コンテンツへスキップ
Merck
ホームろ過によるサンプル前処理限外ろ過によるウイルス濃縮

限外ろ過によるウイルス濃縮

ウイルス濃縮のための限外ろ過。液体はメンブレンフィルターを通過するが、大きなウイルス粒子は保持される。

図1.ウイルス濃縮のための限外ろ過。液体はメンブレンフィルターを通過するが、大きなウイルス粒子は保持される。

ウイルスの分離および増殖法は、研究、ワクチン生産、および診断ワークフローにおいて重要です。基礎研究を行うラボは、ウイルスストックを用いてウイルスの生態や病原性を研究しています。ワクチン生産には、ウイルスの小規模および大規模な調製が必要です。さらに、ほとんどの診断ラボでは現在、ウイルス性疾患の診断に非培養法を利用していますが、生存ウイルスを分離する必要がある場合、生存ウイルスと生存不能ウイルスを識別しなくてはならない場合、および培養ベースの手法のほうが非培養法よりも迅速に結果が得られる場合には、細胞培養におけるウイルス分離は有用なアプローチです。

ウイルスを細胞培養液中で増殖させ、ウイルスストックを作成できます。培養細胞にシードウイルス、市販品、または感染組織由来のウイルスストックを接種します。インキュベーション後に、感染細胞を溶解させてウイルス粒子を採取するか、細胞上清液から直接、放出されたウイルスを採取します。次に、ウイルスストックの力価を測定し、一定量に小分けし、後で使用するため-80℃で保存します。

臨床サンプルからのウイルスの分離も、ウイルスの増殖に細胞培養を利用します。臨床サンプルをホモジネートおよび液体培地へ抽出することにより調製した後、遠心分離し、これを細胞培養液に接種します。

高力価のウイルスストックを得るには、精製ウイルス粒子を濃縮する必要があります。再生セルロースメンブレンを用いたAmicon UltraおよびCentricon Plus遠心式限外ろ過デバイスは、ビリオンおよびウイルス溶液の濃縮に使用できます(図1)。このプロトコルでは、以下の3種類の一般的なウイルスの濃縮におけるAmiconおよびCentricon遠心式限外ろ過デバイスの使用について説明します:レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)。

ウイルス増殖の一般的手法

  1. パッケージング細胞:宿主細胞は80~85%コンフルエンスになるよう培養する。
  2. トランスフェクション:細胞に生きたウイルス粒子を感染させる。
  3. ウイルスの採取:ウイルスによって、細胞上清またはペレット細胞、あるいは両方を用いて組換えビリオンを精製する。細胞からウイルスを遊離させるため、凍結/融解サイクルを4回実施する。次に、遠心分離により細胞溶解液から細胞片を分離する。 
  4. ウイルスの精製:密度勾配超遠心分離またはカラム/メンブレンクロマトグラフィーにより、細胞溶解液からウイルスを精製する。
  5. 精製ウイルス溶液を濃縮し、受動透析、透析ろ過またはAmicon UltraおよびCentricon Plus 70デバイスを用いた遠心式限外ろ過により、適切な保存用溶液にバッファーを交換する。

高力価ウイルスストック調製のためのウイルス濃縮

遠心式限外ろ過を用いて精製ウイルスを濃縮することにより、高力価のウイルスストックを作製できます。感染性ウイルス粒子を高収率で回収するためには、デバイス、メンブレンの素材、分子量限度値またはカットオフ、遠心分離速度、遠心分離時間、およびバッファーの組成の適切な選択が重要です。Amicon Ultra遠心式限外ろ過ユニットには、そのフィルターメンブレンにより定義される公称分画分子量(NMWL)が規定されています。アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)溶液を濃縮するために、50 kDa NMWL Ultracel®を備えたAmicon Ultra遠心式限外ろ過デバイスを使用しました。レンチウイルスの濃縮には、50 kDaおよび100 kDa NMWLのメンブレンを備えたデバイスを用いました。

限外ろ過法およびメンブレンの公称分画分子量を選定する際に考慮すべき要素は以下のとおりです。

  1. ウイルスの粒径:粒径は、公表されている情報源、または顕微鏡検査、レーザー回折法、動的光散乱法などの測定技術により推定できる。
  2. 溶液中の主な分離ターゲットのサイズ:分離する必要があるタンパク質、抗体、薬剤、化学物質およびその他の粒子のサイズは、メンブレンサイズの選択に影響を及ぼす。
  3. サンプル量:遠心式限外ろ過(cUF)デバイスには0.5 mL以下~70 mLの範囲の処理量が適合する。

ウイルス粒子を保持するためには、フィルターメンブレンの分子量カットオフはその粒子よりも小さい(ウイルス粒子の分子量の約2分の1)必要があります。ただし、ろ過すべき成分が通過できるほどの大きさでなければなりません
表1)。

表1.ウイルス粒径に基づく限外ろ過メンブレンのNMWL選定

Amicon Ultra遠心式限外ろ過デバイスによるウイルス濃縮

表2は、粗細胞溶解液およびクロマトグラフィー精製ウイルスからのアデノウイルス、レンチウイルスおよびAAVの濃縮結果を示しています。Amicon Ultra遠心式限外ろ過デバイスを用いることにより、ウイルス粒子が高回収率で高力価に効果的に濃縮されました。

表2.限外ろ過デバイスを用いたウイルスの濃縮。粒子数1013個/mLを超えるウイルスの濃縮は、ウイルス凝集の可能性があるため推奨せず。

ほとんどのウイルスは低塩バッファー中では効率的に濃縮して保存することができないことに留意する必要があります。250 mM未満の塩溶液中でウイルスを遠心濃縮すると、ウイルスが凝集し、感染力の低下につながります。

濃縮ウイルスストックは0.22 µmのフィルターを用いてフィルター滅菌できます。0.5 mL未満の容量では、Ultrafree®-MC GVフィルターユニットを用いることが可能です。

結論

私たちは、高いウイルス力価を達成するための迅速かつ費用対効果の高い手段として、AmiconUltraおよびCentriconPlus遠心式デバイスを用いた限外ろ過のバリデーション方法を開発しました。この方法は、細胞培養上清、細胞溶解液、およびその他の由来のウイルスを濃縮するために使用できます。濃縮後、ウイルスストックはUltrafree®フィルターユニットを用いてフィルター滅菌できます。感染性ウイルス粒子を最大限に回収するためには、適切な限外ろ過デバイス、メンブレンフィルター、分子量カットオフ(MWCO)、遠心分離速度、および遠心分離時間を選択することが重要です。

遠心式限外ろ過デバイス

*IVD用に登録(日本国内取扱いなし)

ログインして続行

続きを確認するには、ログインするか、新規登録が必要です。

アカウントをお持ちではありませんか?