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セロトニンの合成と代謝

セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン)は主に次の3つの主要細胞種に存在することがわかっています - i) CNSおよび腸管筋層間神経叢のセロトニン作動性ニューロン、ii)消化管粘膜の腸クロム親和性細胞、およびiii)血小板。セロトニン作動性ニューロンと腸クロム親和性細胞は、前駆体アミノ酸であるL-トリプトファンからセロトニンを合成することができますが、血小板は自身の貯蔵のためにセロトニンの取り込みに依存しています。同様に、セロトニン作動性ニューロンも、セロトニントランスポーターを介してアミンを取り込む能力を有しています。セロトニンは、後続の酵素形成過程で生成される松果体ホルモンのメラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプタミン)の前駆体として、松果腺でも合成されます。

セロトニン合成の生化学的経路では、最初に酵素L-トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)によってL-トリプトファンが5-ヒドロキシトリプトファンに変換されます。TPHは細胞質ゾルおよび微粒子の脳細胞分画のいずれでも検出されています。セロトニン合成の律速段階は、この酵素によって規定されます。同様に、アドレナリン作動性ニューロンとドーパミン作動性ニューロンでのノルエピネフリンおよびドーパミン合成も、関連酵素のL-チロシンヒドロキシラーゼが有する、L-チロシンからL-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)へ変換する能力に左右されます。いくつかのTPH阻害剤(α-プロピルドパセタミドなど)はチロシンヒドロキシラーゼにも活性を示しますが、p-クロロフェニルアラニンなどのようにTPHにより高い選択性を示すものもあります。p-クロロアンフェタミンとフェンフルラミンもTPHを阻害できますが、それらはセロトニン作動性ニューロン機能の他のさまざまな調節プロセスに重大な影響(神経毒性作用を含む)を及ぼします。TPH1とTPH2と呼ばれる2つの酵素アイソフォーム(それぞれ明らかに末梢組織と脳に選択的に関連していると考えられます)が同定されていることから、個々のアイソフォームを標的とする特異性を持った阻害剤が将来発見される可能性があります。

セロトニン(同様にノルエピネフリンまたはドーパミン)の合成における後続の代謝段階では、細胞質ゾル酵素のL-芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼの作用によって5-ヒドロキシトリプトファン(およびL-DOPA)の脱炭酸が生じます。この酵素の阻害剤には、ベンセラジドとカルビドパという薬剤がありますが、これらの薬剤は血液脳関門を通過できないため、L-DOPAが末梢で脱炭酸を起こさないように臨床ではパーキンソン病患者の中枢ドーパミン形成の前駆体として投与されています。

セロトニンの代謝は、主にミトコンドリア外膜酵素のモノアミンオキシダーゼ(MAO)によって行われ、MAOにはMAO-AとMAO-Bと呼ばれる2種類の分子サブタイプが存在します。両サブタイプは、脳および末梢組織で広く検出されますが、それらには特定組織と細胞種における検出量という点で動物種と関連して変動がみられるなど、いくつかの違いもあります。さらに、これらのサブタイプでは、基質特異性や特定の阻害剤に対する感受性に違いがみられます。例えば、MAO-Aは、MAO-Bよりもきわめて低いKm値(かつ高い基質親和性)でセロトニンを代謝できることから、セロトニン酸化により高い選択性を示します。CNSでセロトニンの代謝を抑制するMAO-A活性の阻害は、臨床で使用されている、多くのサブタイプの選択的(モクロベミドなど)および非選択的(フェネルジンなど)MAO阻害剤の抗うつ特性と関連しています。しかし、興味深いことに、免疫組織染色的試験からは、セロトニン含有ニューロン自体にはMAO-Bしか含まれていない可能性があることが示唆されています。MAO-AとB両分子の結晶構造を定義する報告書から、触媒部位への薬剤アクセスをコントロールし、さまざまな基質と阻害剤の特異性に関与している可能性がある各サブタイプの分子学的形状の特徴について、重要な知見が得られています。MAOの作用によって、セロトニンは5-ヒドロキシインドールアセトアルデヒドに変換されると、それは主にミトコンドリアに存在するアルデヒドデヒドロゲナーゼのアイソフォーム(ALDH2)によって容易に代謝されるようになり、セロトニンの主要な排出代謝物である5-ヒドロキシインドール酢酸が生成されます。アルデヒドレダクターゼを介する別の代謝経路では、5-ヒドロキシインドールアセトアルデヒドを5-ヒドロキシトリプトフォールに変換できますが、この経路には通常、重要ではないと考えられています。

略語

Ro 41-1049:N-(2-アミノエチル)-5-(3-フルオロフェニル)-4-チアゾールカルボキサミド

 

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