Duolink® PLA Multicolor検出プロトコル
このプロトコルはDuolink®PLA Multicolor試薬を使用して、一つの組織または細胞のサンプルでタンパク質、タンパク質修飾、もしくはタンパク質間相互作用を最大4つ同時に検出、視覚化そして定量するための手法です。
材料と装置
Duolink®PLA試薬
Duolink®PLA Multicolor実験をするためには、以下のDuolink® PLA Multicolor製品が必要です:
- 2~4つのDuolink®PLA Multicolor Probemakerキット(赤・緑・オレンジ・遠赤から選択)。キットには以下を含みます:
- Duolink® PLA Multicolorオリゴヌクレオチド - 凍結乾燥され、一次抗体を標識するために活性化されたオリゴヌクレオチドのバイアル2本。
赤のオリゴヌクレオチド AとオリゴヌクレオチドB、
緑のオリゴヌクレオチドCとオリゴヌクレオチドD、
オレンジのオリゴヌクレオチドFとオリゴヌクレオチドG、または
遠赤のオリゴヌクレオチドHとオリゴヌクレオチドI - 標識用バッファー -標識反応用
- 停止液- 標識反応停止用
- 保存液- オリゴヌクレオチド標識済み抗体(PLAプローブ)保存用
注:すべてのコンポーネントは-20℃で保存します。一次抗体をオリゴヌクレオチドで特定の組み合わせで標識する方法はマルチカラー検出のためのDuolink® PLA Probemakerガイドをご参照ください。抗体を標識した後は、調製したPLAプローブを+2~8℃で保存します。凍結禁止。
- Duolink® PLA Multicolorオリゴヌクレオチド - 凍結乾燥され、一次抗体を標識するために活性化されたオリゴヌクレオチドのバイアル2本。
- Duolink® PLA Multicolor Reagent packキットには以下を含みます:
- ライゲーションストック(5x) – 希釈して1xライゲーション・バッファーを作製
- リガーゼ(1U/μL) –ライゲーション溶液を作製するために添加
- 増幅ストック(5x) – 1x増幅バッファーを作製するために希釈
- ポリメラーゼ(10U/μL) – 増幅溶液を作製するために添加
- ブロッキング溶液 - 抗体をインキュベーションする前にサンプルをブロッキング
- Probemaker PLAプローブ希釈液 - カスタムPLAプローブを希釈
- 検出ストック(5x) – 希釈して1x検出バッファーを作製
注:1xブロッキング溶液と1x Probemaker PLAプローブ希釈液は到着後+2~8℃で保存します。他の試薬は-20℃で保存します。
- 蛍光用洗浄バッファー(AとB)
- Duolink® DAPI含有マウントメディウム(スライド使用時、+2~8℃で保存)または核染色および褪色防止剤(マイクロプレート使用時、-20℃で保存)
ほかに必要な材料
- 対象タンパク質を検出するために選択した一次抗体
- 高純度水(Milli-Q®ろ過滅菌水、あるいは同等品)
- スライドに置いた細胞または組織サンプル(固定、回復および透過に関する前処理済み)
装置
- 適切なフィルター、カメラ、画像取得用のカメラソフトウェアを付属した蛍光顕微鏡
- インキュベーター(37℃)
- オービタルシェーカー
- 加温加湿チャンバーまたはMicroplate Heat Transfer Block
- 反応領域を区切る疎水性のペン
- 保冷剤(酵素用)
- 染色ジャー
- ピンセット
- ピペット・チップ類(容量範囲1~1,000 μL)
- 蛍光顕微鏡に対応したカバーガラス
Duolink® PLA Multicolor検出プロトコル
以下はスライド上の1 cm2のサンプルを十分に被覆するために必要な40 μLの溶液でのプロトコルです。
ご自身のサンプルの反応範囲と反応数に応じて量を調節してください。すべてのインキュベーションは加湿チャンバー内で実施することを推奨します。また、すべての洗浄ステップは室温下の染色ジャーで少なくとも70 mLの洗浄バッファーでやさしく撹拌します。
試薬の準備
洗浄バッファーAとBはアッセイ開始前の作製をお勧めします。1パックを終容量が1,000 mLになるように高純度水で溶解します。溶液は短期(2週間以内)なら室温で、長期なら+2~8℃で保存可能です。
注:溶液は使用前に室温に戻します。
- 0.01x洗浄バッファーBはアッセイ開始前に1x洗浄バッファーBを高純度水で100倍希釈して作製ください。
- 多くのDuolink® PLAは濃縮ストックで提供しており、使用直前に希釈します。希釈したDuolink® PLA試薬は保存しないでください。
Multicolor Duolink® PLAプロトコル
実験前に、サンプルをガラススライド上に置き、固定、回復および透過に関する前処理をします。
- ブロッキング
注:凍結融解中にスポイトが外れる可能性があるため、使用前に1xブロッキング溶液の蓋を締めてください。+2~8℃で保管- Duolink®ブロッキング溶液を1 cm2あたり1滴(約40 μL)添加します。ブロッキング溶液でサンプル全体をカバーできるようにします。
- スライドを加温加湿チャンバーで37℃で60分インキュベートします。
- 一次抗体インキュベーション
注:スライドは抗体添加前に乾燥させないでください。バックグラウンドの原因となります。- オリゴヌクレオチド標識した一次抗体すべてをProbemaker PLA Probe希釈液で希釈します。最適な濃度は事前に単色のDuolink® PLAでお試しください。
- スライドのブロッキング溶液を除去します。
- 各サンプルに一次抗体溶液を添加します。
- 加温加湿チャンバーでスライドをインキュベートします。すべての一次抗体に適した温度と時間を使用します。
- ライゲーション
注:サンプルに添加する直前までリガーゼの添加は待ってください。ライゲーション・バッファーは使用前に完全に溶かします。- スライドの一次抗体溶液を除去します。
- 1x洗浄バッファーAで5分、室温でスライドを洗浄し、それを3回繰り返します。
- 洗浄を待っている間にライゲーション溶液を用意します。5x Multicolor PLAライゲーション・バッファーをボルテックスします。
- 5x Multicolor PLAライゲーション・バッファーを高純度水で1:5の割合で希釈し、混ぜてください。40 μLの反応の場合、30 μLの高純度水に5xライゲーション・バッファーを8 μL加えてください(リガーゼの容量を差し引いてあります)。すべてのサンプルに十分な量を作製します。
- リガーゼを、保冷剤を利用して冷凍庫(-20℃)から取り出します。
- リガーゼを1xライゲーション・バッファーで1:20の割合で希釈し、混ぜてください。40 μLのライゲーション溶液の場合、38 μLの1xライゲーション・バッファーに2 μLのリガーゼを加えてください。
- 余分な洗浄バッファーを除去し、ライゲーション溶液を添加します。
- 予熱した加温加湿チャンバーで37℃で30分スライドをインキュベートします。
- 増幅
注:サンプルに添加する直前までポリメラーゼの添加は待ってください。- スライドのライゲーション溶液を除去します。
- 1x洗浄バッファーAで5分、室温でスライドを洗浄し、それを3回繰り返します。
- 洗浄を待っている間に増幅溶液を用意します。5x増幅バッファーをボルテックスします。
- 5x増幅バッファーを高純度水で1:5の割合で希釈し、混ぜてください。40 μLの反応の場合、31 μLの高純度水に5x増幅バッファーを8 μL加えてください(ポリメラーゼの容量を差し引いてあります)。すべてのサンプルに十分な量を作製します。
- ポリメラーゼを、保冷剤を利用して冷凍庫(-20℃)から取り出します。
- ポリメラーゼを1x増幅バッファーで1:40の割合で希釈し、混ぜてください。40 μLの反応の場合、39 μLの1x増幅バッファーに1 μLのポリメラーゼを加えてください。
- 余分な洗浄バッファーを除去し、増幅溶液を添加します。
- 予熱した加温加湿チャンバーにおいて、37℃で100分スライドをインキュベートします。
- 検出
注:Multicolor PLA検出バッファ-は感光性です。バッファーを含むすべての溶液は遮光します。- スライドの増幅溶液を除去します。
- 1x洗浄バッファーAで5分、室温でスライドを洗浄し、それを3回繰り返します。
- 洗浄を待っている間に検出溶液を用意します。5x Multicolor PLA検出バッファーをボルテックスします。
- 5x Multicolor PLA検出バッファーを高純度水で1:5の割合で希釈し、混ぜてください。40 μLの反応の場合、32 μLの高純度水に5x検出バッファーを8 μL加えてください。すべてのサンプルに十分な量を作製します。
- 余分な洗浄バッファーを除去し、検出溶液を添加します。
- 予熱した加温加湿チャンバーで37℃で30分スライドをインキュベートします。
- 最終洗浄
注:感光性の試薬です。スライドは常時遮光します。- スライドの検出溶液を除去します。
- 1x洗浄バッファーBで10分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
- 0.01x洗浄バッファーBで1分スライドを洗浄します。
- 画像検出の準備
注:Duolink® DAPI含有In Situマウントメディウムは水溶性で凝固しません。透明なマニュキュアでスライドとカバーガラスの端を封します。カバーガラス内に気泡を入れないようにします。- スライドの余分な洗浄バッファーを除去します。
- Duolink®DAPI含有マウントメディウムの最小使用量を用いてカバーガラスでスライドを作製します。
- 15分後、少なくとも20倍の対物レンズを使用して蛍光顕微鏡もしくは共焦点顕微鏡で解析ください。
結果
画像の取得
Duolink® PLA Muliticolor実験の結果は用いた検出蛍光色素に適したフィルターを使って蛍光顕微鏡で観察します。Duolink® PLAのシグナルは様々な細胞位置で分散した蛍光スポットとして認識されます(図1A)。個別のシグナルはマイクロメーター以下のサイズで複数の焦点面にあるかもしれません。したがって、サンプルの厚さ全体で画像を得る必要がある場合があります。また、例えばオリゴヌクレオチド標識済み一次抗体を除いた状態など、Duolink® PLAを用いて直接検出した場合、PLAシグナルが検出されないことも合わせて確認してください。生物学的コントロールは可能な場合、含めてください(図1B)。
図1.EGFで刺激したSK-OV3細胞(A)と生物学的コントロールとして刺激しないSK-OV3細胞(B)。Duolink®PLA Multicolorを用いて、EGFR-HER2相互作用(緑)、EGFRのリン酸化(オレンジ)、およびHER2のリン酸化(遠赤)を観察した。核はDAPI(青)で染色した。
シグナル強度を元に、各蛍光色素の取得の条件(露出時間やゲインなど)は異なります。しかしながら、実験を通じてすべてのサンプルで画像の獲得のために用いる各蛍光色素のセッティングが最適で同じであることが重要です。取得の条件は、ポジティブコントロールやネガティブコントロールを用いることにより最適化することができます。PLAシグナルの数が大きい場合、PLAシグナルは結合/融合します(図2)。これは対象が高発現のタンパク質である、または画像取得時に露出過多である場合に起こります。よって画像取得の条件、および個々のPLAシグナルを得るために適した一次抗体価の設定には注意が必要です。
図2.Duolink® PLA Multicolorを用いて、EGFR(緑)、HER2(オレンジ)、およびGAPDH(赤)で検出した刺激していないSK-OV3細胞。核はDAPI(青)で染色した。
画像解析ツールを用いることでPLAシグナルの定量が可能になります。画像データの解析により、細胞内での細胞ごとまたは範囲ごとのPLAシグナルの平均蛍光強度および/または総数を得ることができます(図3)。したがって、定量値は実施した実験内の技術的および/または生物学的コントロールとの相対値の形で報告されます。しかしながら、信頼性の高い定量は、PLAシグナルの融合がなく、画像の画素数が飽和状態に達していない場合に限り可能です。
図3.画像ソフトウェアを用いた画像解析。DAPIで染色された核(青)は自動的に検出され、細胞質の大きさ(緑線)はユーザーによって推定された。PLAシグナル(赤)は対象タンパク質ターゲットを示す。白点でマークしたPLAシグナルおよび黄線で輪郭を示した核を解析によって定量化した。
参考文献
Multiplex PLA papers:
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