GABAA受容体は哺乳類CNSの神経性抑制の大半に関与しています。アゴニストの活性化により内在性陰イオンチャネルが開口し、全体的に細胞膜の過分極、その後の阻害がもたらされます。ネイティブな受容体の電子顕微鏡的研究から、これらはイオンチャネルを囲んで擬対称的に配列された5つのサブユニットで構成されており、細胞膜を貫通していることが示されています。細胞外部から見ると、この受容体は外径約8 nmの「ドーナツ状」であり、3 nmの中心空洞はチャネルの開口部を示しています。
GABAA受容体は、α、β、γおよびδの4種の主なファミリーから選ばれたサブユニットによるヘテロオリゴマーですが、その他、ρ、π、θおよびεなどのサブユニットが特定されています。ヒト脳において、分子クローニング研究により、これまでに6種のα、3種のβおよび3種のγサブユニットアイソフォームが単離されていますが、δサブユニットは1種のみ現在判明しています。1つの遺伝子が各々のサブユニットアイソフォームをコードしていますが、多くの例で選択的スプライシングにより、さらなる異種性が誘導されています。このような多数のサブユニットの存在から莫大な数のGABAA受容体サブタイプの存在が示唆されますが、優位なアセンブリが明らかに存在し、大半の測定値からは数百種の受容体サブタイプではなく数十種のサブタイプの存在が示されています。現在では、GABAA受容体の70~80%はベンゾジアゼピン結合部位を含み、β、γ2およびα1、α2、α3またはα5サブユニットのいずれかで構成されていると考えられていますが、このうち最も多いのはα1サブタイプです。
受容体サブタイプの的確なサブユニットの構成により 、その薬理学的および生物物理学的特性が決定されますが、細胞の場所およびリン酸化状態など多数のその他の因子により、 さらなる機能的多様性が誘導されます。一部の受容体サブタイプはシナプス下膜に局在していると考えられ、そこで高濃度の遊離GABAに短期間ばく露され、抑制性シナプス後電流を伴う位相性の神経伝達が発生します。しかし、その他の受容体サブタイプはシナプス外で検出されることが明らかになってきています。これらのサブタイプは、緊張性の低速脱感作電流を媒介するきわめて低濃度の伝達物質に感受性を有しており、この電流の重要性が現在認知されてきています。
GABAA受容体ファミリーは多くの向精神薬、特にベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系、神経ステロイドおよび全身麻酔薬のターゲットであり、各薬剤クラスは受容体上の固有のアロステリック部位と相互作用しています。有効な薬剤はアゴニストによる受容体の活性化を促進し、鎮静/睡眠、不安緩解、抗けいれん活性、筋弛緩、前向性健忘および意識消失を起こすことがあります。しかし、インバースアゴニストはまったく正反対の効果を示し、アゴニスト活性化による効果を低減します。サブタイプ選択的インバースアゴニストは記憶改善薬となる可能性を有しています。
各々のGABAA受容体サブユニットアイソフォームは、「ノックイン」法による進歩から支持された結果、脳内で明確な局所分布を示しており、特異的な生理学的機能を媒介することが示唆されています。しかし、サブユニットアイソフォームの分布パターンは不安定であり、変動は発達的なもののみならず、正常な生理学的周期や、これらの受容体との相互作用による有効性が判明している薬剤による薬理学的介入の結果として変動することもあります。実際に、一部の受容体サブタイプの異常発現は病態生理学的に重要である可能性があります。
サブユニット配列内の特異的なアミノ酸の同定法は大きく進歩しており、明確なGABAA受容体サブタイプの認識特性が実証されます。リガンドが個々のサブタイプで明確な固有活性を示す可能性が理解されるとともに、このことからGABAA受容体ファミリーが新たな治療法に発展する可能性に関心が寄せられていますが、薬力学的プロファイルは限定的です。哺乳類CNSのこれらの受容体は長年にわたり重要な創薬ターゲットであることがわかっており、最近の開発も将来極めて有望です。
下の表に一般的なモジュレーターなど、詳細を紹介します。その他の製品一覧につきましては、後述の「関連製品」の項をご参照ください。
参考文献
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