスアッセイにより、単一サンプル中のリン酸化タンパク質と総タンパク質のレベルを比較することで、がん炎症、さらには内因性カンナビノイド系などのさまざまなシグナル伝達経路に関する知見が得られます。マルチプレックスキットで解析される細胞内経路の例を以下に示します。

  • Akt/mTOR
  • アポトーシス
  • Bcl-2ファミリー
  • DNA損傷/遺伝毒性
  • MAPK/SAPK
  • NFκB
  • タンパク質翻訳
  • Ras-Rafがんタンパク質
  • Srcファミリー
  • STAT
  • T細胞受容体
  • TGFβ[IZ1]

特に、がんと転移には複雑なシグナル伝達経路が関与しているため、がんの研究において細胞シグナル伝達アッセイは重要です。MILLIPLEX®細胞シグナル伝達マルチプレックスアッセイが、がん研究にどのように使用されているのか、その例を以下に示します。

Bcl-2ファミリーメンバーとタンパク質間相互作用の解析

Bcl-2ファミリーメンバーは、内因性アポトーシス経路において非常に重要な役割を果たします。このファミリーは17以上のメンバーで構成され、これらは機能的にプロアポトーシスサブファミリーと抗アポトーシスサブファミリーに分けることができます。これらのファミリーメンバー間の相互作用は、細胞の運命を決定し、その制御異常は腫瘍の増殖と腫瘍細胞の生存につながる可能性があります。 

Bcl-2ファミリーメンバーを標的とするがん治療の治験薬がいくつか臨床試験中のため、Bcl-2ファミリーメンバーとそれらの相互作用を測定するための堅牢なアッセイに対するニーズが高まっています。既存のアッセイはBcl-2ファミリーメンバーを測定できますが、総タンパク質とタンパク質間相互作用を同時に評価するための信頼性の高いアッセイはありません。この問題を解決するため、Luminex®テクノロジーに基づく2つのマルチプレックスイムノアッセイパネルが開発されました。これにより、Total Bcl-2、Bcl-xL、Mcl-1、BAD、BIM、およびBAXを含むBcl-2ファミリーの複数のコンポーネントと、Mcl-1/BIM、Bcl-xL/BAD、およびNOXA/Mcl-1*(*データ非掲載)などのタンパク質相互作用を、1ウェルで同時に検出できるようになりました。 

MILLIPLEX® Bcl-2ファミリーアポトーシスパネル1およびパネル2を使用して、camptothecin(トポイソメラーゼ阻害剤)、anisomycin(タンパク質翻訳阻害剤)、およびAT101(BH3類似薬)を含む、既知のアポトーシス薬に反応して生じるBcl-2ファミリーメンバーの発現と相互作用の変化を解析しました。camptothecinとanisomycinはそれぞれ、Mcl-1レベルを有意に低下させ、BIMレベルもわずかに低下させました。さらに、Mcl-1/BIM相互作用は、camptothecinとanisomycinの両方により阻害されましたが、これはおそらく両タンパク質のレベルが低下したことが原因と考えられます。 

一方、AT101は、Mcl-1レベルとMcl-1/BIM相互作用のいずれにも有意な影響を及ぼしませんでした。Mcl-1/BIM相互作用に対するこれらの異なる効果とは対照的に、Bcl-xL/BAD相互作用については、3種類のすべての薬剤は同様に作用し、いずれのタンパク質の総レベルにも影響を及ぼすことなく阻害しました。図1および2に、MILLIPLEX® Bcl-2ファミリーアポトーシスパネル1およびパネル2のそれぞれを用いたMCF7細胞株における薬剤用量依存性試験のデータを示します。

MILLIPLEX<sup>®</sup> Bcl-2ファミリーアポトーシスパネル1(カタログ番号48-682MAG)と、さまざまな濃度のcamptothecin、anisomycin、およびAT101を用いた、MCF7細胞株における薬剤用量依存性試験を示すグラフ。Bcl-xL/BAD、pBAD、BAD、MCL-1/BIM、BIM、およびBAXを含むアナライトとタンパク質相互作用を測定した。

図1.MILLIPLEX® Bcl-2ファミリーアポトーシスパネル1を使用して薬剤用量依存性解析を実施。0、1、2、5、10、および20 µM濃度のcamptothecin、anisomycin、およびAT101でMCF7細胞を16時間処理した。MILLIPLEX® Assay Buffer 1で希釈した20 µg総タンパク質の各ライセートをアッセイプロトコルに従って解析した(ライセートは4°Cで一晩インキュベート)。

MILLIPLEX® Bcl-2ファミリーアポトーシスパネル2(カタログ番号48-683MAG)と、さまざまな濃度のcamptothecin、anisomycin、およびAT101を用いた、MCF7細胞株における薬剤用量依存性試験を示すグラフ。Bcl-xL、MCL-1、およびBcl-2を含むアナライトを測定した。

図2.MILLIPLEX® Bcl-2ファミリーアポトーシスパネル2を使用して薬剤用量依存性解析を実施。0、1、2、5、10、および20 µM濃度のcamptothecin、anisomycin、およびAT101でMCF7細胞を16時間処理した。MILLIPLEX®Assay Buffer 1で希釈した20 µg総タンパク質の各ライセートをアッセイプロトコルに従って解析した(ライセートは4°Cで一晩インキュベート)。注記:NOXA/Mcl-1タンパク質相互作用のデータは非掲載。

全体として、これらの結果からアポトーシス誘導剤に対するBcl-2ファミリーの動的応答が示されました。ここで説明した新しいMILLIPLEX®マルチプレックスイムノアッセイは、Bcl-2ファミリーのタンパク質を調節する基本的メカニズムを研究するための強力なツールとなります。

細胞・組織ライセート中の変異Rasがんタンパク質の特異的検出

Rasタンパク質(HRAS、KRAS、およびNRAS)は低分子量GTPaseで、不活性なGDP結合状態と活性なGTP結合状態を繰り返すことによって分子スイッチとして機能します。Ras-GTPは、Rafキナーゼとホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)に結合してMAPK経路などのダウンストリームの経路を活性化し、細胞増殖、生存、成長、および分化を促進します。Rasの発がん性変異は、ヒトがんの約25%に見られます。また、膵臓がんの90%はKRAS変異を有し、KRAS変異の80%はコドン12で生じ、Ras G12VとG12Dで最も多く見られます。 

Ras-Raf-MEK経路も、Rasの下流で活性化される場合があります。BRAFは十分に立証されたがん遺伝子であり、BRAF V600E変異は黒色腫でよく見られます。このBRAFがんタンパク質を標的にする治療の効果はすでに得られていますが、Rasがんタンパク質によるがんの治療は依然として緊急を要するアンメットメディカルニーズとなっています。 

MILLIPLEX® Ras-Raf Oncoprotein Magnetic Bead Panelは、Total Ras、Ras G12V、Ras G12D、phospho-MEK1(S217/S221)、phospho-BRAF(S446)、およびphospho-CRAF(S338)を1ウェルで同時に検出するために開発されました。このマルチプレックスアッセイは、Total Ras、RasG12D、およびRasG12VのH-Ras、N-Ras、およびK-Rasアイソフォームを検出します。変異Rasがんタンパク質を特異的に認識することを確認するために、このキットはCOR-L23細胞株に見られる既知のKRAS G12V変異とTHP-1細胞株に見られるNRAS G12D変異をそれぞれ検出できます(図3)。

MILLIPLEX<sup>®</sup> Ras-Raf Oncoprotein Panel(カタログ番号48-684MAG)を用いた、vemurafenibとdabrafenibによるTHP-1およびCOR-L23細胞の処理を示すグラフ。

図3.THP-1細胞とCOR-L23細胞を2 µMのvemurafenibまたは125 nMのdabrafenibで72時間処理してから細胞を回収し、細胞ライセートをMILLIPLEX® Ras-Raf Oncoprotein Panelで解析した。BRAF変異のないこれらの細胞株では、vemurafenibやdabrafenibの効果は見られなかった。

さらに、BRAF阻害剤であるvemurafenibとdabrafenibに対する反応をBRAF V600E変異を有するMDA-MB-435S細胞と非感受性細胞株間で、マルチプレックスイムノアッセイを用いて比較しました(図4)。

MILLIPLEX<sup>®</sup> Ras-Raf Oncoprotein Panel(カタログ番号48-684MAG)、MILLIPLEX<sup>®</sup> Multi-Pathway Phosphoprotein Panel(カタログ番号48-680MAG)、およびMILLIPLEX<sup>®</sup> Akt/mTOR Phosphoprotein Panel(カタログ番号48-611MAG)を用いた、vemurafenibおよびdabrafenibによるMDA-MB-435S細胞の処理の結果を示すグラフ。

図4.BRAF V600E変異を有するMDA-MB-435S細胞を2 µMのvemurafenibまたは125 nMのdabrafenibで72時間処理した。細胞を回収してから、MILLIPLEX®Multi-PathwayAkt/mTOR(Phosphoprotein)、およびRas-Raf Oncoprotein Panelを用いてライセートを解析した。

さらに、KRAS G12D変異を有する大腸がん患者由来の腫瘍および隣接組織を使用して、市販の組織ライセートを解析しました。最後に、膵臓がん血清からエクソソームを濃縮し、Ras-Raf Oncoprotein Panelを用いてテストしました(データ非掲載)。このデータにより、細胞、組織、およびエクソソームライセートを含む複数のサンプルタイプにおいて、MILLIPLEX®マルチプレックスイムノアッセイでRasがんタンパク質の影響を研究する有用性が示されました。

MILLIPLEX®細胞シグナル伝達アッセイを使用する際のヒント

MILLIPLEX®シングルプレックスおよびマルチプレックス細胞シグナル伝達アッセイを使用する際のヒントとコツを以下に示します。

細胞シグナル伝達MAPmate®(シングルプレックス)アッセイの使用

  • MAPmate®アッセイを既存のMILLIPLEX®細胞シグナル伝達パネルにコントロールとして追加し、プロトコルに示されているガイドラインの範囲でパネルを強化します。 
  • 追加のバッファーが必要な場合は、Cell Signaling Buffer & Detection Kitを購入できます。 
    • 使いやすいように平底プレートが同梱されています。

細胞シグナル伝達MAPmate®(プレックス)アッセイ

  • MAPmate®アッセイを既存の細胞シグナル伝達キットに追加し、コントロールとして使用することができます。 
    • キットプロトコルに示されているガイドラインを参照してください。 
  • GAPDHおよびβ-Tubulin MAPmate®アッセイは、いずれかのMAPmate®アッセイでコントロールとして使用できます。

96ウェルプレートでの細胞シグナル伝達アッセイに用いる細胞ライセートの調製

  • 接着細胞株の場合:~40,000細胞/ウェルを播種して48時間培養します。 
  • 浮遊細胞株の場合:~250,000細胞/ウェルを播種して目的の時間で回収します。 
  • 細胞溶解の場合:ウェルあたり30 µLの溶解バッファーを添加し、あまり泡を立てないように十分にピペッティングします。詳細なプロトコルについては、テクニカルサポートまでお問い合わせください。 
    • 溶解していない細胞/組織は、ろ過または遠心分離により除去できます。 
  • 溶解バッファーは、Cell Signaling Buffer & Detection Kitに含まれていますが、別売りもあります。 
  • プロテアーゼ阻害剤(Protease Inhibitor Cocktail IAEBSFなど)および/またはホスファターゼ阻害剤を「自家製」の溶解バッファーに添加します。 
  • すべての希釈を溶解バッファーで行います(Assay Bufferやリン酸緩衝生理食塩水(PBS)は使用しません)。

関連製品

お客様の多様な研究ニーズに応えるために、3種類のキットフォーマットのMILLIPLEX®細胞シグナル伝達アッセイを提供しています。

Cell Signaling Phosphoprotein and Total Multiplex Premixed Assays

  • 単一サンプルで経路内または経路間の複数のリン酸化タンパク質または総タンパク質を測定
  • マルチプレックスシグナル伝達アッセイキットで相対定量的データを取得
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Cell Signaling Phosphoprotein + Total 2-Plex Assays

  • サンプル中のリン酸化タンパク質と総タンパク質のレベルを同一ウェル内で測定することにより直接比較
  • 他のphospho/total 2-plex assaysと組み合わせて、複数のタンパク質のリン酸化とトータルの発現を同時に解析
  • マルチプレックスシグナル伝達アッセイキットで相対定量的データを取得
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シングルプレックスMAPmate® Loading Controlキット・試薬キット

  • MAPmate®アナライトは、既存のMILLIPLEX®細胞シグナル伝達パネルとともにローディングコントロールとして使用できるハウスキーピングタンパク質
     例外:panTyr検出を含むキット(MILLIPLEX® RTK Phosphoprotein Magnetic Bead PanelおよびMILLIPLEX®T-Cell Receptor Signaling Magnetic Bead 7-Plex Kitなど)は、これらのローディングコントロールとの使用不可
  • MAPmate®キットはシングルプレックスアッセイ
  • 各ローディングコントロールMAPmate®アッセイには、キャプチャ抗体(ビーズ結合)と検出抗体(ビオチン結合)が含まれる
  • 追加のバッファーが必要な場合は、Cell Signaling Buffer and Detection Kitを購入可能
    – これにはMILLIPLEX®溶解バッファーAssay Buffer、ストレプトアビジン-フィコエリトリン、Amplification Buffer、非刺激HeLa細胞ライセート、および96ウェルプレート(2個のシーラー付き)が含まれる

 

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注記:各パネルのアナライト、リン酸化部位、および動物種反応性を確認するには、Analyte Quarterlyカタログをダウンロードしてください。カスタマイズが可能なMILLIPLEX® RTK Phosphoprotein Magnetic Bead Panel以外のキットは、カスタマイズできません。

研究目的での使用に限定されます。診断目的では使用しないでください。

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