一酸化炭素の簡便で安全な発生法とその利用例
Skrydstrup教授らは、カルボニル化反応を研究する過程で、実験室環境で安定な固体の一酸化炭素(CO)前駆体を開発しました1 。「COgen」と名付けられたこの前駆体は、非プロトン性溶媒中、25~150℃という広い温度範囲でPd触媒によりほぼ定量的にCOガスを発生する、信頼性の高いCOガス源です。また、13C標識された13COgenも同様の反応で13COを発生します。
図 1.一酸化炭素の簡便で安全な発生法とその利用例
COgenまたは13COgenを簡単かつ安全にカルボニル化反応に用いるために、2つの反応チューブから成る専用の反応容器「COware」も考案されています。一方のチューブでCOを発生させた後に、もう一方のチューブですぐにCOを消費するので、閉鎖系の中でCOを利用できます。13COgenもCOgenと扱い方は同じです。1Sigma-Aldrichでは、この汎用性の高い方法に必要な実験室用の器具とベンチ安定性高いCO前駆体を提供しています。
図 2.左:COware反応容器、右:脂質代謝改善薬剤Fenofibrateの合成への利用
現在、COgenは、アミノ化1,2、アルコキシル化3
、チオカルボニル化4、還元的カルボニル化5など様々なカルボニル化に利用できることが見出されています。CO挿入型鈴木-宮浦カップリング反応6、溝呂木-Heck反応7、α―アリール化8も開発され、さらに二重カルボニル化によるα―ケトアミド8もこのCOware – COgenシステムで得られています9,10。13C標識化合物も13COgenを用いることで同様に得られます。
図 3.COgen
COware で生成したCOは、ガスボンベに充填されているCOと同様に使うことができ、グローブボックスでの操作は不要です。COware には、PTFEシリコンシールで再密封できるようPTFEの固定ディスクがついています。COgen-COwareシステムは、ドラフトでの使用に適し、COを利用できる簡便で安全な方法です。
図 4.COware で生成したCOは、ガスボンベに充填されているCOと同様に使用可能
参考文献
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