間葉系幹細胞マーカーおよび抗体
図1間葉系幹細胞(MSC)の骨髄からの分化を示す略図。
Friedensteinらは骨髄からMSCを初めて発見しました1。何十年にも及ぶ研究からMSCについての意義深い理解が得られており、MSCの由来についても、骨髄以外の組織に由来するものの報告もなされています2。MSCの特性を示す細胞は、脂肪組織3,4、羊水5,6、歯組織7、子宮内膜8、月経血9、末梢血10、胎盤膜や胎膜11からも単離されています。間葉系幹細胞は、各種表面マーカーと、NT5E/CD73、THY1/CD90、およびENG/CD105などのタンパク質との組み合わせにより確定できます(図2)。
図2抗ENGモノクローナル抗体(AMAb90925)を用いたヒト血管におけるEndoglin/CD105の免疫組織染色。
軟骨細胞
軟骨細胞は、元々は中胚葉由来であり、正常な軟骨組織の唯一の細胞構成要素です。軟骨細胞は、基質の主要な2つの構成要素(コラーゲンおよびプロテオグリカン)の合成と、基質の成分を分解する酵素の合成を担っています。そのため、軟骨細胞は軟骨の合成と分解の調節に重要な役割を果たしていると言えます。MSCの軟骨細胞への分化は、SOX9などの転写因子によって調節されます。
脂肪細胞および白色脂肪組織細胞
脂肪細胞は高度に特殊化した細胞で、ほとんどの脊椎動物のエネルギー消費に重要な役割を果たします。また、過剰なエネルギーを脂肪に変換し、摂食中には食物欠乏の時期に備えてエネルギーを貯えます。脂肪細胞は、1つまたは複数の大きなトリグリセリド(脂肪)滴を含む特徴的な形状をしています。これにより、脂肪の少ない間質細胞や血管細胞との区別が可能です。図4に、脂肪細胞に用いるマーカーのPLN1(ペリリピン1)に対する免疫組織染色を示します。
骨芽細胞および骨細胞
骨芽細胞は、骨組織の形成と再形成に関与します。骨形成は、骨格の長骨などにおける、軟骨前駆体または骨表面の骨芽細胞層のいずれかから生じます。骨芽細胞の主な機能は、I型コラーゲンとその他の特殊化した基質タンパク質を合成することです。これらは、その後のカルシウム沈着のテンプレートの役割を果たします。骨芽細胞の分化は、たとえばマスター遺伝子調節因子OX/SP7によって調節されます。
平滑筋、心筋、および骨格筋細胞
筋細胞は、筋組織の機能を担う細胞です。筋細胞には、平滑筋細胞、心筋細胞、および骨格筋細胞という特徴的な性質を有する3種類のタイプがあります。平滑筋細胞(SMC)は、不随意的に制御される横紋筋のない筋肉として内臓組織および血管の壁内に存在しています。平滑筋の遺伝子発現は、主としてミオカルディンによって調節されます。心筋細胞、すなわち心臓の筋肉細胞は、不随意的に制御される横紋筋細胞で、心臓にのみ見られます。心筋細胞は、特にGATA4とミオカルディンによって調節されます。骨格筋細胞は、随意的に制御される横紋筋細胞で、腱によって骨格と結合しています。MyoD1は、骨格筋(横紋筋)細胞分化の主要な調節因子です。図5A~Cに、各タイプの筋細胞に特異的なマーカー抗体による典型的な免疫染色の例を示します。
図5A抗TAGLNポリクローナル抗体(HPA019467)を用いた、高いTransgelin発現を示す平滑筋細胞(SMC)の免疫組織染色。
図5B抗FABP3ポリクローナル抗体(HPA055754)を用いた、ヒト心筋において高いFatty Acid Binding Protein 3(FABP3)発現を示す心筋細胞の免疫組織染色。
図5C抗TNNT1ポリクローナル抗体(HPA058448)を用いた、高いTroponin T type 1発現を示す骨格筋細胞(SMC)の免疫組織染色。
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参考文献
研究目的での使用に限定されます。診断の用途では使用できません。
製品仕様に特に記載のない限り、抗体製品はすべて研究用途のみで販売しており、それ以外の目的(商用利用、診断用途、治療用途など、ただしこれらに限定されない)では使用できません。メルクのバリデーションプロセスは研究用途にのみ該当し、抗体がここに記載したような未承認の用途に使用可能であることを確認または保証するものではありません。
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