Bin Wu, Theresa Logan
Phosphorex, Inc., Hopkinton, MA USA
Polymeric Drug Delivery Techniques(ドラッグデリバリーにおける高分子科学の手法), 2015, p.8
はじめに
コロイドキャリアは、ドラッグデリバリーを促進するナノメートル~マイクロメートルサイズの粒子またはベシクルです。一般的なコロイドキャリアシステムとして、リポソーム、ポリマーマイクロスフィア、ポリマーナノ粒子、ナノ結晶、マイクロエマルションなどがあります。コロイドキャリアを使用して、担持した医薬品原薬(API:active pharmaceutical ingredient)を標的部位へ輸送して体内分布を変えることで、治療指数を向上させることができます。さらに、コロイドキャリアは、薬物分子の薬物動態を変え、有効性を向上させ、毒性を低減し、制御された持続的な放出を可能にします。
ポリマーマイクロスフィア
ポリマーマイクロスフィア薬物キャリアは、投与前および投与後に不安定である薬物を保護することができる、サイズ範囲が数マイクロメートル~数百マイクロメートルの球状粒子です。マイクロスフィアには、長時間にわたって持続的に薬物を放出する能力があり1、その結果、治療効果が延長し投与回数を減らすことができます。放出の制御に加えて、マイクロスフィアによって強力な薬物の送達を標的化し、低濃度で用いることも可能になり、全身のばく露および有害な副作用を抑制します。さらには、ポリマーマイクロスフィアにより、薬物のin vivoの挙動、薬物動態プロファイル、組織分布、細胞相互作用の調節が容易になります2。
典型的なマイクロスフィアは、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA:poly(lactide-co-glycolide))、ポリ乳酸(PLA:polylactide)、ポリカプロラクトン(PCL:polycaprolactone)などの生分解性ポリマーで構成されます。これらのポリマーは、in vivoでエステル主鎖の加水分解により非毒性の生成物に分解され、腎臓によって排出されるか、生化学的経路を通してCO2および水として除去されます。PLGAマイクロスフィアは、薬物分子のカプセル化に広く用いられており、長時間作用型の徐放性製剤に使用されています。薬物を担持した複数のPLGAマイクロスフィアが、臨床用として米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け市販されています。例えば、前立腺がんおよび子宮内膜症の治療に用いられるリュープロリド酢酸塩マイクロスフィアのようなデポ製品は、1か月、3か月または6か月間隔の皮下投与が可能です。薬物を担持したPLGAマイクロスフィアが投与されると、in vivoでPLGAポリマーの分解がはじまり、それに伴い薬物分子がマイクロスフィアから徐々に放出されます。この薬物の放出速度は、PLGAポリマーの種類の選択と、カプセル化処理の調節によって変えることができます。例えば、以下のパラメーターが薬物の放出プロファイルに影響を及ぼします。
- PLGAポリマーのラクチド対グリコリドの比率(L/G比)。例えばL/G比が50:50の場合に薬物放出が最も速くなります。
- PLGAポリマーの分子量または固有粘度。分子量が大きいほど薬物放出が遅くなります。
- PLGAポリマーの末端基。カルボキシ末端型PLGAポリマーは、エステル基末端型のものよりも薬物放出が速くなります。
図1APIを担持したPLGAマイクロスフィアの画像。
ポリマーナノ粒子
単独または薬物を担持したポリマーナノ粒子(NP:nanoparticle)は、通常1マイクロメートル未満のサイズです。API担持ポリマーナノ粒子の静脈内投与は、薬物の放出の制御と部位特異的な放出に向けて有望視されている方法です。ナノ粒子送達システムは、血流中で治療上適切な濃度を維持したり(制御された放出)、特定の種類の細胞(骨髄、血液細胞など)を標的にしたりするように設計することが可能です。低分子薬物や生体化合物などの多様なAPIを、マイクロカプセル化または表面修飾によりPLGAポリマーナノ粒子に組み込むことが可能です。ナノカプセル化により、APIは早期に分解せず、細胞への侵入が促進され、溶解度およびバイオアベイラビリティが改善されます。PLGAマイクロ・ナノ粒子の表面修飾方法については、「Degradex® PLGAマイクロスフェアおよびナノ粒子」をご覧ください。
静脈注射される粒子の表面特性は、in vivoの臓器分布および生体内運命を決定する重要な要素です。さらに、表面修飾は、特定の組織を標的にするために有効な方法です。ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)によるナノ粒子の表面修飾により、薬物を担持したナノ粒子のin vivoの循環寿命を延長することができます。ナノ粒子のPEG化(PEGylation)は、ナノ粒子の作製プロセスにおいて、PEG鎖を含有するコポリマーを添加することで達成されます。例えば、ラクチドとグリコリドの共重合の際にエチレングリコールモノマーを添加することで、PEG化したPLGAポリマーが得られます。PEG化により、ナノ粒子の親水性を向上させて、分解速度および結晶化を改善することが可能です3。生体適合性に加えて、PEGには免疫系に認識されにくいという特徴があります。ナノ粒子表面のPEGユニットは、オプソニンとナノ粒子の結合を阻止して単球およびマクロファージによるナノ粒子の認識を妨げることで、体内の循環時間を延長します4。状況によっては、ナノ粒子をPEGで被覆した場合、被覆されていないナノ粒子と比較して40倍長く循環することが示されています5。PEG化ナノ粒子の他の利点として、親水性薬物の担持量の増加、初期バーストの低減、バイオアベイラビリティの改善などがあります6。PEG化ナノ粒子は、ワクチンやタンパク質APIのキャリアとして使用されており、制御された持続的な放出とドラッグデリバリーシステムの標的化の両面において特に有効です。現在、バイオメディカル用途においてPEGを利用した35製品以上が米国FDAの承認を受けています4。
また、ナノ粒子は血液脳関門(BBB:blood brain barrier)の通過を促進することも可能です。ポリソルベート80やポロキサマー188のような界面活性剤は、ポリブチルシアノアクリレートナノ粒子や固体脂質ナノ粒子にカプセル化された薬物分子のBBB通過を促進することが示されています7。
一部のナノ粒子製剤では、APIは粒子内部にカプセル化されるのではなく、表面に結合しています。例えば、眼部用ペプチド(POD:peptide for ocular delivery)とヒト免疫不全ウイルストランス活性化因子をPLGAナノ粒子の表面に結合することで、眼用薬物のバイオアベイラビリティが向上することが明らかになっています8。結合は、PLGA分子の末端官能基(末端COOHなど)を、ペプチド、APIまたはタンパク質上の反応基(アミノ基など)と反応させることで行われます。最後に、PLGAナノ粒子自体に特定の疾患に対する治療効果がある場合があります2。
マイクロゲルおよびナノゲル
マイクロゲルおよびナノゲルを含むヒドロゲル粒子は、コロイド状ゲルを形成する親水性ポリマー鎖の架橋ネットワークから構成されています。ヒドロゲル粒子は、天然または合成のポリマーネットワークで構成され、吸水性が高く、水を90%以上含有することが可能です。ポリマー鎖間の架橋は化学的または物理的に誘起され、これらのネットワークが水に溶解するのを防ぎます11。拡散、ヒドロゲルマトリックスの膨潤、または薬物ないしはマトリックスの化学的な反応性によって、担持されているAPIがヒドロゲル粒子から放出される場合があります。マイクロゲルおよびナノゲルの物理的特性(膨潤、浸透、機械的強度、表面特性)は、構造を変えることで最適化できます11。また、多くのヒドロゲル粒子は環境応答性があり、pH、温度、または代謝物濃度の変化に応答しえるため、これらの刺激に応答して充填されたAPIを放出させることで薬物放出が制御されます。
マイクロゲルおよびナノゲルは、従来から用いられているPLGAとPCLで構成される生分解性ポリマー粒子ではカプセル化が困難な水溶性の低分子APIをカプセル化できるため、ドラッグデリバリーにおいて独自の地位を占めています。その結果、これらのゲルは水溶性の薬物またはタンパク質を持続的に放出させるために特に適しています。ヒドロゲル粒子の他の利点として、薬物担持量、活性、生体適合性、生分解性に優れていることなどが挙げられます。さらに、コロイド状ゲルの作製に有機溶媒が不要であり、毒性のリスクとタンパク質変性の可能性を排除することができます。
ヒドロゲルナノ粒子の調製のため、キトサンやアルギン酸などの天然ポリマーが広く研究されています。また、ポリビニルアルコール(PVA:poly(vinyl alcohol))、PEG、ポリエチレンイミン(PEI:poly(ethyleneimine))、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドなどの合成ポリマーに基づくヒドロゲルナノ粒子も、ドラッグデリバリーに用いられています。ヒドロゲルシステムは、経口、経皮、経鼻、直腸、眼部のドラッグデリバリーなど、さまざまな用途に使用されています。ヒドロゲル膜は、所定の制御された速度による経皮のドラッグデリバリーを促進します。この際、初回通過効果を回避するという利点があります12。さらに、ヒドロゲルによる送達システムは、薬物と角膜の接触時間を延長することで、点眼薬のバイオアベイラビリティを増加させることができます13。
ヒドロゲルマイクロスフィアのもう1つの用途が塞栓療法です。通常、栄養動脈への血液供給を遮断することで、固形腫瘍の増殖を防ぐために使用されます。例えば、経動脈的な化学的塞栓形成の用途では、抗がん剤を担持した粒子をがん性腫瘍の栄養動脈に注入し、腫瘍への血液供給を遮断することに加えて、高濃度の抗がん剤を腫瘍内部で放出します14。
【実験方法】コロイドキャリアの作製
コロイドキャリアは、さまざまな方法で作製することができます。合成法は、カプセル化する薬物の種類および性質に加えて、最終製剤の望ましい粒子サイズ、送達経路、放出特性に基づいて選択しなければなりません。
ナノ沈殿
ナノ沈殿は、ポリマーナノ粒子を調製する簡便かつ低エネルギーの方法で、溶媒と非溶媒の置換による界面における析出に基づいています。ナノ沈殿には、溶媒と希薄ポリマー溶液の混和性が必要です13。ドラッグデリバリーへの応用において、ポリ乳酸、PLGA、ポリカプロラクトンのナノ粒子の小スケールでの調製にナノ沈殿は頻繁に使用されており、得られる粒子は疎水性のAPIに適しています。
典型的なナノ沈殿プロセスでは、PLGAなどのポリマー(および必要な場合は疎水性薬物)を、水と混和するアセトンなどの溶媒に溶解します。このポリマー(および薬物)の溶液を、連続的に撹拌されている水溶液に滴下します。形成するナノ粒子を安定化するため、界面活性剤またはポリマー安定剤を添加することができます。一般的に使用されている界面活性剤および安定剤として、TWEEN® 20、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:sodium dodecyl sulfate)、PVA、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:hydroxypropyl methylcellulose)、 Pluronic® F-68などがあります。有機溶媒は、蒸発させる、または繰り返し洗浄して除去します。界面活性剤および組み込まれなかったAPIを除去するため、更に洗浄を行う場合があります。精製されたナノ粒子は、凍結乾燥して保存することができます。
一段階のナノ沈殿を用いて約200 nmのPLGAナノ粒子を調製するための典型的なプロトコールを以下に示します。
- L/G比50:50、COOH末端、固有粘度0.55~0.75 dL/gのPLGAポリマー(PLGAポリマーは類縁体でも可、719900など)をアセトンに溶解します。
- 適量のポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol、分子量85,000~124,000、加水分解率87~89%、363081)を脱イオン水に溶解し、PVA溶液を調製します。典型的な濃度は1%です。
- 撹拌子を入れた500 mLビーカーに手順2で調製した1%PVA溶液の100 mLを移します。PVA溶液を400 rpmで撹拌します。
- 使い捨てピペットを使用して、撹拌しているPVA溶液に10 mLのPLGA溶液をゆっくり滴下します。添加されたPLGA溶液が、水溶液に触れるとナノ粒子が形成されます。
- PLGA溶液をすべてPVA溶液に添加した後、ドラフト内で3時間撹拌を継続し、アセトンを蒸発させます。
- 冷却遠心を用いてナノ粒子を3回洗浄した後、凍結乾燥します。
- 凍結乾燥したPLGAナノ粒子は、–20℃の乾燥状態で保存します。
乳化法
乳化法によって、単独または薬物を担持したポリマーマイクロスフィアおよびナノ粒子を調製可能です。担持する薬物の種類に応じて、シングルエマルションもしくはダブルエマルションのいずれかを用いることできます。
シングルエマルション
シングルエマルションでは、ポリマー(PLGA、PCLなど)を、水と混和しない溶媒に溶解します。カプセル化する薬物としては、疎水性および溶媒に可溶なものが適しています。疎水性薬物を、ポリマーと同じ溶液に溶解します。ポリマーおよび薬物の溶液を、界面活性剤またはポリマー安定剤(前述)を含有する水溶液中で乳化します。乳化を十分に行うには、超音波処理、マグネチックスターラーもしくは機械的な撹拌、ローターおよびステーター、高圧ホモジナイザー、またはマイクロフルイダイザーを用います。水中油滴型エマルションが形成された後、溶媒を蒸発または抽出して除去します。粒子を洗浄して、界面活性剤や、存在し得る組み込まれなかった薬物分子を除去することが可能であり、その後、凍結乾燥します。
また、シングルエマルション法は、溶解度が低い化合物のナノ結晶の調製にも用いることができます。例えば、アルブミンが結合したパクリタキセルのナノ粒子の調製にシングルエマルション法が用いられています14-16。
シングルエマルション法を用いてPLGAナノ粒子を調製するための典型的なプロトコールを以下に示します。
- L/G比50:50、COOH末端、固有粘度0.55~0.75 dL/gのPLGAポリマー(PLGAポリマーは類縁体でも可、719900など)を塩化メチレンに溶解し、5%PLGA溶液を調製します。
- ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol、分子量85,000~124,000、加水分解率87~89%、363081)の1%脱イオン水溶液を調製します。
- 500 mLのビーカー内で、手順1で調製した5%PLGA溶液5 mLと、手順2で調製した1%PVA溶液100 mLを混合します。
- IKA Ultra Turrax高速ホモジナイザーを使用して、18,000 rpmで2分間、PLGAとPVAの混合溶液をホモジナイズします。
- 得られたエマルションを、ドラフト内に設置したスターラー上で3時間、400 rpmで撹拌し、塩化メチレンを蒸発させます。
- 冷却遠心を用いてナノ粒子を3回洗浄し、凍結乾燥します。
- 凍結乾燥したPLGAナノ粒子は、–20℃の乾燥状態で保存します。
ダブルエマルション
親水性APIをカプセル化する場合、ポリマーマイクロスフィアおよびナノ粒子を調製するためにはダブルエマルション法が必要になります。ダブルエマルションは主に水中油中水型ですが、逆ダブルエマルション、または油中水中油型の場合もあります。典型的なダブルエマルション法では、親水性APIを水系溶媒に溶解しポリマー溶液中で乳化することで、第1のエマルションを調整します。適切な界面活性剤またはポリマー安定剤を含有する水溶液中で第1のエマルションを再度乳化することで、第2のエマルション、またはダブルエマルションが形成します。その後、蒸発または抽出処理により溶媒を除去します。シングルエマルション法に使用する装置をダブルエマルション形成に使用することができます。
ダブルエマルション法では、薬物が疎水性のポリマー溶液から水性の界面活性剤溶液へ移動して分配されるため、大量の親水性APIを担持させることは困難です。タンパク質や抗体などの高分子薬物はすべて、ダブルエマルションを用いてポリマーマイクロスフィアおよびナノ粒子にカプセル化されています。 ただし、形成の際にタンパク質の凝集や変性が起こる可能性があります。これは、マイクロカプセル化プロセスにおいて、タンパク質は、凝集や変性の原因となるキャビテーション、熱、溶媒、および高せん断力に常に晒されるためです17,18-20。タンパク質薬物をマイクロスフィアおよびナノ粒子にカプセル化する他の方法も研究されており、これらについては参考文献を御覧ください19-29。
ダブルエマルション法を用いてAPI担持PLGAナノ粒子を調製するための典型的なプロトコールを以下に示します。
- ウシ血清アルブミン(BSA:bovine serum albumin、凍結乾燥粉末)を脱イオン水に溶解して、1%BSA溶液を調製します。
- L/G比50:50、COOH末端、固有粘度0.55~0.75 dL/gのPLGAポリマー(PLGAポリマーは類縁体でも可、719900など)を塩化メチレンに溶解し、5%PLGA溶液を調製します。PVA(分子量85,000~124,000、87~89%加水分解、363081)の1%脱イオン水溶液を調製します。
- 15 mLのガラスバイアル中で、手順1で調製したBSA溶液の0.5 mLと、手順2で調製した5% PLGA溶液の5 mLを混合します。
- IKA Ultra Turrax高速ホモジナイザーを使用して、20,000 rpmで25秒間、PLGAとBSAの溶液をホモジナイズします。
- 500 mLビーカー中で、得られたエマルションと、手順3で調製した1%PVA溶液の100 mLを混合します。
- IKA Ultra Turrax高速ホモジナイザーを使用して、8,000 rpmで2分間、第1のエマルションとPVAの混合溶液をホモジナイズします。
- 得られたダブルエマルションを、ドラフト内に設置したスターラー上で3時間、400 rpmで撹拌し、塩化メチレンを蒸発させます。
- 冷却遠心を用いてナノ粒子を3回洗浄した後、ナノ粒子を凍結乾燥します。
- 凍結乾燥したBSA-PLGAナノ粒子は、–20℃の乾燥状態で保存します。
スプレードライ
スプレードライ(噴霧乾燥)では、フィード(APIとマトリックス材料を含有する溶液、エマルションまたは懸濁液)を高温の窒素中に噴霧することで、急速な乾燥と粒子の形成を行います。その後、サイクロンやフィルターバッグ内で粒子を分離します。
スプレードライは、溶解度の制限を克服して固体分散体を調合する方法として、製薬業界で広く用いられており、結晶性APIをポリマーマイクロスフィアにカプセル化することが可能です。例えば、胃の過酷な条件から薬物を保護したり、吸収が最大となる部位への送達を促進したりするために、腸溶性ポリマーを使用することができます。また、味のマスキングや、光または水分などの物理的環境からの薬物の保護のために、同様の方法を用いることもできます。通常、薬物を担持したこれらの粒子はマイクロメートル~ミリメートルの範囲ですが、マイクロメートル未満またはナノメートルサイズの粒子もスプレードライ法で作製することができます。
水溶性が低い化合物の経口バイオアベイラビリティを向上させるだけでなく、スプレードライは、粒子のサイズや形状など、細粒分(FPF:Fine Particle Fraction)および肺への沈着に直接影響する要因を制御することもできます。また、再現性があり、制御可能で、大スケール化可能な製造プロセスです。スプレードライは、生体化合物のように、摩耗やせん断を避ける必要のある場合に適した方法です。吸入インスリン製剤のAffrezza(MannKind)とExubera(Pfizer)は、スプレードライ法で製造されています。
キトサンマイクロスフィアを調製するための典型的なスプレードライ法のプロトコールを以下に示します。この方法では、0.7 mm標準ノズルをつけたMini Spray Dryer B-290(BUCHI Corporation、米国デラウェア州ニューキャッスル)を用います。
- 500 mLの三角フラスコ内で、適量のキトサン(中程度の分子量、448877)を1.0% v/v酢酸溶液に溶解し、2.5%(w/v)キトサン溶液を調製します。
- 運転方法として吸引モードを用います。圧縮空気の流速を600 L/h、入口温度を160℃、試料の流速を700 mL/hに設定します。
- 運転を開始します。キトサン溶液がスプレードライ器に供給され、圧縮空気の力によって微細化され、加熱された空気によって乾燥チャンバーへ送られます。
- 乾燥したマイクロスフィアを回収します。平均滞留時間は1~1.5秒です。
掲載誌
「ドラッグデリバリーにおける高分子科学の手法 Polymeric Drug Delivery Techniques」
まとめてご覧になりたい方のためにPDFをご用意しています。
関連製品
蛍光PLGAマイクロ・ナノ粒子(緑)
蛍光PLGAマイクロ・ナノ粒子(オレンジ)
蛍光PLGAマイクロ・ナノ粒子(赤)
蛍光PLGAマイクロ・ナノ粒子(近赤外)
PLGAマイクロ・ナノ粒子(色素不含)
PCLマイクロ・ナノ粒子(色素不含)
ドラッグデリバリー製剤キット「NanoFabTx™」→詳細
参考文献
続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。
アカウントをお持ちではありませんか?