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mRNAとデリバリーシャトルを支える科学

さまざまな脂質とmRNAを内包する脂質ナノ粒子を表す画像。

2023年9月22日(所要時間:6分)

スペースシャトルの設計、製造および打ち上げは、簡単なことではありません。宇宙飛行士チームが安全に目的地に到達できるようにするには、綿密な計画と試験に数年、場合によっては数十年かかります。これは、さまざまな専門知識を要する難しい仕事です。

Merckは、ロケットの設計まで事業範囲を拡大していませんが、mRNA、つまりメッセンジャーRNAを人体の特定の場所に届けるための取り組みは、宇宙飛行士とスペースシャトルを思い起こさせます。

mRNAが宇宙飛行士だとすれば、スペースシャトルは脂質ナノ粒子(LNP)です。宇宙飛行士は記憶に残りますが、スペースシャトルが記憶に残ることはほとんどありません。mRNAとLNPについても、それぞれ同じことが言えます。LNPは、技術的名称で言えば一種のナノデリバリー担体です。非常に小さな物体であり、これよりもさらに微小な物体を運びます。

mRNAワクチンや治療薬は、通常の生物学的過程を模倣することによって作用します。本質的に、病気に対する最も有効な防御手段はすでに私たちの体内に存在している可能性があります。重要なのはこの防御手段を活用することです。では、どうすればよいのでしょうか?

mRNAの鎖は、細胞内の小さな「工場」に詳細な指示を絶え間なく送っています。これらの工場でタンパク質が生成され、これが人体のあらゆるプロセスを動かしています。これらの指示が変更されたり、ルート変更されたり、破壊されたりすると、細胞内の機能が正常に働かなくなり、病気や疾病を引き起こすおそれがあります。

科学者が誤った指示を修正したり、新しい指示を特定の細胞に出すことができれば、これらの工場はウイルスや病気を予防したり、撃退したりするタンパク質を作ることができます。

必要なことは、カスタマイズされた指示、つまり改変されたmRNA配列をタンパク質工場に届けることだけです。しかし、正しい場所に届けるのはたやすくありません。mRNA自体は、期待に反して非常に壊れやすいものです。何の予防措置も取らずに宇宙飛行士を宇宙へ送る選択肢はありませが、mRNAを血流に送り込む場合も同じです。スペースシャトル…ではなく、LNPに乗り込みましょう。

さまざまな地域の科学者たちが何年にもわたって、この技術に取り組んできましたが、COVID-19の出現によりこの取り組みは急激に加速しました。Merckは、COVID-19が出現する数十年も前に脂質の製造を開始しています。最近では、mRNAやLNPを採り入れるために、戦略的買収を通じて業務範囲を拡大しました。

mRNAの可能性は広範囲に及びます。現在、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、マラリアを予防するワクチンなど、数多くのmRNAワクチンが開発されています。1 また、mRNAワクチンはCOVID-19後に注目を集めましたが、その影響はワクチンにとどまらず極めて広範囲に及びます。mRNAベースの治療薬は、がん、心臓病、筋ジストロフィーなどの多くの病気を治療するだけでなく完治できる大きな可能性を秘めています。2,3,4 細胞の工場が、欠落または欠陥のあるタンパク質に代わるものを生成するための正しいmRNA指示を受け取れば、患者さんは生活の質を改善できるかもしれません。

「mRNAは、すべての答えではありませんが、ほぼすべての答えです」と、Merck mRNAプロセス・デリバリーの責任者であるDr. Aditi Mehtaは話します。

世界中のMerckチームは、初期段階の基礎研究から治療薬出荷前の最終ステップに至るまで、幅広い技術的専門知識をカバーしています。これらのチームは、ラボや生産現場におけるプロセスの改善に取り組んでいます。彼らは、mRNAとLNPを製造し、お客様向けのカスタム脂質をより迅速に開発し、世界的な需要の増大に応えるべく生産をスケールアップするための、より良い方法を模索しています。


科学を支える人々
 

カスタムLNPが完成するまでには、採用されなかった数多くのLNPが存在

Eleni Samaridouの顔写真

Eleni Samaridou, Ph.D.
ダルムシュタット、ドイツ

ミッション:お客様と緊密に連携し、LNP製剤の開発と最適化を行い、世界中の患者さんに可能な限り最適な治療を提供します。

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LNPになるまでには、個別の脂質が存在

Tobias Haagの顔写真

Tobias Haag, Ph.D.
シャフハウゼン、スイス

ミッション:LNPが正しい場所へ到達し、移動中のmRNAが常に保護されるようにするために、特殊な脂質を設計して大量に製造します。

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プロセスが最適化されるまでには、数多くの微調整が必要 

Aditi Mehtaの顔写真

Aditi Mehta, Ph.D.
ダルムシュタット、ドイツ

ミッション:新しい成分を特定し、ワークフローを最適化してmRNAとLNPの開発プロセスを改善します。

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大量のmRNAワクチンや治療薬が生み出されるまでは、ごく少量しか存在しない

Mahesh Karwaの顔写真

Mahesh Karwa, Ph.D.
インディアナポリス、米国

ミッション:最終LNP製剤を体系的にまとめるために、プロセスと生産を開発してスケールアップします。

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構想から最終的なRNA治療薬やワクチンを得るまでの時間を短縮できるまでに、科学者は有望なLNPを製剤開発する必要がある

Kahina Langの顔写真

Kahina Lang, PharmD.& MSc
ダルムシュタット、ドイツ

ミッション:リンカーライブラリーとデジタル対応のLNP製剤を作成し、科学者が患者さんのためにmRNA治療薬を開発するまでの時間を短縮します。

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mRNA関連製品について 

Millipore®医薬品試験開発製造受託機関(CTDMO)サービスの一環として、前臨床から商用化までのあらゆる段階において安定および一貫した統合プロセスが得られるようにします。メルクは、開発と製造の能力、技術的な専門知識、規制関連ノウハウを結集させて、mRNAベースのワクチンや治療薬の迅速な開発と患者さんの人生を変えるというお客様の目標を達成できるようにします。 


引用

2.
Jacob J. 2022. Messenger RNA brings gene editing a step closer to treat muscular dystrophies. Molecular Therapy - Nucleic Acids. 28462-463. https://doi.org/10.1016/j.omtn.2022.04.005
3.
Cooke JP, Youker KA. 2022. Future Impact of mRNA Therapy on Cardiovascular Diseases. 18(5):64-73. https://doi.org/10.14797/mdcvj.1169
4.
Liu C, Shi Q, Huang X, Koo S, Kong N, Tao W. 2023. mRNA-based cancer therapeutics. Nat Rev Cancer. 23(8):526-543. https://doi.org/10.1038/s41568-023-00586-2
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