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ホーム固相抽出(SPE)ENVI-Carb Plusを用いた、水サンプル中のプロピレングリコールとエチレングリコールの抽出

ENVI-Carb Plusを用いた、水サンプル中のプロピレングリコールとエチレングリコールの抽出

Katherine K. Stenerson

Reporter US Volume 28.3

はじめに

プロピレングリコールは、さまざまな化学製品、食品、およびパーソナルケア製品の溶剤、乳化剤、保湿剤としての用途に幅広く利用されています。人間と動物には比較的低毒性です。自動車用不凍液として広く使用されているエチレングリコールは中等度の毒性を有し、EPAが2008年に制定した飲料水汚染物質候補リスト第3次案に含められました1。エチレングリコールとプロピレングリコールは親水性であるため、液/液抽出、ほとんどの代表的な吸着剤による固相抽出(SPE)など、従来の抽出法ではこれらの化合物を水系試料から抽出できません。その結果、水系試料での標準的な分析法では、水溶液をガスクロマトグラフ(GC)に直接注入してきました。しかし、この方法には高い検出濃度、キャリーオーバー、クロマトグラフの問題があります。したがって、これらのグリコールを有機溶媒中に抽出してGC分析を行うのが有利です。しかし、前述のように、これらを水系マトリックスから抽出することは困難です。エチレングルコールとプロピレングリコールは極性が極めて高いため、C18、シリカゲルといった逆相と順相の吸着剤ではこれらを水から抽出できません。カーボン吸着剤は、その表面と構造によっては疎水性、分子の大きさ、および形状に基づいて被分析物質を保持できます。これらの特性により、カーボンには小さなグリコールを水から抽出するための吸着剤として使用できる可能性があります。

ENVI-Carb™ Plusは微孔性アモルファスカーボンモレキュラーシーブです。その表面は疎水性が他の種類のカーボンより低いために水に対する親和性が高く、被分析物質を水溶液からその細孔構造内部に引き込むのに役立ちます。被分析物質が溶解する溶媒で細孔を浸せば、被分析物質を溶出できます。物質の不活性表面と極小間質空間(個々の粒子間にある空間)により、抽出効率が高まります。ENVI-Carb Plusは間質空間を減らす狭い粒径分布で設計されたため、溶出溶媒がカーボンの細孔構造をより完全に溶媒和できるようになります。

ENVI-Carb Plusは高極性化合物を水から抽出するために開発され、アセフェート、フェノール、アクリルアミド、および1,4-ジオキサンに良好に作用することがわかりました。1,4-ジオキサンについては、飲料水中でのこの化合物の抽出と分析について詳述した米国EPAメソッド522でその妥当性が確認されました 2。ENVI-Carb Plusの保持特性を考慮すれば、グリコールを水から抽出できる可能性があると考えられました。本研究では、このカーボンでエチレングリコールとプロピレングリコールを水から抽出する法を評価しました。目標は、グリコールを水から保持して有機溶媒で溶出し、GC分析と必要に応じてその後の試料濃縮と溶媒置換が容易になるかどうかを確認することでした。ENVI-Carb Plusは、記述したプロトコルを使用すれば、いずれのグリコールも水から抽出できることが明らかになり、水からのプロピレングリコールの回収率は良好、エチレングリコールの回収率はまずまずでした。

実験

プロピレングリコールとエチレングリコールをさまざまな濃度で脱イオン水試料に添加しました。表1に記述したプロトコルを使用し、ENVI-Carb Plusリバーシブル型(これらのカートリッジはメス型ルアーインレットに取り付けます)カートリッジで抽出しました。溶出ステップの前にカートリッジを反転しました。その後、溶出溶媒を過不足なくカートリッジで吸引して充填剤を湿潤し、吸引をオフにしてカートリッジが1分間浸るようにしました。その後、吸引を再度オンにし、残っている溶出溶媒をカートリッジで吸引して収集しました。得られた抽出物は、さらに濃縮したり溶媒を交換したりせずにそのままGC分析(表2)を行いました。

表1.抽出手順(54812-U)
表2.GC分析条件(25445)

結果と考察

前述のように、GCに水溶液を注入することには問題があります。図1に、25μg/mLのプロピレングリコールとエチレングリコールを含む水試料を注入した結果を示します。水は加熱したGCインレット内で極めて大きな蒸気雲を形成し、その他の溶媒より高い沸点を持っています。その結果、試料に照準を合わせるのが難しくなってピーク形状と感度に影響が生じます。一方、ENVI-Carb Plusカートリッジの溶出に使用した有機溶媒中にグリコールを注入すると、図2に示すようにピーク形状と感度が改善されます。したがって、GC分析は溶出ステップ直後が適しており、溶媒置換ステップは不要であることが分かりました。

水溶液の直接注入

図1.25μg/mL添加水試料水溶液の直接注入

メタノール注入

図2.50:50メタノール:塩化メチレン中25μg/mLグリコール標準溶液の注入

プロピレングリコールはENVI-Carb Plusに良好に保持されましたが、エチレングリコールはプロピレングリコールより小さく親水性が高いため、同じようには保持されませんでした。25μg/mLで添加した同一の水試料を抽出し、溶出溶媒中の同一濃度の標準溶液と比較しました。表3に示すように、再現性は全体的に良好でした。プロピレングリコールの回収率は、親水性がさらに高いエチレングリコールより良くなりました。添加水試料を抽出したクロマトグラムを図3に示します。プロピレングリコールの感度とピーク形状は、水溶液を直接注入したときよりも改善されました。エチレングリコールは回収率と感度が低いため、大幅な改善は見られませんでした。

表3.ENVI-Carb Plusを使用したときの再現性と添加脱イオン水からの回収率
ENVI-Carb Plus注入

図3.ENVI-Carb Plusを使用して抽出した25μg/mL水試料の注入

10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、および100μg/mLで添加した水試料を抽出し、その直線性を測定して本法の定量性能を評価しました。濃度対検出感度のプロットを図4に示します。いずれのグリコールも直線性は良好であり、プロピレングリコールとエチレングリコールの平均応答係数の% RSDはそれぞれ11%、16%でした。

濃度対検出感度

結論

ENVI-Carb Plusリバーシブル型カートリッジによってプロピレングリコールとエチレングリコールのいずれも水から抽出でき、本方法の定量性と再現性が両方とも実証されました。有機溶媒を組み合わせて溶出できるため、試料濃縮、溶媒置換といったGC分析のさらなる改善も得られます。溶出溶媒の直接注入により、水溶液試料を直接注入したときより感度とピーク形状が改善されました。

プロピレングリコールの方がエチレングリコールよりENVI-Carb Plusに保持されたため、本稿に示した抽出プロトコルはプロピレングリコールに最適化されているように見えます。別のプロトコルでエチレングリコールの保持を改善できるように、さらに研究を進める予定です。

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参考文献

1.
2003. Drinking Water Contaminant Candidate List 3 – Draft Notice, Federal Register, Vol .73, No. 35.Thursday. [Internet]. Environmental Protection Agency.
2.
Munch J, Grimmett P. 2008. Determination of 1,4-Dioxane in Drinking Water by Solid Phase Extraction (SPE) and Gas Chromatography/Mass Spectrometry (GC/MS) With Selected Ion Monitoring (SIM).Part II US EPA Method 522-1. [Internet].[updated 31 Dec 2007]. Available from: https://cfpub.epa.gov/si/si_public_record_Report.cfm?Lab=NERL&dirEntryId=199229
3.
Betz WR, Keeler MJ, Sarker M, Aurand CR, Stenerson KK, Sidisky LM. Characterization of Polymer Carbon Sieves, Graphitized Polymer Carbons and Graphitized Carbon Blacks for Sample Preparation Applications; T408117, Sigma-Aldrich/Supelco. [Internet]. Available from: https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Supelco/Posters/1/t410103h.pdf
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