ポリジオキサノンおよびその共重合体:生物医学研究における利点および用途
Rao S. Bezwada, Ph.D., Neeti Srivastava, Ph.D.
R&D Quality Assurance Bezwada Biomedical LLC
ポリ(p-ジオキサノン)の特性および用途
ポリ(p-ジオキサノン)(PDSもしくはPDO)は、p-ジオキサノンの開環重合によって調製されるポリマーです(図1)。PDSは、縫合糸、メッシュ、ステープル、クリップ、埋込み型整形外科用デバイス、薬物送達などの多様な用途で使用されています。
図1p-ジオキサノンからのPDSの合成
ポリジオキサノンの融点(Tm = 110~115℃)およびガラス転移温度(Tg = -10℃)は低く、結晶化度は約55%です。また、他の生分解性ポリマーと比較して、in vivo での吸収性、低毒性1,2、柔軟性、屈曲性に特長があります。Tgが低く、結晶化が可能であること、生分解性である点から、ポリジオキサノンは生物医学用途や医療機器の最適な材料であり、エチコンPDS™モノフィラメント縫合糸などに使用されています。ポリジオキサノンホモポリマーで構成されるその他の市販製品の例を以下に示します(表1)。
PDSホモポリマーから製造された医療用製品を埋込みやin vivo で使用した場合、通常は6~9か月以内に吸収されます。そのため、PDSは治癒の遅い創傷に対して適した材料になります。
ポリジオキサノンホモポリマーの欠点
ポリジオキサノンには物理的な利点があるものの、モノマーとポリマー間の平衡がモノマーに傾いているため、他の生体吸収性合成ポリエステルよりも熱的に不安定です。この平衡を移動させるために、他の吸収性材料と比較して合成と処理のプロセスを変更する必要があります。解重合を防ぐため、可能な限り低温でPDSを処理しなければなりません。また、固相重合による合成の間、反応温度は、形成するポリマーの融点より低く抑え、かつ未反応の残留モノマーを真空下で揮発除去する際もポリマーの融点より低い温度で行う必要があります。さらに、吸収時間が比較的長く、光および熱に対する安定性が限定的であるため、吸収性医療デバイスにおけるPDSホモポリマーの使用はかなり制限されます。モノマーとしてのp-ジオキサノンの有用性を拡大するため、p-ジオキサノンとグリコリドまたはL-ラクチドのセグメント化共重合体が開発されています。
セグメント化p-ジオキサノン:グリコリド共重合体
p-ジオキサノンとグリコリドのセグメント化共重合体(図2)は、ポリグリコリドの早い吸収特性とPDSの屈曲性を兼ね備えており、特定の生物医学用途に適したより理想的な特性を持つポリマーです4。
図2ポリ(p-ジオキサノン-co-グリコリド)の構造
通常、縫合糸の特性は、組成、縫合糸の構造、吸収時間、破壊強度保持率(BSR:breaking strength retention)で評価されます。in vivo で測定する場合、破壊強度保持率はin vivo での伸長下で材料の重大な破損が起こらない時間の目安となります3。この測定法は縫合糸材料に特有のものですが、用途に関わらず、in vivo での材料の一般的な寿命や安定性をその結果から推定することができます。通常、PDSの吸収時間は6~9か月で、BSRプロファイルは約6~8週間です。グリコリドをコモノマーとして添加すると(最大15 mol%)、吸収時間は3~4か月、BSRプロファイルは3~4週間に短縮されます(図3および図4)。
図3p-ジオキサノン:グリコリド共重合体のin vivo での吸収に対するモノマー組成の効果
図4p-ジオキサノン:グリコリド共重合体のin vivo での破壊強度保持率に対するモノマー組成の効果
さらに、ポリジオキサノンホモポリマーと比較して、引張特性、結晶化度、熱的特性には最小限の影響しかみられませんでした(表2)。
これら共重合体は、機械的性質、早い吸収、非常に優れた柔軟性を併せ持つため、多様な生物医学用途で有用な材料となります。
セグメント化p-ジオキサノン:L-ラクチド共重合体
p-ジオキサノンとL-ラクチドのセグメント化共重合体(図5)はPDSホモポリマーと比較して柔軟性に優れ、取扱いはε-カプロラクトン:グリコリド共重合体に類似しています5。各繰り返し単位中のメチル基によるL-ラクチドのより高い疎水性から、in vivo での吸収速度はポリジオキサノンホモポリマーと同程度になります。さらに、最大15 mol%のL-ラクチドを添加しても、引張特性、結晶化度、熱特性には最小限の影響しかみられませんでした。
図5ポリ(p-ジオキサノン-co-ラクチド)の構造
結論
グリコリドまたはラクチドをコモノマーとして添加することで、in vivo で幅広い吸収性および柔軟性を示すポリマーの開発が可能です。モノマーの比率と種類を制御することで、特定の用途に必要な特性を持つ共重合体を合成することができます。例えば、破壊強度保持率はp-ジオキサノンとグリコリドの比率を変えることで制御され、p-ジオキサノンとL-ラクチドの比率によってその取扱性を変化させることができます。このように、p-ジオキサノンコモノマーとその比率を適切に選択することで、望ましいin vivo での吸収性および必要な屈曲性を持つ共重合体が得られることでしょう。
参考文献
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