ボトルでさえハイテクなのです
ラボの技術者は、1日に数回、試薬が入ったプラスチックボトルを取り扱うことがよくありますが、その技術者の多くが知らないのは、一見したところ何の変哲もない容器でも、複雑な開発作業に何年もかかっているということです。
ドイツ・ダルムシュタットの工業用ビルR22に入ると、すぐにボトルがずらりと並んだ陳列棚が目の前に現れます ― 想像しうるあらゆる形状・サイズの1950年代の琥珀色のガラスボトルから、今日では世界中のラボで使われている近代的なプラスチックボトルまで。
ここでは、経験豊富な開発者と包装エンジニアのチームが、品質管理と、新たに開発した包装材料の発送に責任を負っています。チームメンバーは常に新しいソリューションを見出したい、既存の包装システムを改善したいと思っており、安全性、取り扱い、および経済的なソリューションの問題について考えるときには、この強い気持ちに突き動かされます。
約50人の社員を擁する部署全体が、あらゆるモノの包装に従事しています。ボトル、ステンレス製ドラム缶、キュベット、段ボール箱、充填剤 ― Supelco®ブランドの分析用製品に充填し、それらを輸送するのに、推定300種類の包装材料が使用されています。
長期的な質の高さと高い純度
品質管理の重要性を軽視することはできません。分析化学で使用するSupelco®ブランドの試薬製品は、充填プロセスの最中も、それから数カ月後のラボにおいても、とりわけ純粋なものでなければなりません。1兆分の1程度の正確さを保たなければならならい一方で、試薬を安全に使用することも必要です。
通常のボトルでは決してこのような高度な要件を満たすことはできません ― 市場で自由に入手できる容器でさえ、必ずしもSupelco®ブランドの精度と品質の標準を満たしているわけではありません。ダルムシュタットの専門家たちが、試薬生産の部門と密接に協力して、また世界中のお客様からフィードバックをもらいながら、自社でボトルを開発しているのは、そういう訳なのです。
アイデア、設計、3Dプリンターで製作したプロトタイプから安全性試験、そして試作まで ― 開発プロセスには数年かかる場合があります。材料の選択も極めて重要です ― 従来はガラスボトルが標準でしたが、今日では特殊なタイプの高密度ポリエチレンン樹脂(HDPE)でできた高品質プラスチックボトルが多くの試薬の輸送容器の標準になっています。
2.5リットルボトルは開発者のプライドであり、喜びです
Supelco®ブランドの試薬用の2.5リットルHDPEボトル
最新の2.5リットルボトルは、現在は世界中でSupelco®ブランドの製品に使用されていますが、特殊なHDPEで作られているものでもあります。これがダルムシュタットの開発者のプライドであり、喜びです ― そしてその理由もすぐに理解できます。
グローバル化したビジネスの世界では、開発で最初にぶつかる課題が輸送可能性です。拠点が米国であれアジアであれ南米であれ、お客様は自社の試薬がライフサイエンス企業の生産現場を離れたときと同じ純度および品質を保てることに安堵するでしょう。
これには、高純度物質の純度を落とすことなく、より大きな負荷に耐えられる特別な容器が必要です。「アジアや南米に試薬を出荷する場合、1週間の旅の間、コンテナ内部はすぐに摂氏70度にまで達してしまうことがあります。私たちのボトルはもちろん、これに耐えることができるはずです」と、包装エンジニアの1人は説明しています。ここで問題になるのは温度そのものではなく、メタノール、アセトン、または塩酸といった液体が温まったときに生じる大量の圧力です。
ガラスボトルであれば、このような圧力には容易に耐えられます。ただし、ダルムシュタットの開発者は、ガラスのボトルが化学的安全性の観点から見ると、必ずしも第一選択肢ではないことを知っています。例えば、ガラスボトルのサンプルに含まれる鉄、アルミニウム、またはその他のカチオンの含有物は、信頼できる精度で測定することはできません。なぜなら、カチオンは特にガラスからは比較的容易に分離するからです。
新ボトル:圧力への安定性、漏れ防止、ユーザーにとって使い勝手が良い
圧力への安定性:特殊底面のHDPEボトル
チームは、ラボで高品質の試薬を安全かつ正確に使用するのに理想的な、2.5リットルのまったく新しいプラスチックボトルを開発しなければなりませんでした。
ほかのボトルとの違いがすぐに分かります。まず、より高圧に対する安定性があります。「従来のプラスチックボトルは、熱い出荷用コンテナでは圧力がかかって小刻みに動き続けています」と、あるエンジニアが説明してくれました。凹面の底は、0.5barの圧力ですでに膨らんでいました。これは、ボトルを安全にまっすぐ立たせておくことはできないということを指します。
「現在は、外側に向かって曲線を描くようなデザインのボトルの底にしており、底を4フィート(約120-cm)にすると、ボトルの安定性を確保することができます。」このデザインだと、ボトルは最大2.5-barの圧力をかけても安定しています。
品質、安全性、そして精度
とはいえ、安定性がすべてではありません。どんな形の漏れも防ぐキャップも、試薬の純度を保ち、ラボでの安全かつ正確な作業を確保する際に重要になります。「もしキャップに漏れ止めがなければ、試薬の一部が漏れたり、または空気と反応したりしてしまいます。どちらの問題も、特に分析や安全性のためには、あらゆる手段を講じて防がなければなりません」と、エンジニアは指摘し、Supelco®ブランドの試薬製品の品質にとってキャップがいかに重要かを強調しました。
したがって、Supelco®ブランドのボトルには、「S40」という特殊な糸が使用されているのです。それには「GL45」という標準的な糸よりも多くの糸が使用されており、中身をよりきつく密閉します。従来のスクリューキャップで密閉するには、キャップの1つの縁に接触圧力をかけるしかありませんが、S40にはボトルネックに追加の溝がありますので、3カ所を同時に密閉することができます。
製品開発には実務経験がモノを言います
S40スクリューキャップに追加のシール溝
開発者は実用的なラボの使用に特に重点を置きました。それが明白になったのは、安全性と利便性を増す、まったく新しい2.5リットルのボトルの細部でした。例えば、これらのボトルには先の尖った小さなリップがついていますが、これがあると、液体が注ぎやすくなります。もし少量が縁に残っていても、それがボトルの外側に流れ落ちることはなく、ボトルの中に戻ってきます。理想的なサイズで一体化された取手も、ボトルの安全性に寄与しています。
安全性に対する多くの部分が化学業界によって正式に規制されています。例えば、ラベルに書かれた文字は、酸または溶媒と接触した場合でも、それが判読できる状態でなければなりません。ただし、ダルムシュタットの開発および包装チームにとって、業界標準は最低限の要件を示すものです。
1日も欠かすことなく、チームメンバーは、常にSupelco®ブランドのお客様からの貴重なフィードバックを参考にしつつ、包装の最適化のために努力しています。お客様から、例えば安全性を理由に、特にしっかりと密閉されていたため、ラボではボトルを開けるのが大変だったという報告をいただきました。解決策はシンプルで実用的なものでした ― スクリューキャップの特殊な形状に合ったマッチングキーが利用でき、ボトルは簡単に、かつ安全に開けられます。
お客様の手元に到着した試薬は、ダルムシュタットの工場を出荷するときと同じ品質であることを確認して、すべてが完了します。
安全な試薬容器
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