Duolink® PLA明視野検出プロトコル
このプロトコルでは、組織サンプルと細胞サンプルにおける個々のタンパク質、タンパク質修飾、およびタンパク質相互作用の明視野検出、視覚化、ならびに定量化のためのDuolink® PLA試薬の使用について説明します。Duolink® PLAテクノロジーについて詳しくは、メルクのパンフレットをダウンロードして、「Duolink®近接ライゲーションアッセイを最適化する方法」で詳細を確認してください。その他のプロトコルについては、『Duolink® PLA蛍光検出プロトコル』と『Duolink® PLA Probemakerユーザーガイド』を参照してください。
製品と機器
Duolink® PLA明視野検出プロトコル
結果
トラブルシューティング
関連製品
参考文献
製品と機器
Duolink® PLA試薬
特定の製品の推奨事項については、『Duolink® PLA製品選択ガイド』を参照してください。明視野検出用のDuolink® PLA実験の実施にあたっては、大まかに言って次のDuolink® PLA製品が必要です。
- Duolink® PLAプローブ(一次抗体の宿主種と一致する、異なる生物種に由来するPLUSおよびMINUS各一つ)。各キットの内容物:
a)PLAプローブ – 製品に応じてPLUSまたはMINUS、あるいはその両方。
b)ブロッキング溶液 – 一次抗体のインキュベーション前にサンプルをブロック。ブロッキング溶液1滴は約40 µLに相当します。
c)抗体希釈液 – PLAプローブの希釈に使用され、必要に応じて一次抗体に使用されます。
注記:キットの内容物はすべて4℃で保存してください。
注記:必要に応じて、Duolink® PLA Probemaker PLUS/Probemaker MINUSキットを使用してカスタムPLAプローブを生成できます詳細については、Probemakerのガイドを参照してください。
- Duolink®検出試薬(明視野検出用)。各キットには、次の内容物からなる2つのパッケージが含まれています。
ボックスA(-20℃で保存):
a)ライゲーションバッファーストック(5X) – 1xライゲーションバッファーを作製する場合に希釈
b)リガーゼ(1U/µL) – ライゲーション溶液を作製する場合に追加
c)増幅バッファーストック(5X) – 1x増幅バッファーを作製する場合に希釈
d)ポリメラーゼ(10 U/µL) - 増幅溶液を作製する場合に追加
e)検出バッファーストック(5X) – 1x検出バッファーを作製する場合に希釈
ボックスB(4℃で保存):
a)過酸化水素 – 内在性ペルオキシダーゼ活性を失活させる場合に使用
b)基質試薬A~D – HRP酵素反応に必要
c)核染色 – 対比染色として使用
- 明視野検出用洗浄バッファー(洗浄バッファーA)
その他関連製品
- 固定、透過処理、脱パラフィン、抗原賦活化に関して前処理された、スライド上のサンプル(細胞または組織)。提案事項と推奨事項、および次のトピックの詳細については、「Duolink®近接ライゲーションアッセイを最適化する方法」を参照してください。
a)実験デザインとコントロール
b)一次抗体の選択と最適化
c)サンプル処理
- 目的のタンパク質を検出するために選択する一次抗体。Duolink® PLAプローブと併用する場合は、マウス、ウサギ、またはヤギに由来している必要があります。
- 高純度水(滅菌ろ過、Milli-Q®水など)
- キシレン – 非水性封入剤に封入する前の脱水用
- エタノール – 非水性封入剤に封入する前の脱水用
- IHC染色スライドに適した非水性封入剤(組織学用DPX封入剤など)
器具
- 画像取得用のカメラとソフトウェアを備えた明視野顕微鏡
- 37 ℃インキュベータ
- 軌道シェーカー
- 加温恒湿チャンバー
- 反応領域を区切る疎水性のペン
- 保冷剤(酵素用)
- 染色ジャー
- ピンセット
- ピペットおよびチップ(1 µL~1,000 µL)
- カバースリップ24x50 mm、#1.5
Duolink® PLA明視野検出プロトコル
以下は、十分に被覆するために40 µLの溶液を必要とする、スライド上の1 cm2サンプルのプロトコルです。サンプルの反応領域と数に応じて量を調節してください。インキュベーションはすべて恒湿チャンバー内で実施してください。 また、洗浄ステップはすべて室温下の染色ジャーで実施し、少なくとも70 mLの洗浄バッファーでやさしく撹拌します。
試薬調製
- 洗浄バッファーAはアッセイ開始前に作製しておいてください。最終容量が1,000 mLになるように、1パックを高純度水で溶解します。溶液は短期(2週間以下)なら室温で、長期なら4℃で保存可能です。
注記:溶液は使用前に室温に戻してください。
- 多くのDuolink® PLA試薬は濃縮ストックとして提供されており、使用直前に希釈する必要があります。希釈したDuolink® PLA試薬は保存しないでください。
Duolink® PLA明視野検出プロトコル
実験を開始する前に、サンプルをガラススライド上に置き、固定、透過処理、脱パラフィン、抗原賦活化に関連した前処理を行います。詳細については、「Duolink®近接ライゲーションアッセイを最適化する方法」を参照してください。
- ペルオキシダーゼの失活
注記:組織サンプルを過酸化水素中でインキュベートして、内在性ペルオキシダーゼ活性を抑制します。インキュベーション時間は組織の種類によって異なるため、最適化する必要があります。
a)疎水性ペンを使用して、スライド上の反応領域を囲みます。この手順をプロトコル全体で繰り返し行う必要が生じる場合があります。必要に応じて再度行います。
b)各1 cm2サンプルに過酸化水素溶液を1滴(約40 µL)添加します。サンプル全体をカバーするようにしてください。適宜調整します。
c)細胞/組織の種類に応じて、スライドを室温で適切な時間インキュベートします。 - ブロッキング
a)スライドを軽くたたいて過酸化水素溶液を除去します。
b)1x洗浄バッファーAで5分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
c)Duolink®ブロッキング溶液をボルテックスします。
d)各1 cm2サンプルにDuolink®ブロッキング溶液を1滴(約40 µL)添加します。サンプル全体をブロッキング溶液でカバーするようにしてください。
e)37℃の恒湿チャンバー内でスライドを60分インキュベートします。 - 一次抗体のインキュベーション
注:一次抗体を添加する前にスライドを乾燥させないでください。バックグラウンドシグナル増加の原因となります。
a)Duolink®抗体希釈液をボルテックスします。
b)一次抗体をDuolink®抗体希釈液で適切な濃度に希釈します。
c)スライドを軽くたたいてDuolink®ブロッキング溶液を除去します。
d)各サンプルに一次抗体溶液を添加します。
e)恒湿チャンバー内でスライドをインキュベートします。お使いの一次抗体に最適なインキュベーション温度と時間を採用してください。 - Duolink® PLAプローブのインキュベーション
a)PLUSおよびMINUSのPLAプローブをボルテックスします。
b)Duolink®抗体希釈液でPLUSおよびMINUSのPLAプローブを1:5の割合で希釈します。
40 µLの反応液を作製するには、8 µLのPLAプローブMINUSストック、8 µLのPLAプローブPLUSストック、および24 µLの抗体希釈液を使用します。
全サンプルに対して十分な量の溶液を作製します。
c)スライドを軽くたたいて一次抗体溶液を除去します。
d)1x洗浄バッファーAで5分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
e)スライドを軽くたたいて余分な洗浄バッファーを除去し、PLAプローブ溶液を添加します。
f)37℃の恒湿チャンバー内でスライドを1時間インキュベートします。 - ライゲーション
注:サンプルに添加する直前までリガーゼの添加は待ってください。ライゲーションバッファーは使用前に室温で完全に溶かし、よく混ぜておく必要があります。
a)5X Duolink®ライゲーションバッファーを1:5の割合で、高純度水で希釈し、混合します。
40 µLの反応液を作製するには、8 µLの5Xライゲーションバッファーを32 µLの高純度水に加えます。
全サンプルに対して十分な量の溶液を作製します。
b)スライドを軽くたたいてPLAプローブ溶液を除去します。
c)1x洗浄バッファーAで5分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
d)洗浄中に、保冷剤(-20℃)を使用して保冷庫からリガーゼを取り出します。
e)1:40の割合で希釈したステップ(a)の1Xライゲーションバッファーにリガーゼを加えて混合します。
40 µLのライゲーション溶液を作製するには、1 µLのリガーゼを39 µLの1Xライゲーションバッファーに加えます。
f)スライドを軽くたたいて余分な洗浄バッファーを除去し、ライゲーション溶液を添加します。
g)予熱した37℃の恒湿チャンバー内でスライドを30分インキュベートします。 - 増幅
注記1:サンプルに添加する直前までポリメラーゼの添加は待ってください。
注記2:増幅時間は、抗原賦活化プロセスに応じて異なる場合があります。熱誘導によるエピトープ賦活化の場合は、120分間増幅します。酵素誘導による抗原賦活化の場合は、90分間増幅します。それ以外の場合は、100分間増幅します。
a)5x増幅バッファーを1:5の割合で高純度水で希釈し、混合します。
40 µLの反応液を作製するには、8 µLの5X増幅バッファーを32 µLの高純度水に加えます。
全サンプルに対して十分な量の溶液を作製します。
b)スライドを軽くたたいてライゲーション溶液を除去します。
c)1x洗浄バッファーAで2分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
d)洗浄中に、保冷剤(-20℃)を使用して保冷庫からポリメラーゼを取り出します。
e)1:80の割合で希釈したステップ(a)の1X増幅バッファーにポリメラーゼを加えて混合します。
40 µLの増幅溶液を作製するには、0.5 µLのポリメラーゼを39.5 µLの1X増幅バッファーに加えます。
f)スライドを軽くたたいて余分な洗浄バッファーを除去し、増幅溶液を添加します。
g)抗原賦活化手法に応じて(上記の注2を参照)、37℃の恒湿チャンバー内でスライドを90~120分インキュベートします。 - Duolink®明視野検出
a)スライドを軽くたたいて増幅溶液を除去します。
b)1x洗浄バッファーAで2分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
c)洗浄中に、5x明視野検出ストックを1:5の割合で、高純度水で希釈し、混合します。
40 µLの反応液を作製するには、8 µLの5x明視野検出ストックを32 µLの高純度水に加えます。
全サンプルに対して十分な量の溶液を作製します。
d)スライドを軽くたたいて余分な洗浄バッファーを除去し、検出溶液を添加します。
e)室温の恒湿チャンバー内でスライドを60分インキュベートします。 - 基質の検出
注: 酵素基質沈殿物の検出時間は、タンパク質の発現レベルやサンプルの前処理条件によって異なります。そのため、検出時間はユーザーが決定する必要がありますが、通常は2〜15分以内に起こります。
a)スライドを軽くたたいて検出溶液を除去します。
b)1x洗浄バッファーAで2分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
c)洗浄中に、基質試薬A(1:70)、B(1:100)、C(1:100)、およびD(1:50)を高純度水で希釈して基質溶液を作製し、混合します。
40 µLの反応液を作製するには、0.6 µLの基質A、0.4 µLの基質B、0.4 µLの基質C、0.8 µLの基質Dを37.8 µLの高純度水に加えます。
全サンプルに対して十分な量の溶液を作製します。
d)スライドを軽くたたいて余分な洗浄バッファーを除去し、基質溶液を添加します。
e)サンプルに応じて、スライドを室温で適切な時間インキュベートします。 - 核染色
a)スライドを軽くたたいて基質溶液を除去します。
b)1x洗浄バッファーAで2分、室温でスライドを洗浄し、それを2回繰り返します。
c)各1 cm2サンプルに核染色液を1滴(約40 µL)添加します。サンプル全体を核染色液でカバーするようにしてください。
d)室温でスライドを2分インキュベートします。
e)スライドを脱イオン水の流水(静水ではない)で10分間すすぎます。 - 脱水
a)室温の96% EtOH内でスライドを2分間インキュベートし、それを2回繰り返します。
b)室温の99.7% EtOH内でスライドを2分間インキュベートし、それを2回繰り返します。
c)室温のキシレン内でスライドを10分間インキュベートします。
d)スライドを新しいキシレンに移します。 - 画像処理の準備
注:付属の基質試薬を使用する場合は、水性封入剤を使用しないでください。カバースリップの下に気泡が入らないようにしてください。
a)スライドを軽くたたいて余分なキシレンを除去します。
b)最小容量のIHC互換非水性封入剤(組織学用DPX封入剤など)を使用してカバースリップでスライドを封入します。
c)スライドをよく乾燥させます。
d)少なくとも20倍の対物レンズを使用して、明視野顕微鏡で分析します。
e)画像処理の後、スライドを室温で保存します。PLAシグナルは何年間も安定性を維持します。
結果
画像取得
Duolink® PLA明視野検出実験の結果は、明視野顕微鏡を使用して確認できます。Duolink® PLA明視野検出シグナルは、調査対象の細胞または組織サンプルのさまざまな位置で、個別の赤褐色スポットとして認識されます(図1A)。青は核の対比染色です。不活性化されていない内因性過酸化物活性がおそらく原因となり、拡散した薄茶色の染色が観察されることがあります。この染色は、ネガティブコントロール(一次抗体なし)サンプルにも存在します。真のPLAシグナルはサイズがマイクロメートル以下で、複数の焦点面に存在する場合があります。そのため、フォーカスを変えると個々のPLAシグナルが出現、消失し、くまなく調べることができます。ただし、このことは、シグナル密度が高いためにシグナルが融合する状況には当てはまりません。この状況は、高度に出現するタンパク質を調査する場合に生じることがあります(図1B)。
図1Duolink® PLA明視野検出を使用した、FFPE乳がん組織におけるHER2受容体およびHER2/HER3ヘテロダイマーの検出。(A)Duolink® PLAは、個々のPLAシグナルを与えるように最適化された抗HER2および抗HER3一次抗体を使用して実施され、HER2/HER3相互作用を示しました。(B)Duolink® PLAは、抗HER2一次抗体のみを使用して実施されました。Pantomics Inc.がIHCによるHER2について2+と評価した、HER2受容体の豊富さによって、PLAシグナルの融合が引き起こされました。(C)ネガティブコントロール(一次抗体なし)。PLAシグナルは赤褐色の点で示され、核は青で示されています。
明視野画像は通常、1つの焦点面で撮影されます。焦点が合っていないPLAシグナルの数を減らすには、開口数の高い対物レンズを使用します。光強度、露光時間、シェーディング補正/ホワイトバランスなどについて、各実験のサンプル間ですべての設定を一定に保つことが重要です。光強度は、露光時間と組み合わせて、露光量の過不足をバランスよく得られるように設定する必要があります。シグナル融合を防ぐ方法などの最適化のヒントについては、『Duolink® PLAトラブルシューティングガイド』を参照してください。
画像解析
免疫組織化学に利用できるものと同じ画像解析ツールを、PLAシグナルの定量化にも使用することができます。閾値を決定した後は、従来の明視野解析用のソフトウェアを使用して、シグナルを含むサンプルのスポット強度測定や面積率で画像データを解析できます。画像あたりのシグナル数や細胞数を得ることができ、平均的な計測だけでなく、単一細胞解析によって細胞別にそれぞれ個々のシグナルを割り当てることも可能です。
トラブルシューティング
『Duolink® PLAトラブルシューティングガイドのヒント』、一般的なトラブルシューティングガイドライン、一連のよくある質問(FAQ)を参照してください。
最寄りの営業担当者(または実験のサポートが必要な場合はテクニカルサポートチーム)にいつでもお気軽にお問い合わせください。
カスタムサービス
実験に追加のカスタマイゼーションが必要な場合は、メルクにお問合せください。Duolink® PLAプロジェクトを加速するカスタムサービスプログラムの詳細をご確認ください。
参考文献
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